28話 狂戦士達
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そして遂に、次の日の午前に殺戮集団ライオネス軍団はロザリアの城壁前の平原に姿を現した。
その数は情報と同じ兵が一万だった。
ロザリアの城壁の前には1万5千の騎士団を配置。
ライオネス軍団の1万の兵を両サイドから5千づつで兵を挟み込む形で配置。
その両サイドにはハンター達が50人づつ別れて入った。
城壁には魔法、魔弓部隊を5千を配置してライオネスを待ち構えていた。
そして殺戮集団を束ねる先頭には圧倒的な異質な存在感を醸し出した獣王が立っていた。
「グハハ。 あれがロザリアか?」
隣にいたライオネスの側近のハイエナ兄弟のミロとブチが答える。
「ああ、そうですぜ。 あれが今回の目的のロザリア王国だ」
「まぁた、いつものようにあいつらも、兵をあちこち配置して戦闘体勢に入ってますぜ!」
ハイエナ兄弟のブチが今度は答える。
向こうの兵の配置に警戒をするどころがか、笑いながら答える。
余裕なのだろう。
何回も同じような戦争を繰返し、その都度敵陣を突破し、国を滅亡させてきた事に自身達が策など通用しないということに余程自信があるのだ。
「まぁ。 いつものように正面突破でいいですよね親分?」
当たり前のようにライオネスは答える。それは強者が持つ圧倒的な強さと自信があったからだ。
「ああ。 俺達に小細工なんぞ必要ない。 着いて来れる者だけ着いて来ればいい。 戦術なんぞ弱者がすることだ」
ライオネスは仲間でさえ震え上がる程の闘気を放ち始め、一万の兵の士気を上げる。
「これから、待ちに待ったお前達の大好きな戦闘に入る!
男供は皆殺しに! 女、子供は生きたまま捕らえろ!
殺して殺して殺しまくって、食って、千切って、八つ裂きにしろぉ!!
俺達の圧倒的な強さをアイツらに見せつけろぉ!!!」
全身に纏った闘気をロザリアの兵士と自分の仲間達に向けて一気に開放する。
それは自分の力を見せつけるように、ロザリア王国に響き渡るほどの圧倒的な力を放っていた。
『グオォォォォォォォォォォッ!!!』
「「「 ウオオォォォォォォォォォッ!!!! 」」」
ライオネスが咆哮をあげると周りも一緒に咆哮を上げる。
それは地響きのようにロザリア十に響き渡り、待機していた騎士団の兵士達は腹の底まで響いて来た咆哮に恐怖し、戦意を喪失してしまいそうになる。
たったそれやだけの事なのに王国騎士団に恐怖を与えるには充分過ぎる効果だった。
前衛で待機していたローソンは慌てて声をかける。
士気を低下させない為、そして自分に言い聞かせる為だった。
「落ち着けぇ!! 苦し紛れの咆哮だ!! 数でも俺達が勝っている!! 自分に自信を持てぇ!!」
なんとか自陣の軍を落ち着かせる。
ローソンを信頼している部下達は正気を取り戻す事ができたが、他の周りの軍は足がすくんだ者も多かった。
ライオネスは一万の兵に指示を出す。そのたった一言で狂戦士達は走り出す。
「前軍突撃だ!! 前衛を壊滅させろ」
「ウオオォォォォォォォォォッ!!!!!!」
走り出した一万の狂戦士達を他所にライオネスとA級100人の猛者達は、その後をゆっくりと見物しながら歩いて近付いて行く。
まるでゲーム遊びの駒をように戦局を眺める。
「精々、楽しませてくれよぉ。 退屈なんだ俺様は」
そうライオネスは呟き、何一つロザリア軍に警戒をせず近付いて行く。
するとロザリア平原の空に巨大な魔方陣が出陣する。
防壁で構えていたロザリア騎士団の魔法部隊が全体で唱えた極大魔法だった。
ライオネスは初めて見る魔方陣に目を丸くする。
「ほぉ。 なかなか凄そうな魔法が来そうだな」
一人一人の魔力は大したことなくても、千も二千も魔法使いが集まればその威力は桁違いにのものになる。
突撃した狂戦士達に向けてその魔法が完成した。
魔弓兵は魔法を掛け合わせて作られた魔弓を構える。
そしてーーー
ーーーー 極大魔法 巨大炎球 ーーーーーー
魔方陣から出現した巨大炎球と同時に魔弓が狂戦士達に降り注ぐ
ドゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォオオンンンン!!!!
落ちたメテオは一万の狂戦士達の兵のど真ん中に降り注ぎ、半分近くの狂戦士達は姿を消す。
ローソンはその魔法の威力に便乗し、自軍の部隊で狂戦士達を畳み掛けるよう指示を出す。
「よぉぉし!!! 魔法部隊の活躍で向こうの兵は半分近く姿を消したぞぉ!!! もはや壊滅寸前だ!! 獣人部隊が畳み掛けるぞぉ!!!」
「ウオォォォォォォオ!!!!」
獣人部隊ローソンと供に獣人隊が1万の兵を出陣させる。
半数近く失った狂戦士5千の兵の中に突っ込んで走っていく獣人部隊にライオネスは自軍の不利になった様子に、修正をかけようと行動を仕掛ける。
「あの魔法は厄介だったなぁ。 今までの相手とは少しは違うみたいだなぁ! だが………」
ライオネスの口から炎が漏れ始める。強者の持つ強力な魔力から出す魔法ーーー
ーーーーーー 地獄の業火 ーーーーーー
ローソンのいる獣人部隊に向けて放たれたヘルファイアは、予想していなかったライオネスの攻撃に無惨にも直撃する形になる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
前衛を走っていた獣人部隊3千の兵が姿を消していく。その中にローソンも含まれていたかもしれない。
「はっはっ!! 少しは状況がよくなったかぁ?」
その様子を左の陣から見ていたシャルルは顔面蒼白にさせ絶叫を上げる。
「父上ぇぇぇぇ!!!!」
生死は分からない、だが無事ではない。
まともに直撃したのだ。
そのシャルルの様子に同じ左の陣のハンター達も動揺をする。
何も考えず前線に飛び出そうとしたシャルルに仲間のハンターは必死に止めにかかる。
「シャルル落ち着け!! まだお前の父さんが死んだと決まった訳じゃない!!」
「そうだ、落ち着け! もうすぐ俺達にも指示がでるんだ!! それまで勝手な行動は控えろ!!」
誰しもがシャルルの父親が獣人部隊にいると知っている者はいなかったが、ハンター部隊のエースが取り乱していては勝てる相手も勝てなくなると必死に落ち着かせる。
こんな取り乱したシャルルの姿は誰もが初めて見る姿だった。
すると騎士団隊長のイタチが声かける。
後方にいるライオネスに狙いを定め戦況に終止符を討たせようとする。
「後方にいるライオネスとその他100人を撃ち取る! 魔法部隊は後方にいるライオネスを討てぇ!!!」
イタチの指揮に合わせ、今度はライオネスの頭上に巨大魔方陣が再び空に出現する。
それを見た100人のA級指定の魔物達が騒ぎ始める。
「旦那ぁ! あれはまともに貰うとまずいですぜぇ!!」
「あぁ? そうなのかぁ?」
慌てた猛者達を他所に何か問題でもあるのかと前進を進めるライオネス。そして、再び巨大なメテオと魔弓がライオネスに向けて放たれた。
「ウオオォォォォォォォォォッ、……これはぁ!!!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ……ォォォ……オオンンンン!!!!
ロザリアの平原に物凄い風穴がもう1つ空く。
まともに直撃したライオネス達に騎士団含め、ハンター達も確実にこれで生きている者はこの世に存在しないと、歓喜に震える。
「ウオオォォォォッ!! 直撃したぞ!! これは間違いなく死んだぞぉ!!!!」
王国最強の極大魔法と魔弓は絶大だった。
騎士や戦士達の個々実力では劣る魔法つかいでも、全体で魔法を掛け合わせることで騎士団の魔法部隊は最強の極大魔法を作り上げる事に成功していた。
敵の攻撃が届きにくい城壁から放たれる魔法は一撃で敵を殲滅し、周りにいる敵も魔力の籠った威力もスピードも増した魔弓で一網打尽にする二段構えは、反則な位チート攻撃だった。
しかし、その風穴の空いた煙幕の中から優々と姿を表した者が一人いた。
「あぁ……。 いてぇなぁ。 今のは中々の攻撃だった」
後に続きA級の魔物達も姿を表す。余裕はないものの半数以上生き残っていた。
「ぐっ……滅茶滅茶な魔法じゃねぇか!!」
「はっはっ!! ちゃんと着いて来いよぉ」
まったく表情を変えずに余裕で出てくるライオネスにイタチは再び魔法部隊に指示を出そうとするがーー
「後ろから雑魚供が、ちまちま攻撃してきて。 鬱陶しいな」
そう言うと大きな口から息を吸い込むと、再び口から炎が溢れ出した。
ーーーーーー 大炎口砲 ーーーーーー
「ハァッハッハァ!!!!」
幾つもの激しい炎の球体が、城壁にいた魔法部隊と魔弓兵のに放たれる。
笑いながらメガフレアを20発以上放つライオネスは狂喜に満ちていた。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ……ォオオン……ンンン!!!!
「そんなんじゃ、俺の欲は満たされねぇ!! 遠くからつまらねえ魔法なんて使うんじゃねぇよ!!!!」
巨大な炎球が何十発も直撃した城壁は粉々に粉砕され無惨に焼け落ちる。
そして魔法部隊と弓兵は城壁から姿を消した。それは弓隊と魔法部隊が全滅した証でもだった。
一瞬で後方の兵を5千減らされたイタチは戦局を易々と変えてくるライオネスの底の見えない強さに改めて恐怖を覚えた。
これ程迄に一人の存在が戦局を変えれるなんて目にした事がなかったからだ。
それもそのはずS級指定されたライオネスは一人で国を滅ぼせる強さを持ってしまっていた。
ライオネスからすれば戦争とは子供のケンカと同じような弱者が集まってするくらいの感覚でしかなかったからだ。
騎士団に撤退は許されない。
後ろにはロザリア、ハンス国王と住民達がいる。
負ければ国が滅びる事になる。
イタチはそれだけは避けなければならなかった。
「ラ……ライオネスゥゥゥッ!!!!」
全身を振るい立たせ、イタチは覚悟を決める。
国の為に今全勢力を掛けてライオネスに立ち向けなければ、じわじわと自軍を減らされ壊滅状態にさせられると。
そのために命を掛けて全勢力をライオネスに向けた。
「全軍、全勢力を掛けてライオネスの首を撃ち取れぇ!!! ロザリア王国を守るんだぁ!!」
待機していた左右の陣にも指示が飛び、シャルルとタイガ達も動き出す。
「父上ぇ!! 今行きます!!!!」
全軍進撃を開始しライオネスの首を撃ち取りに前、左右で挟み込む。
そして、混戦になっていた獣人部隊と狂戦士達の所にシャルル達も到着する。
タイガと二人で狂戦士達を凪ぎ払いながら戦場の中を掻き分けて進んでいく。
そしてシャルルが見たものはーー
「父上ぇ!! 生きてましたか!」
「おぉ。 シャルル!!」
肩から血を流し剣も握るのがやっとなほどのローソンが戦っていた。
やっぱりまともに攻撃を受けてる。
シャルルはまともに攻撃を受けていた父親を心配するが実際は違う。
ライオネスから放たれたヘルファイアに誰よりも早く気づいたローソンは攻撃を破壊しようと狩猟豹斬殺を寸前で放っていたのだ。
しかし想像よりはるかに威力が強かった為、相殺することが出来ずダメージを受けていたのだ。
もしローソンの攻撃がなかったら、獣人部隊は半数近く殺られていただろう。
それをダメージを受けながらもローソンは阻止したのだ。
「タイガ!! 薬草を出すから周りを守って!!」
この世界に回復魔法使いは超レア職業だった。
だから戦場では主に薬草が使われる事が圧倒的に多い。瞬時に回復できる回復魔法使いは重宝されていたのだ。
しかし、城壁で待機していた回復魔法使いはやられ、イタチの側にいる回復支援隊は最後尾にいるため、ローソンが前線から退く訳にはいかなかった。
「すまない。シャルル助かった」
薬草を傷口にあて処置をしていく。
肩の傷は小さくなり出血も止まる。
しかし。根本のダメージは残ったままだ。もう1つの薬草をシャルルはローソンに飲ます。
少しだが、ローソンから疲労が抜けていく。
「もう大丈夫だ。 ありがとう。 まさかお前に助けられる日が来るとはな「
「父上………。 本当に大丈夫なのっ!! 一旦後方で回復支援を受けた方が……」
心配するシャルルにローソンは答える。
「俺が下がる訳にはいかんさ。 それにすぐ側にライオネスが来ている」
振り向くとライオネスが騎士団を虫ケラのように跳ね除けながら進んで来る。
それは誰の目から見ても規格外の強さだった。
「シャルル。 お前は奴にだけは近付くな」
そう言うと、ローソンは自分の後ろにシャルルを隠し、目の前に来たライオネスと対峙する。
桁違いな禍禍しい殺気を垂れ流した獣王ライオネスは、ローソンが見ただけで普通にやったら勝てないと悟らせる程の圧倒的な存在だった。
そのあまりの差にローソンは全身が強張ってしまうのを悟らせないようにするだけで必死だった。
「あぁ。 お前は、さっき俺の攻撃を弾いた奴かぁ」
「獣人部隊長のローソンだ。 これ以上後ろには行かせんぞ」
ローソンの言葉にうすら笑いを浮かべながらライオネスは答える。
「お前が俺様を一人で止めると? 面白い事を言うなぁ。 退屈してたんだ。 お前は俺様を楽しませてくれるのか」
そう言うと配下達にライオネスは指示を出す。
「俺様はこいつと遊んで行く。 貴様らは周りの雑魚どもを一掃しろぉ」
ライオネスの後ろをぞろぞろと着いて来ていたA級の魔物達の一人ハイエナ兄弟が答える。
「あぁ、旦那ぁ。 俺達もフラストレーションが溜まってたんだ。今から思う存分遊ばせてもらうぜ」
そう言うと散り散りにA級の魔物達はなり、周りで無双していく。
戦いは残虐非道のものだった。
目を潰し、首を千切り、虐殺のような戦いに周りは恐怖に包まれる。
「こん……な戦いがある……の?」
シャルルは改めて狂戦士達の常軌を逸した戦いに足がすくむ。
それを見たライオネスはシャルルに気付きーー
「おっ。なんだ? えらく上玉な奴がいるじゃないかぁ?」
震えていたシャルルに、ライオネスはヨダレを垂らしながら喋りかける。
「すぐ終わらせてやるから、その後に俺様と楽しい事をしよう」
そう言うと股間の物が大きく膨れ上がり、薄い腰巻きから押し退けるようにそれが姿を表す。
何も隠されず姿を表したバキバキになった物はサイズも桁違いなものだった。
「これで何度も何度もお前を抱いて孕ましてやる。 俺の遺伝子をくれてやるんだ。 光栄に思えよぉ」
「ひっ………」
初めて見る男の物にシャルルは完全に恐怖し、その場に固まってしまう。
一流のハンターのシャルルだが、女なのだ。
死ぬ覚悟はあってもライオネス達に慰み者にされる覚悟はシャルルに出来ていなかったのだ。
そのライオネスのふざけた姿にローソンは激昂する。
「貴様ぁぁぁぁ!! そのふざけたものとも叩き切ってやるわぁぁ!!!!」
獣人部隊の数少ない支援隊がローソンの支援を開始する。
「ローソン隊長の身体強化しろぉ!!」
全身に力を込め渾身の一撃を見舞う為に身体を極限まで強化する。
爆発的に身体を強化をした肉体は体への負荷が高い。
しかしーー
「もっとだ………もっと掛けろぉ!!」
「しかし……隊長! これ以上は……」
「作戦の指示通りにするんだ……。 これは隊長命令だ!」
「くっ……! はいっ」
ローソンは更に強化の指示を出す。肉体から血が滲み出るほど筋肉は膨張しローソンの目が赤く変化していく。
「あ………ああ……」
肉体が悲鳴を上げ、今にも壊れてしまいそうな程、別人のように肉体が変形してしまった父親を見てシャルルは声にならない声をあげる。
「これは中々いい作戦だなぁ。 久々に面白そうだ」
ライオネスはローソンの身体強化が終わるのを楽しそうに待ちわびている。しかしーー
シャルルはローソンの覚悟に気付いてしまう。
父上はこの戦いで死ぬつもりなのだと。
「父上………やめて………」
首を横に振りながらシャルルはローソンとの出来事を走馬灯のように思い出していた。
あの時、私の稽古を断る事をしなかったのも、この戦いが最後になるであろうと予感していたから。
最後に私を誉めてくれた事も、この日の事を思ってのことだった事を。
そして、肉体強化の終わったローソンが、口から血を流しながらシャルルの方にゆっくりと振り替える。
その顔は昔のように優しい父親の顔をした姿だった。
「シャルル。 母さんを頼んだぞ………」
「父……上……」
歯を食い縛り、涙を堪えるシャルルは、それ以上ローソンを引き止めることは出来なかった。
父上の最後の覚悟に、この戦いが終われば勝っても負けても父上は死んでしまう。それ位肉体に負荷を掛けすぎてしまった。
「貴様はここで死んで貰うぞぉぉっ!!!」
ズバァァァァァンッ!!!!!
大地を掴んで一瞬で間合いを詰めるローソンの瞬足はシャルルの脚を優に越えるスピードまで跳ね上がっていた!!




