23話 誘惑
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すっかり辺りは暗くなり、待ち合わせの場所に30分も早く着いたシャルルは落ち着かない気持ちを抑えユウキを待つことにしていた。
「はぁ。 ほんとにこんな格好でよかったのかな……」
実はあの後、母さんから彼との出会いは何処だったのかとか、どういう関係なのかとか、根掘りは堀聞かれ大変な目にあったんだ。
母親に異性の話を聞かれるのがこんなにも恥ずかしいことだったなんて。
帰ってからはとにかく何にも話さないでおこうと考えているとユウキが10分ほど経ってからやって来た。
使い魔のキラ様もいない。私に気を使ってくれたのかな?
今日は大事なデートという訳ではないけど、やっぱり二人きりというシチュエーションに心が弾む。
「シャルルちゃんお待たせ」
「ううん。 私も少し前に来たばかりだから」
シャルルの格好を見てユウキはいつもと違う感じに
「シャルルちゃん。 いつもと雰囲気違うね。 なんか凄いセクシーだよね」
獣人は普段から露出が高い。
それはシャルルも一緒だった。
人間と姿はさして変わらないが身体能力が異常に高い為、動きを妨げる重い鎧や、動きにくい服を着るのは嫌う傾向にあるからだ。
しかし今日のシャルルは2回会った時の格好とは違い女の子らしい、フリフリのスカートに大胆に開けた胸元がユウキの視線を釘付けにさせた。
少しやり過ぎかと母さんには思ったけど、これはこれでよかったのかもしれない。
「じゃあ。 早速行こっか」
「そ、そうだね」
シャルルは前を歩こうと案内する。
すると尻尾は上へと左右に振れていた。
短いフリフリのスカートはめくれ上り、その隙間からシャルルの可愛いお尻とピンクのパンツがユウキの目に飛び込んでくる。
「――っ」
ユウキは夜とはいえ、まだ人目も多いこの時間に大勢の人にシャルルの可愛いお尻を晒す訳にはいかないと咄嗟に尻尾をお尻に隠す。
「シャルルちゃん!!」
「ひゃん!!」
いきなり尻尾とお尻を触られた事に身体が跳ねるシャルル。
「違う! シャルルちゃん違うんだっ!」
いきなりお尻を触ってくるなんて、いくら何でも展開が早すぎるよねと、シャルルは戸惑う顔を見せる。
「シャルルちゃんの尻尾の隙間から、その、パンツが見えそうだったから! だから咄嗟に隠したんだ!」
「あ………」
尻尾を感情のままでコントロールするの忘れてた。知らないうちに上に上がってたんだ……。
顔から火が出そうな程、恥ずかしくなるシャルル。
「そうだったんだ。 ごめんなさい」
「いや、後で気付いて恥ずかしい思いをさせたくなかったから」
ユウキの言葉にシャルルは咄嗟にでも行動してくれた事に恥ずかしいけど少し嬉しく思った。
今度は尻尾をコントロールしようとスカートに下にやっておく。
「見えた……?」
「暗くてよく見えなかったから大丈夫だよ!」
その言葉を聞いてホッとするシャルル。
無防備なときに見られるのは一番恥ずかしいから。
少し小洒落た店に入ると店の中からいい臭いが漂ってくる。
二人は店員に案内されて席につくとメニュー表を渡される。
「ここのビックブーの肉とラム肉が美味しくてお勧めだよ」
ユウキはザナルガルドで一番始めに屋台で食べた肉もビックブーだった事を思い出していた。
この世界では牛がいない代わりに豚みたいな肉が主流なんだろう。
羊もいる事を初めて知るユウキ。
「ああ。 美味しいよねビックブーの肉。 忘れられなかったんだあの味。 俺はそれにしようかな」
ユウキはビックブーの丸焼きと、シャルルは野菜をバターや油などで炒めたラム肉のソテーを頼む事にする。
二人の元に軽いお酒と料理が運ばれてくる。グラスを互いに取りお決まりの合図を交わす。
「「 かんぱい 」」
そう言って一口お酒を飲んだ後に、ビックブーの肉とラム肉を食べれるサイズに切り分け、二人は口に運んで行く。
お互いに美味しいと言い満足した様子で食べていく。
私は聞きたいことは沢山あったんだけど、言葉に出せずにいると様子を察してくれたのか、先に話をしてきてくれたのはユウキだった。
ユウキは少し前に道化師になって、世界を旅を始めたということ。
使い魔のキラ様ともう一人の女性を最近メンバーに新しく入れて三人になったこと。
そして明日から一週間公演をしてまた旅に出てしまうということ。
まだ見た感じ、私と年齢もそんなに違わないはずなのに、世界で一番の道化師になるって大きな夢も語ってくれた。
私とは生き方も考え方も全然違うユウキに、惹かれてしまう自分がいる。
こんなに楽しそうに話せるなんてほんとに今の職業が好きなんだ。
同時に、この先交わりを持たない関係であることをシャルルは痛感してしまう。
(ユウキがこの街を離れたら、もうきっと会うことは……)
他人の事で、悲しくなるのは生まれて初めてだった。
ユウキもシャルルの事を聞いてくる。
この世界でハンター以外でもやれる職業は沢山あるのに、可愛い女の子が何でハンターになろうとしたのかを。
私もユウキに父上のこと。反対されてハンターになった理由を話す。そしてA級になって伸び悩んでいることも。
今まで他人に身内話はしたことなかったけどユウキには不思議とイヤな気にはならなかった。
「それでも、最終的には強くなって父上に認めて貰えれば入隊を許して貰えるようになるかなって思ったんだよね」
父上に認めて貰う相談もユウキも回答を出せずにいた。
こればかりは父親の判断で決まるからだ。
「でも、どうやって認めて貰うの? A級より強い魔物を倒したりするの?」
「うん。 このマール大陸で危険度AAA級の魔物を倒す必要があるの。 でもどれも桁違いに強い魔物ばかりなんだ。 タイガと二人じゃとても太刀打ち出来ない」
「英雄級だとそうかもしれないね」
「時間はかかるかもしれないけど地道に仲間を増やして倒せるように努力するつもり」
私はいくら時間をかけてもたどり着けないかもしれない境地に強がりを言って誤魔化す。
今までもタイガと一緒に努力してきた。
いくら頑張ってもA級の魔物を二人で狩るのが今の限界だということも。それなら……
いっそのこと、結婚して家庭を築いたら何もかも考えが変わるかもしれない。
シャルルは少し酔いが回ったのか普段考えない事を考えてしまう。
私も一人の女の子だということを、そして今目の前にいるのは気になる異性の男性だということ。
そう。彼と恋人になるのも一つの選択肢になっていた。
お母さんの言葉を思い出す。私の一番の武器
「女の武器は最大限使いなさい」
悩みを打ち上け、自分のコンプレックスの部分を話すシャルル。
「この胸も戦いには向かないよね」
そう言って胸を触ってアピールしてみる。
「ど、ど、どうだろうね! うん」
確実にユウキの目は私の胸に釘付けになっている。
この胸が初めて武器になることを知り、母さんには感謝する。
「ユウキは大きい胸は好きなの?」
気付かないうちに大胆になっていくシャルル。
「勿論好きだよ! 大好きだよ!」
顔を縦に振り鼻の下を伸ばしながら返事をするユウキ。
「何で男の人はこんな胸がいいって言うんだろうね?」
子育てに必要な乙パイ。それ以外使い道のないもの。そう私は思ってたのに。男の人は何処にこれの魅力を感じるのだろう?
釘付けになっているユウキに私はからかってみる。異性に触られた事はないけどそれくらいなら何も問題ない。
「少しなら触ってもいいよ」
「えっ? いいの?」
戸惑いながらユウキは嬉しそうな顔をする。
私は手を取りどうぞと誘ってみる。怖い気持ちはなかった。
ユウキなら他の異性とは違う何かを感じたから。
「それでは……」
モミモミ モミモミ
「えっ………はぅ……ぅん。くふ……」
思わず変な声が出てしまう。
頭の芯に電撃が走ったかのように身体から力が抜けていく。
「んぁ………何これ、力が………入らない」
初めての体験に身体がおかしくなりそうになる。
こんなはずじゃなかったのに、とろけそうな程、身体が熱くなり力が抜けていく。
すると刺すような視線を感じる。
気付かなかった。緊張と酔っていた事もあり、いつから側にいたのかも。そこには……
「オヌシら、何チチクリ合っとるんじゃ………」
ギクゥゥッ!!!
ユウキの肩が大きく揺れて声の聞こえた方にゆっくり顔を向ける。
すると鬼の顔をしたキラ様がユウキの後ろに立っていた。
「キッ、キラ様! これは違うんだよっ! シャルルちゃんが凄い肩が凝るって相談を受けたからさっ。 俺は胸をほぐしてたんだよ!」
必死に冷汗を滴ながら言い訳をするユウキ。
「なんじゃ、そうだったのか。 ワチはてっきり……」
そう言って振り替えって帰ろうとするキラ様を見てホッと肩を撫で下ろすユウキ。しかし……
「んな訳、ないじゃろがぁぁぁぁ!!!!」
バリバリバリバリィィィ!!!!!
二本の角から激しい稲妻がユウキに向かって一直線で伸びていき、それを避けれずユウキに直撃する。
「ぎょぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ビックブーのように丸焼きになったユウキを冷たい視線で言い放つキラ様。
「何下らんことやっとるんじゃ!! 礼をしたんならさっさと帰ってこい!」
こうして無理やりキラ様の登場によりユウキは強請退場させられて行ったのだった。
しばらくはシャルルの視点で物語が進んで行きますのでよろしくお願いします!




