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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
77/162

70.【下巻/サイド・パンタシア】白雪姫ト招カレザル訪問者

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/幻想編(パンタシア)(4/7)】

 葬列(パレード)がやって来る、Hi-Ho! Hi-Ho!

 火葬場目指して(カーニヴァルの)行進だ、Hi-Ho-Ho!



 ほどなくして、旅から戻った七人の悪魔は、ベッドに横たわる白雪姫と、胸の上の林檎(レインガゥ)を見て、何もかもいっぺんに知りました。


 七人の悪魔は白雪姫の亡骸(モルトー)を黒い(ひつぎ)に寝かせて、その周りで嘆き悲しみました。悪魔達は白雪姫を取り囲み、幾日も幾夜も泣き続けました。七人の悪魔は七日七晩、頭を抱え、喉を掻き(むし)り、床を叩き、(わめ)き、泣き叫んで――……やがて、笑い出しました。

 七人の悪魔は立ち上がり、地獄の罪人達も縮み上がるような大きな声で、天を見上げて笑いました。笑い声で(カーサ)が揺れ、(シルワ)が悲鳴を上げるほどでした。

可愛い娘、愛しい娘(カリーナ・ダミナーレ)。私達は知っていたよ」


 「お前が天使ども(アンジェ)(たぶら)かされ、天の林檎(レインガゥ)を食べてしまうことを、お前が死の眠りにつくことも、私達は知っていたよ。全て、私達の思惑(おもわく)通りに運ぶことを。天使どもはお前をうまく(だま)したが、天使どもを出し抜いたのは我らなのさ」



 堕天使達は白雪姫の(ひつぎ)を担ぎ上げ、まるでカーニバルのパレード(トプシー・ターヴィー)のように、愉快に森を行きました。悪魔達は交代で(ひつぎ)を掲げ、まるで道化(アレルキーノ)のように周りを飛び跳ね、歌い踊りました。

「さあ、裁判(ジュージム)だ、審判(ジュージム)をやろう! 神様(デイオス)の真似事をしよう、ひと足お先にやってやろう! いと高き方(デイオス)は最後の日に、死人をみなを生き返らせるのだ! 全ての罪が等しく裁かれるように死人(モルトウエ)(よみがえ)るのだ! 審判(ジュージム)には死人(モルトウエ)がいるのだ!」


 「死人(モルトウエ)ならここにあるぞ! 死人(モルトウエ)ならここにあるぞ!」


 フェルテート達は白雪姫の亡骸(なきがら)を運んでいきました。


 判事(ジュジ)は我らだ、原告(アクトリス)死人(モルトウエ)だ。

 さあ、行こう。罪人ども(クレナミオ)が待っている。

 さあ、行こう、お城へ向かって行進(パレード)だ。


 何から何まで真っ逆様(トプシー・ターヴィー)悪魔の審判フェルテート・ジュージムを始めよう――……



 さあ! パレードだ――……




 ***********************************


 さて、白雪姫のいなくなったお城では、みな大喜びで、たいそう幸せ(フェリーシ)に暮らしているかと申しますと、そうではありませんでした。

 人々は不幸せ(ミザリー)が去ると、入れ違いに幸い(フェリーシ)が行進してくるのだと思っておりましたが、不幸せが去ることと幸いが訪れることは、また別の話なのだと、ただそれだけを知りました。


 と申しましても、心の苦しみから解かれ、お后(レジナ)にまた元気と美しさが戻ったことは、幸いに数えても良かったかもしれません。


 ある日王様(ロワ)は、遠国の王様への書簡(レトーラ)にペンを走らせておりましたが、ふと大臣(ミネスト)に向かって、

「不幸せというものは、ひとつだけの理由のせいでは、ないのだなあ」

と言いました。

大臣も難しい本から顔を上げて、

「左様でございますなあ」

と言いました。そして王様はまた手紙に向かい、大臣は本に向かいました。白雪姫がいなくなって、人々はただそれだけのことを学びました。


 ただ、人々がまだ学んでいないことがありました――


 追い払った不幸せ(ミザリー)というものは、しばしば、別の姿で戻って来ることがあるということを。それは、時には幸せが行進してくることもございましょうが、もしかするともっと奇妙なものが行進してくることも……




 ***********************************


 その日は、実に奇妙な一日でした。


 その日は夏の一番照り付ける日よりも暑く、冬の一番(こご)える日よりも寒く、お日様が昇ったのに薄暗い、朝からどうにも気の晴れない日になりそうな様子でした。

 そう言えば、今朝は雄鶏(ガッロ)が鳴かなかった。そう言えば、今朝は雌鶏(ガンナ)が卵を産まなかった。そう言えば、今朝は(ムッカ)があまり乳を出さなかった。そう言えば……そう言えば……きっと、天気のせいさ、こんな日もあるさ。明日になったら、またすっかり元通りさ。



 明日(ドマーニ)が来れば――……



 天気が悪いからおかしいのではなく、おかしな日だから天気が悪いだと、始めに知ったのは王都の都市城壁の門番でした。

 門番(グアルダ)は、森から賑やかに街道をやって来る、おかしな一団に目を留めました。はて、何だろう、旅回りの一座(コメディア)だろうか? 目を()らした見張り番は、やって来る者達を見て仰天(ぎょうてん)して、あんまり大きく目を見開いたので、顔から二つの目玉が(こぼ)れ落ち、道をころころ転げていきました。

 ●●●になった見張り番の横を、おかしな一団は通り過ぎていきました。けれども門番は、

「後のことの見えなくなった俺は、町一番の果報者だ」

と思いました。なぜなら門番は●●●になる前、おかしな一団を追うように、森から真っ赤な雲(ルータ・ヌーペ)が広がりながら空を覆い尽くししていくのを見ていたからでした。


 一団が王都に乗り込むと、粉挽き(ムニエッロ)も、お百姓(コンターデ)も、女中(セルバンジェ)も、旦那様(ガバディン)も、仕立屋(テイラ)も、鍛冶屋(フェフィーロ)も、兵隊達(ソルダート)も、おかみさん(ダーミナ)も、坊や(チッコ)も、嬢ちゃん(チッカ)も、ロバ(ドンキ)も、(カーネ)も、(カッツェ)も、(トッポ)も、鵞鳥(ガンソ)も、しらみ(ピドッチ)まで、町中あやうく目玉をなくすところでした。



 と言いますのも、おかしな一団は七人が七人、喪服を身に(まと)った奇妙な葬列(パレード)だったのです。



 七人は(とむら)いの装束(しょうぞく)を着てはおりましたが、何とも愉快で(たま)らないという様子で、笛を吹き、鐘を打っておりました。七人の楽しげなことといったら、衣装さえそれほど不吉でなかったら、町の人々も思わず一緒に踊り出したことでしょう。


 七人に率いられた赤い硫黄の煙(ヴァミリオ・フマレ)が空を焦がしていなかったなら。


 町はたくさんの松明(トルチャ)に照らされたようで、誰の顔も赤く見えました。それはもう、血塗れのように真っ赤(ルータ・スース・サン)でした。そして王都の人々が十字を切ったことには、七人(シエテ)はまるで神輿(みこし)を担ぐように、滑稽(こっけい)な仕草で黒い(ひつぎ)を担いでおりました。

 おかしなおかしな一団は、行き合う人々を震え上がらせながら、お城を目指して行きました。




 ***********************************


 おかしな一団がお城に着くと、門番は槍を構えてパレードを止め、

「いったいぜんたい、どういうつもりなんだ? ここは見世物や旅芸人、お前達のような者の、来るところではないのだぞ」

大きな声で呼ばわりました。お城の門番は、心のお皿が空っぽになるまで、勇気を掻き集めておりましたが、本当は怖くて仕方ありませんでした。


 ところがおかしな一団は、まるで幽霊(ガイスト)のように門番の傍らをすり抜け、閉じた門さえすり抜けて、お城に入ってしまいました。おかしな行進の、行く手を阻むことのできる者は、ありませんでした。誰もこのおかしな者達(アルレキーノ)の服の(すそ)(つか)むことさえ出来ないものですから、七人は喇叭(らっぱ)を吹き鳴らして、

審判だ、審判(ジュージム! )をしよう!(ジュージム!) 生きている者も、死んでいる者も、墓から出てきて、みな集まれ!」

(はや)したて、跳んだり跳ねたり行くのでした。


 こうして黒衣のパレードは、王様の前までやって来ました。



 お城の大広間は、窓の外の真っ赤な雲が映えて、まるで火事で燃えているように見えました。扉が開け放たれ、(にぎ)やかで奇妙な道化達が踊り込んで来ると、王様は悲鳴を上げたお(きさき)の肩を抱き、腰の剣に手を掛けました。

 王様の前には十人の騎士(テイス・カヴァリオロ)がいて、それぞれに剣を抜きました。ところが気味の悪い道化どもは、幻のように、騎士の剣をすり抜けて跳ね回るので、騎士達はまるで道化どもと踊る、舞踏会(マスカレイド)の乙女にしか見えませんでした。


 王様は心の底から驚きましたが、まだ声に王様らしい威厳が、僅かにも残っているよう願いながら、

「そなたらは、何者か? 国王たる余に何用か?」

と問い(ただ)しました。王様の声には、ほんの少しだけ、王様らしい威厳が残っておりました。すると道化ども(トプシーデ)が一人が進み出て申しますには、

「これより審判(ジュージム)を執り行う。我らは、(なんじ)らが(クレム)を裁くためにやって来た」

王様の百倍も威厳に満ちた声で宣言しました。



 この声、この言葉を聞いて、この七人の道化が何者なのか、理解(わか)らなかった者は一人もありませんでした。




次のお話は【現実編(レアレテ)】の第5話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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