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17話 激突 ケルベロス!!

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 俺とニーアは同時に別々の方向へ走り出す。


 ニーアはケルベロスへ、そして俺はキラーウルフを誘うためスキル『挑発』を使う。


 挑発を受けたキラーウルフの群れは俺に向かって一直線で物凄い勢いで走ってくる。


 挑発をやった自分でいうのもなんだけど


「おぉ!! (こわ)ぁ!!!」


 俺の肩に掴まっているキラ様も心配する


「気をつけろよ! いくらオヌシとて集団で噛みつかれたらあの世行きじゃぞ!」


 俺とニーアは戦闘になる前に作戦を立てていた。


 俺は全体攻撃、範囲攻撃が得意な事もありキラーウルフの群れを一掃する事に。


 単体戦が得意なニーアは単騎でケルベロスと戦う事に。


 その際、ニーアには斬撃で切る事はせず剣を鞘に納めた状態でHPを削って欲しいとユウキに頼まれる。


 しかしニーアはそんな戦闘をしたことがなかった為出来るか分からなかったが、ユウキのお願いということもあり無茶な依頼を引き受けた。


「ユウキさんの為にもケルベロスは私が引き受けます!!」


 キラーウルフの群れを()(くぐ)りケルベロスに向かって走るニーア。


 俺はトランプをポケットから出して構える。


 約10m手前までキラーウルフの大群が俺に向かって襲いかかってきていた。その数はおよそ50匹。


 一点に向けたキラーウルフの殺気は塊になってユウキに襲いかかる。


 ユウキは全神経を集中してキラーウルフの数を確認する。


 遊び(どうけし)としての空間把握能力は全職業の中でも長けてはいる方だが天職のユウキはその才能が群を抜いていた。


 向かって来ているキラーウルフの数は全部で52匹だった。


 手元のカードはジョーカー2枚のカードを合わせると合計54枚。


 一匹に1枚のカードを当てていけば2枚はカードが余る事になる。


 鋭く投げて切り刻む事も出来たが、それでは今までと変わらない。


 俺は殺さず生かす方法で戦うと決めたからだ。


「よし、足りる、行くぞっ!!!!」


「これが俺のやり方だぁっ!!!」


 ユウキはキラーウルフに向かって360度、52枚のカードを投げつける。


 一見、ただばらまいただけのように見えたが、神からのギフトを受けている天職の遊び人の力は常人には到達出来ない神の力を宿していた。


 投げたカードはユウキからしたら何処にどのカードがあるのか、52枚の投げたカードが何処に向かって飛んで行くのか全て正確に把握出来ていた。


 まるで指先から52枚のカード全てに一本一本の神経が繋がっているかのように正確にキラーウルフの片方の目を遮るように張り付いていく。


「ギャン!?」


 視界を遮られたキラーウルフの群れは何が起こったか分からず転げ回る。


 初めての事なんだろう。こんな狩りの防がれ方は。


「ギャァウン!!」


 俺はそれを見てキラーウルフの群れに突っ込み素手で一撃お見舞いする!


「わん公は、これで少し大人しくしててくれ!!!」


 ドカァァァッ!!!


 ドゴゴォォォォッ!!!!


 次々とキラーウルフの大群にげんこつや蹴りを入れていく!


「「ギャァン!!!」」


「「ギャァィン!!!」」


 次々とキラーウルフは吹っ飛んでいく。


 視界を塞がれた事で動きも散漫になり、集中力をなくした群れは、もう群れでなくなっていた。


 キラはユウキの姿を見てあることに気付く。


 ユウキから攻撃を受けたキラーウルフからは邪気が微かながら薄れていくことに。


 そしてそれはユウキの拳に聖気が宿っている証だった。


「 !! 」


「コヤツ……勇者や賢者と同じ聖気を使えるのか……

斬撃で切り捨てたりするのではなく。 相手を生かす為に戦う。 その心に聖気を宿したというのか……」


 遊び人の不思議な能力にキラ様はユウキなら世界を変えていけるのではないかと実感する。


(ひる)んだぞ!! ユウキ止めじゃぁ!!」


 俺は蹴散らしたキラーウルフの群れに向かってスキル『魅了』をかける!


 ダメージをくらい邪気が薄れたキラーウルフの群れは見事に全てかかる事になる。


 俺は命じる、自分の飼い犬を優しく仕付けるように。


()せっ!!!」


「わんっ!!」


 まるで忠犬ハチ公のようにキレイに附せが決まる。それを見たキラ様もようやく一安心する。


「ふぅ。 これでこっちは片付いたのぉ」


 一見、ノーダメージで戦闘を終えて余裕そうにも見えたがユウキの精神力とマジックポイントは共にすり減らされていた。


 52匹のキラーウルフを殺すことなく同時に魅了、挑発をかけたのだ。


 ただでさえマジックポイントの少ないユウキにとっては生かしながら倒すことは思ってた以上に大変で消耗戦になった初めての経験だった。


「くっ……。 大分、精神力とマジックポイントを削られたな。 でも、ニーアちゃんのサポートに行こう」


 既にユウキに余裕はなかった。


 マジックポイントが底を尽きかけてしまっているせいで思うように身体に力が入らない。


「ユウキ、オヌシ大丈夫か?!」


 足元がふらついたユウキにキラ様は心配するが、ニーアちゃんがケルベロスと戦っている。ここで休んでいる訳にはいかない。


「だ……大丈夫さ。 行こう」


 そう言いニーアちゃんのサポートに向かう。


 その頃、ニーアは横目でユウキの戦いを見ながらケルベロスの三頭の鋭い噛みつきを交わしながら戦っていた。


「ユウキさん達は上手くいったみたいですね」


 戦いはニーアの方が善戦はしていたが斬撃でなく打撃で戦うというスタイルに慣れてない為に気持ち苦戦を強いられていた。


 一匹で三つの顔をもつケルベロスはそれぞれの思考を持ち別々の攻撃パターンでニーアに連撃で襲いかかってくる。


 いつもより距離を空けながら鞘の付いた剣で攻撃を当てる


「ギャゥァ!!」


「くっ!思ったよりもダメージが通らない!」


 ケルベロスは身体がキラーウルフよりも三倍は大きいがスピードはキラーウルフよりも早く力も圧倒的にあった。


 鋭い牙を食らえばニーアも一撃で致命傷を負うリスクがある。


 安全に立ち回り、且つ相手にもダメージを入れるのは至難の業なのだ。


「ふぅぅ。 斬撃ではなくダメージをを与えるには……」


 一定の距離よりも長い距離を置くニーア。


 どうしたら倒せるのかもう一度考える。


 戦いに関してはソロでAランクに匹敵するほどの実力を持っていたニーアは戦闘の天才といえる存在だった。


 ケルベロスはニーアに距離を取られた為に逆に魔力を使った攻撃パターンを切り替える。


 下級魔法だが三頭の口からはそれぞれ魔弾が出来あがった。


「獣のくせに魔法まで使えるのか」


「ガァァッ!!!」


 ケルベロスが一気に距離を縮めながら三発の魔弾はニーアに向けて次々と放たれる。


 それを左右にギリギリ見切りで交わす。


「くっ!」


 ニーアに距離を詰めたケルベロスは鋭い前足の『狼爪』でニーアを凪ぎ払う。


 剣で狼爪を受け止めたニーアだがケルベロスのパワーに弾き飛ばされる。


「くぁっ!!!」


 横に三回転程転がったニーアはすぐ体制を立て直すが、すぐ目に前にはケルベロスの鋭い牙が襲いかかっていた。




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