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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
82/162

73.【下巻/サイド・レアレテ】白雪姫ノ罪ト罰

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/現実編(レアレテ)(7/7)】

 むかしむかし(アルタ・パサド・)あるところに(アルタ・ルオーゴ)――

 雪のように白くブラン・スース・ネージュ血のように赤い(ルータ・スース・サン)お姫様(プリンツェスィン)がおりました――……



 王様はぎょっとして、まるで幽霊(ガイスト)を見たようでした。王様が魔女の言葉の意味を飲み込み、体が凍って動けなくなっている間に、七人の小人は黒い(ひつぎ)を取り囲み、(まじな)いを唱えました。


 ようやく息を吐いて、玉座から立ち上がった王様は、もう王様には見えず、ただのちっぽけな年寄り(アーヴォ)にしか見えませんでした。


 (ドワーフどもは、(まじな)います)


 立派な王様の衣装に押し込められた、滑稽芝居の道化コメディア・トプシーデのようによたよたと、王様は小人どもを止めようと、二歩ほど歩み出ましたが、衣の(すそ)を踏んでばったりと倒れました。


 (ドワーフどもは、(まじな)います)


 王様は威厳をもって命じようとしましたが、口から出たのは、哀れな泣き言だけでした。


 (ドワーフどもは、(まじな)います)


 「やめよ。余は、そのようなもの、見とうない」


 ドワーフどもは、(まじな)います。魔女の高笑いが、広間に響きました。

 王様(ロワ)の、お城の人達(サバント)の祈りは届きませんでした。




 ***********************************


 白雪姫の目が開きました。リトル・ジョンが素早く、白雪姫の口から先生(サヴァン)の薬草を抜き取ると、姫の唇に血のような赤色(ルター・スース・サン)が戻りました。死者が(ひつぎ)からむくりと身を起こすと、誰も口が利けず、身動きもできず、気の毒なことに気を失うことも出来ませんでした。

 誰も彼もを舞台に上げて立ち上がると、白雪姫の目は赤い矢のように飛んで、意地悪な継母(ままはは)を一直線に射抜き、射止めました。白雪姫は意地悪な継母(ままはは)を指差して叫びました。



 「猫殺し、人殺し。さあ、お前の罪を数えろ――……」



 沸いた薬缶ケットルのような、呼び笛のような、長い長い悲鳴が広間に尾を()きました。意地悪な継母(ままはは)の悲鳴はまるで泣き妖精(バンシー)の声のようでしたから、そこにいた人々は気が触れないように、耳に二本の指を突っ込まなくてはなりませんでした。お(きさき)にスカートに黒い染みが広がり、床に小さな水たまり(アッカ)(こしら)えました。

 やがて悲鳴が止むと、お后は今度は頬を掻き(むし)りながら、げらげらと笑い出しました。お后はいつまでも笑い続けて(ラーフ・エ・ラーフ)、きっと、死ぬまで笑い続けるのだろう(ラーフ・エ・ラーフ)と思われました。


 ハンプティ・ダンプティ、塀から落ちて、お后はすっかり壊れてしまって、医者にも職人にも、割れた卵二度と元には戻せませんでした。




 ***********************************


 王様はあまりのことに、頭の中で楽隊が太鼓(たいこ)を打ち鳴らして、何も考えることができませんでした。生き返った娘(ブラネージュ)は立ち尽くす父親に歩み寄って、

お父様(パテル)、私が無事に戻って、さぞお喜びでしょうね」

と言いました。王様は白雪姫を見て、正気を取り戻しましたが、ほんやりと、

「うむ」

と言ったきりでした。そこで白雪姫は、

「それでは、もっと喜ばせて差し上げましょう――……」



 「お父様(パテル)、私のお腹には、赤ちゃん(ベーボ)がいるのですよ」



 これを聞くと王様、いっぺんに目が覚めて、白雪姫を見ました。王様は煮えたぎる油のように熱く、井戸水のように冷たい汗をかきました。


 このような●●●(カジモド)の娘に、よもや子が出来るとは思わなかったが、なんと恐ろしい、なんと罪深い。生まれながらの罪深い子(クレミネオ)は、どのような姿(・・・・・・)で生まれてくるというのか? そこで王様は、白雪姫にこう(たず)ねずにはいられませんでした。

姫や(フィーリア)。その子の父親(ペーレ)は誰なのだ?」

白雪姫は、冬のお月様のように微笑みました。その微笑みは、鷦鷯(ミソサザイ)の卵を見つけた蛇の笑み(セルペンテ)のようでもあり、幼子を抱いたマリア様の笑み(ブラン・マール)のようでもありました。

「さあ――……」

白雪姫は七人の小人を順繰りに見回して、首を(かし)げました。



 「そればかりは、この子(ベーボ)が生まれてみなければ判りませんが、生まれてみれば誰が父親か(・・・・・)は、きっとひと目で判りましょうね」



 王様はドワーフども(或いは●●●者(カジモド)ども)を一人ずつ見つめて、それから(わめ)き出しました。王様とお后は二人並んでわめくやら笑うやらでしたから、それはたいしたどんちゃか騒ぎでした。



 王様はその夜のうちに、広間で首を吊りました。




 ***********************************


 こうして賢いお姫様は、お城と国をそっくり手に入れて、新しい女王様(ノーヴォ・クィン)になりました。


 白雪姫の戴冠式(たいかんしき)には、国中の●●●者(カジモド)物乞い(エンベッタ)が招かれて、みんな心から新しい女王様を祝福しました。そして宴席に招かれた偉い人達は何も知らなかった(・・・・・・・・)ので、振舞われた御馳走(コシーナ)を、こんなに美味しい御馳走は食べたことはないと、すっかりたいらげてしまいました。テーブルの下に投げられた王様の骨は、(カーネ)がどこかに(くわ)えていきました。


 それから忠実な七人の小人(シエテ・ドワーフ)(或いは●●●者(カジモド)達)は、高い身分と立派な御屋敷、褒美(ほうび)もたんまり貰って、ひとつ目男(エン・オリオ)先生(サヴァン)魔女の娘(ウィケッド)大臣(ミネスト)になり、残りの者は公爵様(アーデル)になりました。

 公爵(こうしゃく)様のお屋敷には入り用のものは何でも揃っていて、●●●者(カジモド)公爵(こうしゃく)様達は、一番の上等の服を着て、一番上等の御馳走(コシーナ)を食べ、一番上等の葡萄酒(ヴァン)を飲んで、死ぬまで豪勢に暮らしました。


 焚き火の七人(トルチャ・シエテ)はひと角の者になり、それに人々はドワーフ達をたいした魔法使いだと思っておりましたので、●●●者(カジモド)公爵(こうしゃく)様をばかにする者は一人もありませんでした。



 こうして●●●者(カジモド)達は梯子(はしご)のてっぺんまで登り詰めて、とうとうお月様(セレイネ)に手が届いたのでした。




 ***********************************


 そうそう、あの意地悪な継母(ままはは)、悪い魔女がどうなったのかと申しますと――……


 悪い魔女に相応(ふさわ)しい罰といえば、真っ赤に焼いた鉄の靴ルータ・アイゼン・ショジュを履かせ、死ぬまで躍らせることでしょうが、レジナがすっかり気が触れたのを見て、心の優しい白雪姫は(あわ)れんで、自分の部屋に連れて行きました。

 そして白雪姫は、レジナを人形(バンボーラ)のように、お気に入りだった翡翠の目の黒猫(ネーロ・カッツェ)のように愛でました。


 白雪姫は、レジナに金と銀で出来た(オウロとアルジェの)服を着せ、白い絹の靴(ブラン・ショジュ)を履かせ、蜂蜜色の髪を梳かし、薔薇の頬に紅を差し、エメラルドの瞳を見つめました。レジナは(こしら)えさせた大きな鳥籠(カジオ)に入れられて、白雪姫のために微笑み、歌を歌いました。

 ところが、白雪姫はお妃に白い靴(ブラン・ショジュ)を履かせておりましたが、白い靴(ブラン・ショジュ)はすぐに赤い靴(ルータ・ショジュ)なって、幾ら新しい靴に取り換えても、やっぱり赤く(ルータに)なりました。


 と申しますのも、首切り役人(パラッジ)(のこぎり)()かせたお后の右の足首から、いつまでも血が流れ続けたからでした。



 それで悪い魔女は、真っ赤に焼いた鉄の靴ルータ・アイゼン・ショジュを履いて踊ることは(ゆる)されましたが、赤い血の靴ルータ・サン・ショジュを履いて、ひょこひょこと踊るように(・・・・・)歩かねばなりませんでした。




 ***********************************


 さて、女王様(クィン)になった賢いお姫様(プリンツェスィン)、白雪姫はお城と金の冠(オウロ・クローネ)を手に入れて、本物のお姫様の幸せ(フェリーシ)を手に入れて、国中で一番の高みから、(さげす)んでいた者達みんなに報いを与えることができました。


 やがて白雪姫(ブラネージュ)は、可愛らしい王子(プランシュ)を産み、末永く幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたしラコンテ・エンデ・ヴィ・フェリーシ



 ああ、白雪姫(ブラネージュ)の赤ちゃんの父親(ペーレ)が誰だったかは、私は聞かず終いで知りません。ただ――……


 その子は、雪のように白くブラン・スース・ネージュ血のように赤い(ルータ・スース・サン)赤ん坊(ベーボ)だったということです。




 ***********************************


 るああ。めでたしめでたしラコンテ・エンデ・ヴィ・フェリーシ、だ。



 これがこの“封鎖区”(セラド)物語(ラコンテ)の、それなりに現実的な結末(レアレテ・エンデ)だ。


 なーふ。現実的(レアレテ)っつっても、魔法的なの(マジッカ)がないイマジカってだけで、それ以外はめちゃくちゃ(トプシー・ターヴィ―)だけどな。ま、カルーシアの“世界観”を外れてるから“封鎖区”になるんだ、って話だけどな。


 ところでさあ。


 るああ。お前、このセラド”の“核”(クウア)が“誰”だったか、判ったかあ?

 なーふ、白雪姫(ブラネージュ)? そう思った?


 うーぷす。正解は……今言うのは止めとこうかな。いっひっひ、勿体つけるんじゃねーけど、次に会った時のお楽しみにしとこうぜ。



 いずれにせよ、お前は現実と幻想(アルタ・トゥエ)の結末を読んできたんだけど、なーふ、どっちの結末(エンデ)がお気に召したかな?


 るあっ、まだこっち(・・・)しか読んでない?

 あれ、そうだっけ……? おかしいなあ……うーぷす、やっぱりかあ。


 実はさあ、アタシ、お前にこの話すんの二回目(・・・)なんだよ。


 うーららあ、お前ってさあ、影響されやすい方? うーぷす。分裂構造のイマジカ、二つに分かれたセラドに触れて、どうやらお前の“世界観”(イマジカ)も二つに分かれちまったみてーだな。


 るああ。アタシがさっき話したのは、もう一人(アルタ)のお前ってことか。


 なーふ。まあまあ、大丈夫だって。別に問題ないと思うよ(いいんじゃねーの)。お前がもう一人いるったって、 別の“世界”(アルタ・オルト)にいるんだ、顔を合わせることはねーよ。それに、世の中には同じ顔してる奴が三人いるって言うし。


 これも、“異世界転移(オルト・トランジ)”の ひとつってことで。



 てな訳で、アタシはまだ仕事があるからさ。お前も自分の“世界(オルト)”に戻りなよ。まあ、どっち(・・・)に戻るのかは知らねーけどさ、いっひっひ。



 るああ。それじゃあ――……

 また別の時に(アルタ・パサド・)、違う場所で(アルタ・ルオーゴ)――……

                            挿絵(By みてみん)

           ~“まっくらくらいの白雪姫【サイド・レアレテ】・完~

次のお話は【幻想編(パンタシア)】の最終話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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