68.【下巻/サイド・パンタシア】白雪姫ト七人の――……
百万の罪と罰、千万の堕落した魂。
墓場に埋まっているのなら、地獄の底まで掘り続けるのさ!
さて、白雪姫がすっかり眠り込んでいると、家の主達が松明を掲げて帰ってきました。家の主達は、もうみなさんもお判りでしょうが、七人おりました。
松明の七人は家の前にやって来ると、一番目の主が死んだ狼を見つけて、
「おや、誰か狼を打ち殺した者がいるぞ」
と言いました。すると二番目の主が扉を見て、
「おや、誰か家に入った者がいるぞ」
と言いました。そこで主達が食堂に行ってみると、三番目の主が食卓を見て、
「おや、誰か私の皿から食べた者がいるぞ」
と言いました。主達が見ると、みな誰かが自分の皿からひと口食べたのを見つけました。すると四番目の主が、
「おや、誰か私の杯に指輪を入れた者がいるぞ」
といいました。そこで主達は寝所に行きました。すると五番目の主が、
「おや、誰かが私のベッドで眠っているぞ」
と言いました。主達が見ると、ベッドのひとつで女の子がすうすう寝息を立てておりました。ところが、その女の子の醜いことといったら! それで六番目の主が、
「これはいったい誰だろう?」
と言いました。
七人の主達は、
「これはいったい誰だろう?」
と言いました。女の子は眠ったままでした。
そこで七番目の主が、
「この子が目を覚ますまで、待つことにしよう」
と言ったので、松明の七人はベッドの周りに並んで、白雪姫が目を覚ますのを待つことにしました。
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白雪姫が目を覚ますと、ベッドを七つの顔がぐるりと囲んでいるのに気づきました。白雪姫は驚きました。と言うのも、七人の主達は姫の二人分も背が高くて、自分の●●●が恥ずかしくなるような美しい人達だったのです。
それに、七人は背中に大きな翼を負っていて、まるで大聖堂の天井画に描かれた、栄光の天使達のようでした。
けれども七人は、栄光の天使達のように福音を掲げるではなく、歓びを歌わず、顔は悲しみに沈み、硫黄の匂いがして、翼は黒く斑に汚れておりました。
それで白雪姫は、ああ、この人達は恩寵を失った天使、悪魔と呼ばれる者達なのだと知りました。
白雪姫が畏れて口も利けず、息も出来ずにいると、一番目の悪魔がずいと顔を近づけて言いました。
「我らはお前をよく知っているぞ、雪のように白く、血のように赤いお姫様よ。おお、罪深き白雪姫――……」
すると二番目の悪魔が来て、
「お前はここに来るのに、年寄りの小人に出会ったろう。小人から、何か食べ物を貰ったかね?」
姫は口の中で舌が蝶結びになったようでしたが、何とかこう答えました。
「はい、蜂蜜を食べ、葡萄酒を飲みましたが、乳には口をつけませんでした」
するとまた三番目の悪魔が顔を出し、
「お前はここに来るのに、どの道で来たんだね?」
と問いました。白雪姫は答えました。
「金で敷いた、ライオンの道で来ました」
これを聞いた四番目の悪魔が、
「お前はここに来るのに、何に乗って来たのかね?」
と訊ねたので、白雪姫は震えました。
「白馬の牽く、銀の馬車に乗って」
そこでまた五番目の悪魔の言うことには、
「それで私達の狼を撃ち殺し、銀の皿から食べ、絹のベッドで眠ったのだね」
白雪姫はもう、死んでしまいそうなほど畏れて叫びました。
「はい、何もかも、すっかり仰る通りです、堕天使様」
六番目の悪魔が前に出て、
「お前が会った小人は、もしかしてこんな姿をしていなかったかね?」
と言うが早いか、一人の悪魔が三人の小人に姿を変えると、どれも地面まで届く髭をしていて、にこにこ笑っておりました。
白雪姫は驚いて、もう言葉もありません。
悪魔達はみな、満足そうに頷き、七番目の悪魔がいいました。
「どうやら、罪深き子、ブラネージュ。お前は私達のお客になるのに、申し分がないようだね。さあ、今夜は銀の食器をもうひと揃い、ベッドをもうひとつ拵えなければなるまいぞ」
こうして白雪姫は、悪魔達の一等のお客様になり、もてなされました。
銀の食器とベッドは、瞬く間にもうひとつずつ拵えられました。
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さて、松明の七人は、白雪姫を下にも置かないもてなしようで、テーブル(もちろん金で出来た方です)には王様でも見たことない豪勢な御馳走が並び、葡萄酒は血のように赤く、足りないものはひとつもありませんでした。
白雪姫は悪魔達と楽しく食事をしておりましたが、ふと、ここはどこなのか、と訊ねました。すると白雪姫の隣の悪魔が、ナイフとフォークを置いてこう言いました。
「ここは罪の家さ。私達は、そもそも人の良き友人であったのだが、我らと人の仲の良いことを良く思わなかった神様が、我らを森へ追いやったのだ。それで、この頃では我らの友人もずいぶん減ってしまってね」
「今では私の友人は、自分は何ひとつ知らないことはないと吹聴して歩く男、自分の美しさを鼻に掛ける女達だけさ。私は七つ罪のひとつ、私の名前は傲慢さ」
すると隣の悪魔が、
「礼拝の途中に娘に色目を使う男、化粧をして着飾る女には、私がキスをしてやることになっている。私は七つ罪のひとつ、私の名前は色欲さ」
すると隣の悪魔が、
「人に金を貸して無慈悲に取り立てる者、足りぬ足りぬと欲しがる者の、帳簿を付けているのがこの私さ。私は七つ罪のひとつ、私の名前は強欲さ」
すると隣の悪魔が、
「雄鶏が鳴いても起きてこない男、ベッドに寝そべるのが何より好きな女、そういう手合いは私の手の中なのさ。私は七つ罪のひとつ、私の名前は怠惰さ」
すると隣の悪魔が、
「楽しみのために食べる男、水の代わりに葡萄酒を飲む女のところへは、私の招待状が届くだろう。私は七つ罪のひとつ、私の名前は飽食さ」
すると隣の悪魔が、
「赦すことを知らない者、怒鳴り、唾を吐き、足を踏み鳴らす者。その火に薪をくべることこそ私の仕事。私は七つ罪のひとつ、私の名前は憤怒さ」
すると最後の悪魔が、
「人の幸せを悔しがる男、高き者を引きずり下ろそうとする女、そうした者が鏡を覗く時、映っているのは私の顔さ。私は七つ罪のひとつ、私の名前は嫉妬さ」
こうして七人の主達は、白雪姫に名前を明かし、それぞれの本当の姿を見せました。その罪深いこと、邪なことといったら、白雪姫は気を失わずにいるのがやっとでした。
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さて、名乗りを終えると、悪魔達はまじまじと白雪姫を見ました。光こそ失っていても、天国にいた頃の美しさはそのままの悪魔達に見つめられ、白雪姫は●●●の体を恥じて、身の縮む思いでした。悪魔達は頭を振って言いました。
「やれやれ。それにしたって神様め。ずいぶんお前に出し惜しみしたようじゃないか。お前の親が、洗礼を施さなかったのも、香油を塗らなかったのも、我らには良いことだ」
「どれ、ひとつ我らが神に代って、お前に祝福を与えようではないか」
傲慢が白雪姫の頬にキスをすると、なるで老婆のようだった、雪のように白い髪が、真夜中の様に黒く濡れた見事な髪になりました。
それから色欲、強欲、怠惰、飽食、憤怒、そして嫉妬が頭のてっぺんから爪先まで、次々にキスをするたび、白雪姫は●●●の背中が伸び、ほっそりと娘らしい体つきになり、姫の体の間違いは残らず正されました。
雪のように白い肌はそのままに、紅玉の瞳と林檎の頬、血のように赤い唇と、白雪姫は望むがままの美しさを手に入れ、まったくもって非の打ち所のないお姫様になりました。
こうしてブラネージュは世界でたった一人、悪魔達に祝福されたお姫様になり、悪魔達に愛されて、罪の家で楽しく幸せな毎日を送りました。
本当は、ここでめでたしめでたしとお話を幕にしたいのですが……
物語には続きがあって、私はそれを語らなければなりません――…




