15話 やましい心
読んで頂きありがとうございます。少しでもよかったと思われた方はブクマ登録と評価お願いいたします‼タイトルで検索しても中々引っ掛かってこないのでよろしくお願いします!
さぁ。この状況をどうしたもんか。
宿屋のいつも借りている自室のベットにはニーアちゃんが無防備に横たわっている。
その横には少し邪魔なキラ様も寝ている。
俺とキラ様は基本一緒の部屋で過ごしている。
部屋をとる時に勿論問題になった。
でも、キラ様は手の平サイズに小さいのに部屋を分けるのは勿体ないだろうと話をし、なかば強引に納得してもらった。
可愛いキラ様も流石に手の平サイズでは俺も何とも思わない。
ただ俺と一緒に寝るのは抵抗があるらしくベットは二つある部屋にしていたのだ。
そのキラ様のベットに一応運んだのだが。
一つの疑問が浮かぶ。
本当にキラ様のベットでよかったのか?
キラ様はニーアちゃんに厳しい。
俺がキラ様のベットに入ってたら勿論ぶっとばされるが、ニーアちゃんがキラ様のベットに寝ていても怒るタイプかもしれないからな。
「うーん。 迷うな、この選択」
妖精のような寝顔のニーアちゃんを見ながら、俺はキラ様のげんこつでニーアちゃんが朝から頭を腫れさせて泣かせたくないなと考えた。
「よし! 俺のベットで一緒にねるか!」
キラ様が神経質なのがいけないんだよ。
その点、俺のベットなら安心安全だ。
そうと決まれば行動までは早い。
俺は熟睡しているニーアちゃんを起こそうとベットに近付く。
するとバチバチと音がした。
俺は恐る恐るキラ様の方に向くとキラ様も熟睡中だ。
「な、なんだ気のせいか……」
俺は改めてニーアちゃんをお姫様抱っこしようとして背中に手を回す。
イヤらしい気持ちなんてないのだ、これはキラ様からの理不尽なげんこつからニーアちゃんを守るために俺は仕方なく行動しているのだ。
そう思いながら抱き寄せる。
「ぐへへ……」
俺から下衆な笑いが自然と出た瞬間だった……
バリバリバリバリッ!!!!
稲妻が俺の全身を駆け巡る
「ぎょわゎゎゎぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
全身丸焦げになってその場に倒れ込んだ俺は確信する。
これはキラ様の電撃だ。撃った本人を見てみると、起きた気配もなく熟睡している。
「なん……だと!」
寝ながら射ったということは考えられることは俺のやましい心に反応している?
以前キラ様と出会った時に言っていた事を思い出したぞ。
「ワチはお前とリンクしておる。 何処に行こうが逃げれはせん。良からぬ事を考えていようなら裁きが下ると思うのじゃな」
あの言葉はこういう事だったのか……。
良からぬ事を自動で感知して電撃が撃てるなんて反則だろ。俺はニーアちゃんをキラ様から守るために正義の元に行動したんだぞ。
「俺は絶対諦めんぞ……」
激痛に顔を歪ませながら俺は立ち上がる。
「待ってて、ニーアちゃん……俺が君をキラ様という暴君から守ってあげるから……」
再度、俺はニーアちゃんの背中に手を回し抱き上げる。
今度は成功した。
やったぞ、俺の正義の心がキラ様の自動照準から逃れる事が出来たんだ。
そして遂に俺のベットに移し変える事に成功する。
「くっくっく。 やったぞ……成功だ!」
俺は酔っていたこともあり達成感に高揚してしまっていた。それがいけなかった。
「はっはっはっ!! 大したことないなキラ様の電撃なんて!! 実に下らない技だ! 本気を出した俺には通用しないんだよっ!!」
「なんじゃと?!」
キラ様の目がパチリと開いていて、いつの間にか俺の方を見ている。
そして角からはバチバチと電撃が走っている。
俺は慌てて自然な流れで場を収めようとする。
「えっ!! あっ、キラ様起こしちゃた? キラ様のベットにニーアちゃんが間違えて入っちゃったからさ。 俺が今移し変えてたんだよ! これでぐっすり朝まで寝れるからさっ!!」
「……そうか」
俺はキラ様の険しい表情が緩むのを確認して安堵の溜め息をこぼす。これで一安心だ、後はもう一度キラ様を眠らせてから……
一瞬、その後のお楽しみの事を考えた時だった。
「さっきからワチの角がおヌシに反応しとるんじゃがのぉ!!」
バチバチと電撃が走っていた稲妻が俺の方に向けて放たれる!
「しまったぁぁぁぁぁっ!!!!」
《《《《 バリバリバリバリッ!!!!! 》》》》
「ぎょわゎゎゎぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
俺はまたも丸焦げになってその場に崩れ落ちる。
電撃は寝ている時よりも起きてからの方が数段威力は強いのかとその時俺は初めて知ったのだった。
「下らんことを考えとらんでさっさと寝るんじゃなぁ」
そう言って再び眠りに着くキラ様。俺は薄れゆく中、次こそはと心に誓ったのだった。
「む……無念」
がくっ………
こうしてこの夜は何もなく次の日が来て俺はキラ様に再び起こされる事になる。
「おい、ユウキ! いつまで寝とるんじゃ!!」
どごぉぉぉっ!!
頭をど突かれて俺は強制的に眠りから起こされる。
「いってぇぇぇっなぁ!!」
「ニーアはもうとっくに起きとるぞ! 後はオヌシだけじゃ! さっさとせんか」
俺は愚痴を溢しながらもさっさと起きて着替えと旅支度をし、キラ様と食堂に降りた。
食堂には先にニーアちゃんが席に着いており、三人分の食事が用意されている状態だった。
挨拶を交わして席に着いた俺達は次に向かう旅の打ち合わせをする。
「次に向かう所なんだけど、次の街に行く前に邪気スポットを壊してから行きたいんだ」
「えっ。 邪気スポットに? あそこには強力な魔物がいますよ」
ニーアも危険な場所と知っているらしく顔が険しくなる。
「そうなんだ。 邪気を受けた魔物を大人しくさせるにはこれが一番てっとり早いかなって」
「確かにユウキさん程の実力があればなんとかソロ討伐も可能かも知れませんが……」
先日の闘いで闇金紹介の元Bランクのロベルトをあっさり倒したユウキの実力を目の辺りにしたニーアは本当にユウキさんなら簡単にやってしまいそうな雰囲気に少し呆れながら答える
「ここから北に三日程進んだ所に『混沌の森』という邪気スポットがありますが、そこにはケルベロスが住み着いています」
「ほぅ。 よく知っとるな」
「一度クエストを受けている時に混沌の森に迷いこんでしまった時がありまして……気付いたら邪気スポットの側まで来ていて、ケルベロスとキラーウルフの群れに囲まれていました」
「かっかっか! ミジンコらしいのぉ。 それでよく生きて帰ってこられたのぉ」
「必死でしたよぉ! ケルベロスは3つの頭を持ちそれぞれの思考で攻撃してきますし、群れでいますのでキラーウルフもしつこくて……」
「確かケルベロスはCランク指定でキラーウルフはDランクじゃたはず」
「個の強さはそれぞれの大したことないですが奴らは必ず群れでいますのでランク以上に厄介なんですよ」
「よし! 三人で討伐しよう!!」
「三人じゃない。 二人じゃ」
「「 えっ!? 」」
俺とニーアちゃん二人は同時に声を合わす。キラ様から言ったセリフが理解できなかったからだ。
「ワチは戦闘には参加出来ん。 悪い者を対象とした罪人と魔族にしかワチは裁きを下せない。 つまりは魔物は邪気を浴びとるだけで元は動物、罪はないから裁けんのじゃ」
「………そうだったのか。 戦闘に参加してなかったのはただ単にめんどくさいからじゃなかったんだ」
「ユウキ、オヌシはワチをどういう目で見とったんじゃ。 失礼な奴じゃのぅ」
「仕方ないでしょ。 キラ様は日頃の行いが悪いんだから!!」
「じゃかぁしぃわぁ!!」
どごぉぉぉっ!!
「いったぁぁぁぁぁっ!!」
「取りあえず戦闘には参加出来ん。 闘えるのは魔族が出てきた時だけじゃ!」
「はいはい。 分かりましたよ。 二人でどうにかしますよ」
「なんじぁ! その反応はぁ?!」
「なんでもないです!!」
こうして三人は北の『混沌の森』の邪気スポットを壊すのとケルベロスを大人しくさせる為に足を向ける事になったのだった。




