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18話 閃き

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 ニーアは体制を瞬時に立て直す。


 しかし目の前にはケルベロスの牙が向かってきている。


 ニーアの片膝を付いた状態からでは受ける事も避ける事も出来ない。


 一瞬の判断ミスが死に直結する。


 この世界は死が身近なところにあり、周りで死んでいった人間を何人もニーアは見てきた。


 死ぬ覚悟はとうに出来ている。


 だが今はまだその時ではない。ユウキは達と約束したからだ。


 それはとっさに思いついた事だった。


「乱れ突きぃぃっ!!」


 ドドドドドドォッ!!!


 騎士などが槍術で使う技を見よう見真似で繰り出したのだ。


 ニーアの連撃はケルベロスの大きく口を開けた喉元に何発もヒットする。


「ギャァイイイイイン!!!」


 喉元にダメージを負ったケルベロスは、怯んで悶絶する。


 初めてのまともなダメージが入ったとニーアは実感し、続けざまに追い突きを繰り出す。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁっ!!!!!」


 ドドドドドドドッッ!!!!!!!


「ニーアちやん!! 俺も加勢するよ!!」


 俺はニーアちゃんの元に駆けつける。


 最後の力を振り絞り俺も拳に力を込め連撃を繰り出す。


「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


 ドコドゴゴドコドゴォォォォォォォ!!!!


「ギャィィィィィィン!!!!」


 ニーアちゃんと俺の連撃をまともに受けたケルベロスは倒れ込む。


 そして最後に俺はケルベロスに『魅了』かけた。


 すでに弱ったケルベロスはもう防ぐ術はなかった。


「痛かったろ。 ごめんな」


「クルルルルルルルルル………」


 俺は大人しくなったケルベロスの頭を優しく撫でる。


 こいつにも罪はないからだ。


「これからはお前達がこの森を守ってくれるかい?」


「「「 ババゥゥ!! 」」」



 ケルベロスは返事をし、これからはこの森を守る番犬として任命することにした。


 これでこの森も安全になるだろう。


 俺はニーアちゃんに振り向き、戦いが終わった事を伝え最後の頼みをする。


「最後にニーアちゃん、邪気スポットを壊して欲しい」


「はい……」


 ニーアは邪気スポットに向けて走りだし、全てを破壊するように全力で抜刀する。


「斬鉄剣っ!!!」


 ドゴゴォォ………ォォォォ…………………ォォォン!!!!


 強烈な斬撃は邪気が出ていたスポットを跡形もなく破壊する。


 そしてこの一撃で見事に邪気スポットを破壊することが出来たのだ。


「ニーアちゃん……ありが……とう」


 足元が定まらなくふらついた俺をニーアちゃんが咄嗟に優しく支えてくれる


「ユウキさん大丈夫ですかっ!?」


「うん……。 ちょっと魔力を使い過ぎた………」


「流石に今回ばかりは余裕がなかったのぉ」


「うん…………中々大変だった……」


 俺は薄れゆく意識の中で身体が暖まっていく感覚を覚える。


「こ……れは?」


 ユウキの周りに異変が起こっていることにニーアも直ぐに気付き声を出す。


「…………凄い」


 キラ様だけは神の使いもあってこの現象がどんなものなのか知っていた。


「この粒子は微精霊か」


 邪気がなくなった森からは、それまで姿を隠していた微精霊達が安全と分かったのか俺の周りに集まって来て、まるで宴しているかのように幻想的に飛び交っていた。


 まるで夜空の星と同じ数だけ輝くように。俺達を囲み温かく祝福してくれる。


  ーー あり………がと………う…………… ーー


 微かに聞こえた微精霊達の声は俺達の苦労が報われたかのように優しく包み込んでくれたようだった。


「はは……どう致しまして………」


 俺はふと拳を見ると拳に聖なる光りが宿っていることに気付く。


 それがなんなのかは分からなかった。


 でもこんなに疲れたのはこの世界に来て初めてだ。


 今は少しだけ眠りたい。


 ほんの少し……そう思うとユウキは深い眠りに落ちていくのだった。


「ユウキさん! ………ダメです。 寝てしまいました」


 ニーアがユウキを少し揺するが深く眠りについたせいか反応もない。


「コヤツも流石に疲れたんじゃろぉ。 今は寝かしといてやれ」


「それにしても人の前には出てこない微精霊達までコヤツは手懐けてしまうのか……」


 精霊は人族の前には滅多に姿を表さない。


 力も心も弱い微精霊達は本能的に操られたり、捕まったりするのを嫌うからだ。


 だがユウキの聖気を宿した拳を見た微精霊達は神に選ばれた救世主だと分かっていたから出て来たのだった。


「お前達もコヤツが世界を救うことに疑問を持ってないのじゃな……」


( ? )


 キラ様から出た聞こえない程の小言に、私は理解することが出来なかった。


 救世主のユウキさんに使い魔のキラ様が着いて旅をしていると始めから思っていたから。


 何か違う理由でもあるのだろうか。


 キラは考えていた。


 最初にユウキが言った言葉を。


 そしてこれまでの行いを。


(罪人のユウキを監視するためにワチが使い魔として付いていたのに、コヤツは罪人の心がまるでない)


 キラ様の疑問は確信に変わっていく。


 ーユウキは罪人ではない。本当に間違えて転生してきたのだとー


 神からのギフトを受取り、拳に聖なる光りを宿した聖気を使い、微精霊まで手懐けてしまうユウキの異例っぷりを間近で見てきたキラ様は本当にマリア様が間違えてしまったのだと………。


(これは、緊急でマリア様に報告せねばならぬな)


 自分の髪の毛を一本抜き念を込める。


 込められた髪の毛は光を帯び伝書鳩のように形を変える。


「クルックゥゥ」


「頼んだぞぃ」


 頼まれた形を変えた光の鳩は、空高く羽ばたき天空に消えていった。


 神の使いは天界から任務を任されて下界に降りてからは基本自由に行動が出来る。


 しかし、通信をするという機能がなく、緊急で連絡したいときは光の鳥を飛ばせ天界とやりくりしているのだ。


「マリア様………」


 キラ様の異変にニーアも気付き声をかける


「キラ様。 どうかされたのですか?」


「い……いや、なんでもないんじゃ」


 確定ではないこと。


 ましてや下界の人間に話せる内容でもなくキラ様は誤魔化すことにする。


「それよりも、しばらくはここでユウキが起きるまで動けんから休憩じゃな」


「そうですね。 ケルベロスもキラーウルフ達も大人しくなっていますから安全でしょう」


 安全になった広間の一角にユウキを休ませ、キラ様とニーアは邪気スポットが出ていた場所に足を止めた。


「不自然な程、邪気が出ておった………何故じゃ」


 邪気が溜まりやすい場所、出やすい地脈はある。


 ただその場所は昔からあり最近になってそんな場所が急に増え始めたのはおかしいとキラ様は思っていたからだ。


「ぬ………」


 粉々になったスポットの一つから怪しい破片が見つかる。それをキラ様は引抜き手に取る。


「こっ……これは!! 摩符!!!」


 地脈のみだれ、地形の変化で邪気が発生したのではない。それは手に取られた摩符から発生したものだったのだ。

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