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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
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72. 【下巻/サイド・レアレテ】七人ハ死者ヲ運ンデ

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/|現実編(レアレテ)(6/7)】

 葬列(パレード)がやって来る、Hi-Ho! Hi-Ho!

 火葬場目指して(カーニヴァルの)行進だ、Hi-Ho-Ho!



 さて、白雪姫と七人の小人(シエテ・ドワーフ)に、また一人加わり、焚き火の九人(ナーベ)になって、しばらくして――……


 王都の城壁の門番(グアルダ)は、森から賑やかに街道をやって来る、おかしな一団に目を留めました。はて、何だろう、旅回りの一座(コメディア)だろうか? 目を()らした見張り番は、やって来る者達を見て仰天(ぎょうてん)して、あんまり大きく目を見開いたので、顔から二つの目玉が(こぼ)れ落ち、道をころころ転げていきました。

 ●●●になった見張り番の横を、おかしな一団は通り過ぎていきました。都市城壁はパレードを阻むことはできません。なぜなら、市門には、

来る者は拒まな(ライザンテ・レ・)いが、去る者は(パーネ,トライド)決して赦さない(ール・レ・ダオレ)

と彫られた銘板が掛かってあるのですから。


 一団が王都に乗り込むと、粉挽き(ムニエッロ)も、お百姓(コンターデ)も、女中(セルバンジェ)も、旦那様(ガバディン)も、仕立屋(テイラ)も、鍛冶屋(フェフィーロ)も、兵隊達(ソルダート)も、おかみさん(ダーミナ)も、坊や(チッコ)も、嬢ちゃん(チッカ)も、ロバ(ドンキ)も、(カーネ)も、(カッツェ)も、(トッポ)も、鵞鳥(ガンソ)も、しらみ(ピドッチ)まで、町中あやうく目玉をなくすところでした。



 と言いますのも、おかしな一団は七人の小人(シエテ・ドワーフ)を従えた、美しい魔女(ウィケッド)率いる葬送(パレード)だったのです。




 ***********************************


 ウィケッドは三人のドワーフの担ぐ輿(こし)に乗り、身に(まと)う黒い衣は町を出る時に着せられた粗末な麻ではなく、この上ない上等の絹で(こしら)えてありました。魔女は輝石で指を飾り、巧みな細工をした見事な杖を手にしておりました。


 そして小人達どもはと申しますと、どんな出来損ないの●●●者(カジモド)でも、これほどではないだろうと思えるような、恐ろしい体つきをした化け物どもで、奇妙な服を着て、鈴の下がったの帽子を被り、羽飾りを身につけ、足には重い(かせ)()められておりました。


 パレードの先導するひとつ目の小人(エン・オリオ)は、心惹(こころひ)かれる不思議な匂いの(こう)()き、魔女の行く手に花びらを撒きました。

 手なし男(シーネ・マーノ)顔溶け男(シーネ・ノリス)微笑む男(シーネ・テット)が担ぐ輿(こし)の後ろからは、二人(トゥエ)と見れば一人(エン)で、一人(エン)と見れば二人(トゥエ)の二つ胴の小人が、ひとつの頭は笛を吹き、もうひとつの頭は鐘を鳴らして歩きました。

 しんがりの二人は可笑(おか)しいほどのおっきいの(ヒガンテ)ちっさいの(ミジェス)で、後ろと前になり、大きいのは腰の下、小さいのは頭の上で台を担いでおりました。そうすると、ちょうど高さの釣り合いが取れたのです。


 そして王都の人々が十字を切ったことには、台の上には黒い(ひつぎ)が乗っておりました。おかしなおかしな一団は、行き合う人々を震え上がらせながら、お城を目指して行きました。



 おかしな一団がお城に着くと、門番は槍を構えてパレードを止め、

「いったいぜんたい、どういうつもりなんだ? ここは見世物や旅芸人、お前達のような者の、来るところではないのだぞ」

大きな声で呼ばわりました。お城の門番は、心のお皿が空っぽになるまで、勇気を掻き集めておりましたが、本当は怖くて仕方ありませんでした。


 そこでウィケッドは言いました。

「門をお開けなさい。私は王様の言いつけで、ドワーフどもを退治してきたのだ」

これを聞いた門番が魔女の顔をよくよく見ると、立派な姿になっておりましたが、見覚えのある()せっぽちの(チッカ)だと知って、飛び上がって王様に知らせました。



 魔女の行進は、王様の前に通されました。




 ***********************************


 さて、おかしな一団がお城の大広間に召し出されますと、王様は噂に聞くドワーフというものを前にして、その気味が悪いことに驚きと怖れを隠すのにひと苦労でした。魔女に仕立てた小娘が、本当の魔女になって戻ってきたことにも、心穏やかではありません。


 お后(レジナ)は紙より白い顔をして、誰の目にも心の内が露わな有り様でした。



 ウィケッドは輿(こし)を降りると、(うやうや)しく(ひざまづ)きました。

「王の(おお)せの通り、悪しき妖精の女王を退治し、残りの者どもは我が魔法(マジッカ)(とりこ)にして参りました」

魔女はドワーフどもに命じて、王様の前に黒い(ひつぎ)を運ばせました。王様が家来(サバント)(ふた)を開けさせると、白い絹で内張りした中に、●●●者(カジモド)亡骸(なきがら)が横たわっておりました。お城の人々は、その死人を見て息を飲みました。


 小人の女王(ドワーフ・クィン)、その怖ろしい死に顔は誰あろう、忘れるはずもない見紛(みまが)うはずもない、あの白雪姫(ブラネージュ)のものだったのです。

 白雪姫の顔は生きていた時よりまだ白く(ブラン)、目を閉じ、四本と六本の指を胸で組んで、まるで眠っているように死んでおりました。



 玉座から立ち上がり、死せる娘を長いこと見ていた王様は、胸の中で正反対の思いがぐるぐる踊りましたが、やかて腰を下ろし、長い長い息を吐きました。怖れと不安の種だった白雪姫が、目の前で確かに死んでいることを我が目で見て、胸を針で刺す小さな小さな痛みと、寒い冬の日に暖炉の前でぬくぬくと毛布(ブラケッタ)に包まる安堵を、同時に覚えました。


 継母(ままはは)は、この世で最も怖れていた者がいなくなって、心を覆う雲が晴れたように思い、頬が(べに)を差したように染まり、雪解けを迎えて(プリマ)の訪れを喜び(ほころ)花のよう(フラール)でした。これを見て王様は、なお気を良くして、

「うむ、確かにこれこそ、小人の亡骸(ドワーフ・クィン)。見事な働き、大儀(たいぎ)であった」

それから思わず顔を背けたくなるような化け物(ドワーフ)どもを指差し、訊ねました。

「して、このおかしな者どもは何とした?」


 そこで魔女が(かしこ)まって申すことには、

「この者どもは森の妖精でありますれば、人にはない知恵を持ち、人には作れぬ品物を(こしら)え、人の知らぬ薬を(せん)じます。埋もれた財宝の()()も知っておりますし、(まじな)いも心得ておりますので、王様の家来(サバント)になさればさぞかし役に立とうと思い、私の魔法で逆らえぬように(いまし)め、召し取って参ったのです」


 これを聞いて、王様は考えました。


 なるほど、この者ども、見目は悪いがそれに目を(つむ)れば、魔法(マジッカ)(わざ)する家来(サバント)なら、城中の家来を集めたよりも役に立つだろう。ドワーフがいれば、どんな国と戦争をしても打ち負かせよう。


 それで王様はますます上機嫌になり、大喜びで言いました。

「そなたは、余の期待以上の上首尾を収めたな。約束通り、そなたは自由の身(リベルタス)だ。いや、そればかりではないぞ。これほどの働きには相応の褒美(リコペンサ)を与えねばならん。何でも申してみよ。四つの馬車に積んだ黄金(オウロ)か、それとも領地がよいか? そなたさえ望めば、余に仕える魔法使いとして、誰より高い身分で召し抱えよう」



 「さ、望みは何ぞ?」



 私の望みはただひとつ。

 私から奪い去ったもの、そっくり返して欲しいだけ――……



 魔女の娘は小さな声で呟きました。けれどもその叫びは小さすぎて、小人達にしか聞こえませんでした。それに、魔女は知っておりました。割れてしまった卵ハンプティ・ダンプティは、王様の家来を集めても、馬をみな()いて来ても、二度と元には戻せないことを。




 ***********************************


 その時、ひと際小さな小人が歩み出て、甲高い声で魔女に何やら耳打ちをしました。ウィケッドは我に返って、頷くと、また(かしこ)まって、

「王様、ドワーフどもが王様にお仕えする証として、妖精に伝わる秘術の中の秘術を、ご覧に入れる許しを願っております」

とひれ伏しました。王様は思わず身を乗り出して叫びました。

「何と、妖精の秘術とな?」


 王様も、お城で一等物知りの博士や学者(ソフォス)だって、誰も本物の魔法を見たことはありません。しかも、ドワーフの秘術だというものですから、見てみたくない人などありません。

 レジナも気持ちが軽くなり、何とも楽しい気分で、魔女の魔法で(とりこ)にされているなら小人も怖れることはないと思い、そのように珍しいものなら是非見てみたい、と言いました。そこで王様は問いました。

「宜しい、やってみせよ。して、魔女よ。その秘術とは、いなかる魔法(マジッカ)か?」



 これを聞くと、魔女は声を立てて笑いました。私もその時お城の広間にいたのですが、その笑い声は何と冷たく恐ろしかったことでしょう。

 それはこの世の復讐(ベンデッタ)を集めて出来たような笑いで、今しも罪人の首に斧を振り下ろす首切り役人(パラッジ)の笑い、罪もない人に魔女の烙印(らくいん)()司祭(クレリーカ)の笑いでした。そして魔女はこの時、まさしく首を打ち落とそうとしていたのです。


 魔女の娘(ウィケッド)は答えました。



 「はい、王様。死人(モルトウエ)を生き返らせる魔法にございます――……」




次のお話は【幻想編(パンタシア)】の第6話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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