1話 残業なんてやってられるか!
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ーーーカタカタかタカタカタカタカタカタカーーーーー
パソコンのキーボードを打つ音だけが部屋に鳴り響く
今は午後8時。
日中大勢の人で慌ただしかった職場も、今はすっかり静けさを取り戻し、社員のいなくなった部屋で俺と他数名だけを残すだけになっていた。
ここは某有名企業の職場で俺は今仕事を終わらそうと必死になっているところだった。
「おい、宮沢これたのんだぞ」
先輩社員Aは俺に膨大な量の書類を置いて帰る準備を進め始めた。
おいおい、頼むにも限度ってものがあるだろ。
「ちょっと、え? 流石にこの量は……」
俺の言葉を聞いてない素振りで先輩社員は言い放った。
「残業してまでやることじゃね~な。じゃあな! 頼んだぞ」
薄笑いを浮かべて去っていくクソ社員A先輩。
見るとめんどくさい書類ばかりが置いてある。始めからそうするつもりだったのだろう。
何処の会社でも必ずいる嫌な奴。
いつもそうだ。
嫌なことはことごとく全部俺に回ってくる。
俺は先輩に渡された書類をなんとか終わらそうとしたが、次第に怒りが込み上げてくる。何故無能なアイツの仕事を俺がやらないといけないんだ。
「くそっ! 絶対明日上司に言いつけてやる!!」
俺は先輩に振られた仕事を途中で止め、帰る支度をする。
こうなったら知ったことか。アイツが勝手に全部仕事を押し付けて帰ったことは全部上層部まで上げてやる。
俺がいつまでも我慢する男だと思ったら大間違いだ。
最後まで俺の隣に残っていた後輩の田口に声をかける。
「田口帰ろうぜ。やってられねーわ!」
「珍しいですね。宮沢さんが仕事をほかって帰ろうなんて」
『あのポンコツ野郎がいなけりゃ俺はもっと早くいつも仕事を終わらせて早く帰れてるんだよ。先輩ってだけでやる仕事選びやがって』
気付いたらもうすぐ22時になろうとしている。
世の中には毎日夜の日付が変わるまで仕事をしている会社員がどれくらいいるのだろう。
朝から晩まで働いて、そして休みの日までサービス残業で仕事に行く。俺もそのブラック企業の内の一人にどっぷりと肩まで漬かっていた。
「そうですね。帰りましょう」
俺と田口は帰る支度をする。
俺は宮沢 勇樹 有名企業に勤める東京に住む独り暮らしの28歳独身だ。
独身といっても付き合って3ヶ月の可愛い葵ちゃんという彼女はいる。
俺が連れの飲み会に行った時、葵ちゃんに一目惚れをし、その後、何回も猛烈にアタックしてゲットした初めての彼女だ。
一見、順風満帆に見える俺だが実はそんな事はない。
俺は小さい頃から呪いにかかったかのように運がなかった。
両親には捨てられ児童養護施設で育てられた。
捨てられた理由はわからないし、今となってはどうでもいい話だ。
俺はそんな幼少期からの不幸という逆行を打破しようと色々頑張って生き抜いてきた。
小学校では上履きを捨てられたり、親がいない捨てられた子だと虐められた時もあった。それ以外にも辛いことも沢山あった。
それでも中学では明るく振る舞い友達も出来た。
高校に行ってからはバイトをしながらお金を貯めながら勉強も頑張って、大学には奨学金制度を使いなんとか死ぬ思いで卒業もした。
そして就職活動は30社程落とされた中で、やっとの思いでこの会社に入る事が出来た。
これも全て俺の強靭なメンタルの賜物と言っても過言ではないだろう。ほんとに自分で自分を褒めてもいいと思う。
今となってはこの会社に入ったのも良かったか悪かったかも分からない。この会社に入ってブラック企業だと気付いたのは入って間もなくしてからだった。
ただ、生活の為に働いているようなものだった。
ただこんな呪われたような腐った世界でも、唯一彼女の葵ちゃんに会ってイチャイチャする事だけが俺の楽しみだった。
俺達は会社を出て、お互い駅に向かう。
会社から駅までは約10分位で、普段身体を動かさない俺にとっとは丁度いい運動になっていた。とは言っても徒歩な訳だが。
~~ピロンッ!メッセージが届きました。~~
「おっ、葵ちゃんからメールだ」
『彼女さんからですか?こんな時間なのに熱いですね~』
「何々……」
『…………』
「どうしたんですか固まって?」
「いつも仕事、仕事って言ってばっかりで会う時間なくて寂しいから別れるって……」
「えっ!そりゃ、一大事ですよ。行かなくて大丈夫ですか?!」
「んなの、行くに決まってるだろぉ!!」
俺は携帯をポケットに急いでしまい。帰る前に晩飯食べるかと約束した田口に謝る
「わりー!また今度食い行こうっ!」
「大丈夫ですよ!またの日に!」
俺は駅に向かって慌てて走り始める。まだ今からなら彼女のところまで近い事もあり、電車で20分で到着出来る。
なんとか話をして仲直りしたい。そう思いながら走り続けた。
「くそっ!!はぁ……はぁ……」
脚が重い。日頃どんだけ運動してないか分かるな。
煙草は吸ってはいないが肺まで痛い。
気持ちは学生の頃とさして変わった気もしないが、肉体は学生の頃のようにはいかないな。
やっとの思いで駅前のコンビニに着いた俺は、たかが1km走るだけで喉がカラカラになっていた。
「はぁ……はぁ。水だけ買っていこう」
そう思ってコンビニに足を向けた時だった。
≪≪≪≪≪≪ きゃーーーーーっ!!! ≫≫≫≫≫≫≫
「 えっ!!! 」
コンビニの中から女性の悲鳴が聞こえた。それは只の叫びではなく、明らかに恐怖に怯えた声。
誰が聞いても只事じゃないと瞬時に理解させるには充分な叫び声だった。
俺は嫌な予感がし、咄嗟に構える。何か起きるのかと。
するとコンビニから深くニット帽を被り目には黒のサングラスをかけ、口にはマスクをした強盗が表れた。
格好から計画的な犯行だろう。よく見ると手には刃渡り20cm位だろうか。大きな包丁を持っている。
こういう時の追い込まれた犯人は何をするか分からない。
辺りは悲鳴に包まれる。逃げ出す者がほとんどだった中、俺も本当は逃げ出す予定だったんだ。
強盗が出て来るその時までは………
しかし俺の歯車は無情にも、また狂い始めた。
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