表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/99

27話 決戦前夜

ハンターランク一覧表です。


(F級)駆け出し冒険者

  一般人で対応出来るくらい魔物

(E級)冒険者

 一般人でぎりぎり勝てるかどうか人数が必用な魔物

(D級)いっぱしの中級冒険者

  一般人ではこの魔物に勝つことは不可能。一般人が複数で挑んでも死は確実

(C級)上級冒険者

 いっぱしの冒険者で一人で魔物に勝てるかどうか。運が悪いと死ぬ可能性大。複数で戦う方が得策

(B級)才能がないとたどり着けないクラス一流

 この魔物に一人では上級ハンターでも返り討ちにあう。複数で戦わないと危険

(A級)才能と努力だけではたどり着けない超一流

 このクラスの魔物が現れると周辺地域の商業や交通は止まってしまう。一流ハンターを集めて戦う必用がある

(AAA級)英雄級

 軍隊、小国など半壊や滅ぼされる可能性がある。国の存続をかけて全力で立ち向かう必用がある。

(S級)伝説級 勇者 賢者など

 この魔物はもはや規格外と言っても過言ではない。

 生態系を破壊し、大国を破壊し、島を沈める、世界に影響を及ぼすなど、計り知れない損害を出す。

(SSS級)神話級 神様と同じ

 この魔物が現れると世界が破滅に向かって確実に進んでいく。軍隊、ハンターを集って戦っても皆無。勇者、賢者など伝説クラスで集団で立ち向かって世界を救えるかどうか。負ければ世界は滅びてしまう。魔王と言われる存在はこのクラス。

 二人が結ばれた翌朝、ユウキとニーアはいつもならとっくに起きる時間なのに、キラ様が隣の部屋で起きていてもしばらく寝続けていた。


 それは朝方まで二人は激しく愛し合ったていたことが原因だった。


 キラ様は夜ニーアがユウキの部屋に入って行くのに気付いていたが二人の合意もあって結ばれた事に、野暮な事はしないでおこうと邪魔しないように計らってくれていたのだ。


 だが、決められた時間に起きてこない二人に、それも限界に達していた。


「ちっ……。 いつまで寝とるんじゃぁ、あの二人はぁ……」


 怒りに角がバチバチと電撃を浴び始める。


 短気なキラ様は神の使なのに自分のペースを崩されるのが一番嫌いだっだ。


「このたわけどもぉ!!」


 ドゴンッ!!!


 隣にいる二人に気付くように壁を壊れるかと思う程強く叩く。


 流石の二人もあまりの音に飛び起きる。


「ふぁっ!!!」

「なっ!!」


 寝ぼけ眼に二人は何が起きたか分からず辺りを見回す。


 すると隣の部屋からキラ様の声が聞こえて来て、ようやく把握する。


「早くおきんかぁ!! いつまで寝とるんじゃぁ!!」


「ヤバイ、ニーアちゃん寝過ぎちやったよ! 早く起きて向こうの部屋に行こう!!」


「は……はい!」


「今すぐそっちの部屋に行くから!!!」


 ユウキは怒りの声のするキラ様の部屋に向かってそう返事をすると二人はイチャイチャしていた余韻に浸る事も忘れて、慌てて着替えてキラ様の部屋に向かう。


「「 おはようございます。 キラ様 」」


「いつまでチチクリあっとったんじぁ貴様らぁ? 人が気を使ってやったら好き放題しおって。 おい! ミジンコォ!! 深夜に声がデカイんじゃぁ!」


「!!」


 その言葉を聞いてニーアは顔から火が出そうな程顔を赤らめる。


 初めての夜だったのに、他人に声を聞かれてたのは流石に死にたくなるほど恥ずかしい気持ちになるよな。


 ニーアちゃんが可哀相なのでフォローを入れる。


「まあまあ、野暮な事は言わないで下さいよキラ様。 それくらい壁が薄いんだからしょうがないでしょ」


「お前はギシギシとうるさいんじゃ! サルがぁ!!」


 ドゴォォ!!


 フォローも空しく怒りの勢いに任せて頭をどつかれるユウキ。


「いってぇぇぇぇぇ!!!」


 怒っていたキラ様も今ので少しスッキリしたのか本題に入る。


「まぁ、これくらいにしておいてやるわぁ、ボケ供ぉ。 死ぬかもしれん戦いの前に求め合うのは極自然なことじぁ」


 真面目な顔になってキラ様は答える。


 そしてニーアの方を見て聖なる気を宿した肉体に不思議に思い言葉をかける。


「ニーアからどうやったかは知らんが、見違える程力を宿しておる。 ユウキに何をされた?」


 もじもじと顔を赤らめながら恥ずかしそうに答えるニーア。


「………はい。 ユウキ様から沢山、聖気を注がれました」


 キラ様はニーアから言われた事に目が点になる。


「なっ……………おま……」


 確かにそうなんだけど、言い方が悪すぎるからユウキは慌てて訂正をする。


「ちょっ!! キラ様! ニーアちゃんも言い方がおかしいよ! 実は、俺のスキルに黄金の手って技が追加されたんだけど、俺の内なる力を彼女に譲渡する事が出来るみたいなんだ」


「は? あぁ……聞いたことないスキルじゃな。 遊び人のオリジナルスキルみたいじゃな」


「どうもそうみたいなんだ。 俺の聖なる気をニーアちゃんに渡した事で力が上がったみたいなんだ」


「これは力が上がったと言うレベルを越えてますよ。 まるで自分の身体ではないと思える位、全てにおいてパワーアップしています。 信じられませんが正にあれは神の手です」


「……何が神の手じゃぁ。 ただチチクリあっとっただけのクセして! 何を格好よく言おうとしとるんじゃバカかオヌシは。 それに貴様さっきから顔が、女の顔にずっとなっとるのが気持ちわるいんじゃぁ!!」


 勘に触ったのかキラ様はニーアの頭をどつこうと拳骨を繰り出す。


 しかし、身体能力が劇的に上がったニーアには拳が止まって見えるのか簡単にげんこつを避けてしまう。


「ぐっ!! ムダに強くなりおってぇ! それにいつからユウキ様に呼び方替えたんじゃぁ」


「ユウキ様に聖気を沢山注がれて気付いてしまいました。 私はユウキ様にお仕えする身になったのだと。 そしてユウキ様は、やはり撰ばれた者なんだと」


「はぇぇ……。 ユウキや……オヌシ、ニーアに魅了でも掛けたんじゃないのかぁ!!」


「し、してないよっ! ちょっとニーアちゃんも初めてで気が動転してるだけだよ。 そのうち落ち着くから!!」


「何が初めてじゃ……。 まぁ、もうええわ。 これで戦うのに少しでもこちらが有利になった訳じゃ。 結果オーライじゃ」


 ここでハンス国王から街に指示が事を思い出す。


 戦争に参加するハンターに俺が規定を満たしていない事だ。


「そう言えば、案内にもあったけどこの街に避難勧告が出たよね。 街の住人と、商人や旅人、ロザリア登録以外のハンターは街を出るか、指定の王国中央区の避難場所に集まらないといけないって」


「はい。 私たちロザリア登録じゃない他登録のハンターは今回の戦いに参加してもしなくても自由。 しかもユウキ様に至ってはFランクの為本来、戦争に参加することも許されません」


「確かに本来だとニーアちゃん以外戦争に参加する事が出来ない。 俺に至っては戦力外だし、どうやって戦いに参加する?」


「数日中にライオネスは来るが、いつくるか分からん相手に外で何日も夜営して待つのは肉体的に疲労するからの。 避難場所でワチ達はゆっくり待つ事にするぞい。 ご飯も支給されるしの。 時が来たら壁でも破って向かえばよかろう」


「指定された避難場所ではなく、街の中で待機していてはダメなのですかキラ様?」


 ニーアちゃんがキラ様に問いかける。確かにそうだ。いちいち指定場所に俺も集まる必要もないと思ったからだ。


「ちゃんと出ていく者と、入って来た者を国はそれくらい管理しとる。 こんな時に不審な動きをしとると、後で指命手配にでもなるぞ。 やめとけぃ」


「そうか。 なら、俺達は戦争が始まるまで避難場所で待機していよう。 そして時が来たら動いて戦いに参加する。 いいかい?」


「決まりじゃな」


「はい」


 こうして三人の話はまとまり、中央区の避難場所に集り待機した三人は戦争が始まるまで身体を数日休める事にしたのだった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 一方、シャルルは………


 数日経ち、撰ばれし者を結局見つけられなかった。


 その人物が戦局を左右するのだ。


 唯一の希望を必死にシャルルは探した。だがーー


 色々な人に聞いてみてはしたものの、誰一人ともそんな情報すら知っている者もいなかった。


 気になっていたユウキも探したがショーをやっていた広間にはハンス国王から避難勧告があった日から見なくなった。


 きっとユウキはもう別の街に行ってしまっている。


 危険になってしまった街に留まる理由がないからだ。


 道化師で世界一になるというの夢の為に旅立ったはず。


 一言お別れを言いたかったのは事実だけどこればかりは仕方ない。


 これも運命だ。逆にユウキがこの街に留まらなくてよかった。


 この状況を静かに受け入れるシャルル。




 さよならユウキ………大好きだったよ。




 心の中でそう話し、ユウキとの別れを告げた。


 そして決戦前日の夜、ギルドにはハンターA級からD級まで1000人集められた。


 当然シャルルはロザリア王国に二人しかいないA級だった為、必ず集まらなくてはいけなかった。


 B級のパーティの中に同じA級の魔法使いのエイトがいた。


「シャルル。 元気そうじゃ……ないね」


 エイトは私の顔を見て心配そうに近付いてくる。


 未来を知ってしまっている私は、この次の日に起こる地獄を私が変えなければならなかったからだ。


 撰ばれし者が見つけれなかった以上、私が未来を変えるしか道はないからだ。


「そうかな。 ……うん。 そうかもしれない」


 信じれない程の重圧が身体にのし掛かって身体が自分の身体とは思えないほどの重さに感じてしまう。


「君程のハンターでもプレッシャーを感じるんだね。 俺も緊張してきたよ」


 A級の二人が会話をしていると受付のカウンター奥からギルド長のガーランが姿を表し話をする。


「よく集まってくれた! A級からD級までのハンターの皆!! ここに集まってくれたのは屈強な戦士達だ!!」


 ギルド長のガーランはハンター達が奮い立つように言葉をかける。


「明日の昼にはライオネスはこのロザリアに着く。 決戦は城壁を跨いだ防衛戦になる。 向こうは一万の数だがこちらは騎士団3万にハンター1000人がいる! 数では圧倒している! 必ず勝てる!! 俺達の手でロザリア王国を守るんだ!!」


「「「おぉぉぉぉ!!!」」」


 力強くハンター達は返事をするが、最後に問題の件に触れた。


 守秘義務があるのと同じように告知義務がある案件だからだ。


「最後に連絡があった件を報告する。 この戦いより、ライオネスはS級に指定された。 それと向こうの一万の兵の中にA級指定が50人から100人に追加されたそうだ」


「…………は?」


 その場にいた者は言葉を失う。


 S級といえば伝説級の強さだ。街や王国を滅ぼし、島をも沈ませるとされる規格外の魔物。


 それにライオネスが指定された。


 そしてそのライオネスの側には超一流級の相手が100人もいるという事実に、誰もがさっきまでの勢いは失い自分の命を優先させようとする。


「そ、そんなの聞いてねぇぞ!! 俺はまだ死にたくねぇ!!」


「金さえあれば生きていけるんだ! 今回の件は降ろさせてもらうからな!」


「指命手配にされても死ぬよりましだぁ!!」


 その場から物凄い勢いでハンター達が出ていく。


 シャルルは皆に必死に声をかけるが誰も足を止めることはしない。


「みんなお願いだから足を止めて!! このままじゃロザリアが! 大好きな自分の街がなくなっちゃうんだよ!!!」


 シャルルの必死な願いも空しく、手を伸ばした先には誰も止まるものはいなかった。


 そして、その場に残ったのは僅か100人足らずだった。


 本来そうかもしれない。


 ハンターは自分より格上相手に戦う事はしない。


 お金が欲しい為に戦う者。


 家族の為に戦う者。


 地位や名誉の為に戦う者。


 それぞれの思いがあるが国の為に戦う者はほとんどいないからだ。


 シャルルは迫り来る未来に抗えない自分に、自分の非力さに嘆く。


「なんでよ……。 この国が無くなるかもしれないんだよ。 自分達で守らなくて誰がやるのよ………」


 目に涙を溜めながら訴えた言葉は誰にも届かない。


 空しくギルドにシャルルの言葉は響くだけだった。


 隣にいたエイトがシャルルに声をかける。


「この国には獣人部隊長ローソンと騎士団隊長のイタチがいる。 魔法部隊もある。 大丈夫だよ。 他の国とは違う。 ライオネスの思うようにはいかないさ」


「………うん」


 そう返事をするも、占いババの予言のように未来は進んでいる。


 その事に不安がどんどん募っていく。


 このままでは、この国は確実に滅びてしまう。


 私と同じA級の相手が100人もいるのにどうやって対処するのか、私でも一人倒せるかどうかなのに。


「私は逃げ出す訳にはいかない。 この国を救うために」


 握りしめた拳は死を受け入れたものだった。


 相討ちでも、刺し違えてでも一人でも多く相手を殺すしかない。


 戦争という暴力にはもう暴力でしか抗えない。


 光が差し込む余地なんてもう何もない。


 家族を守る為、仲間を守るために私は戦う。


 この戦争で父上を死なせたりはしない。



 そのためなら私は鬼神にでもなる……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://www.tugikuru.jp/
― 新着の感想 ―
[一言] >「なんでよ……。 この国が無くなるかもしれないんだよ。 >自分達で守らなくて誰がやるのよ………」 住めば都って言うし、 死ぬ確率が高い戦争に向かうという、 特攻隊みたいな真似するより、 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ