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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
73/162

68.【下巻/サイド・パンタシア】白雪姫ト七人の――……

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/幻想編(パンタシア)(2/7)】

 百万の罪と罰(ルビー)、千万の堕落した魂(ダイアモンド)

 墓場に埋まっているのなら、地獄(ゲッヘナ)の底まで掘り続けるのさ!



 さて、白雪姫がすっかり眠り込んでいると、家の主達(ガバディン)松明(たいまつ)を掲げて帰ってきました。家の主達は、もうみなさんもお判りでしょうが、七人(シエテ)おりました。


 松明の七人(トルチャ・シエテ)は家の前にやって来ると、一番目(エン)の主が死んだ狼を見つけて、

「おや、誰か狼を打ち殺した者がいるぞ」

と言いました。すると二番目(トゥエ)の主が扉を見て、

「おや、誰か家に入った者がいるぞ」

と言いました。そこで主達が食堂に行ってみると、三番目(ウルア)の主が食卓を見て、

「おや、誰か私の皿から食べた者がいるぞ」

と言いました。主達が見ると、みな誰かが自分の皿からひと口食べたのを見つけました。すると四番目(クアル)の主が、

「おや、誰か私の(さかずき)に指輪を入れた者がいるぞ」

といいました。そこで主達は寝所に行きました。すると五番目(ペンデ)の主が、

「おや、誰かが私のベッドで眠っているぞ」

と言いました。主達が見ると、ベッドのひとつで女の子がすうすう寝息を立てておりました。ところが、その女の子の(みにく)いことといったら! それで六番目(セース)の主が、

「これはいったい誰だろう?」

と言いました。


 七人の主達は、

「これはいったい誰だろう?」

と言いました。女の子は眠ったままでした。


 そこで七番目(シエテ)の主が、

「この子が目を覚ますまで、待つことにしよう」

と言ったので、松明(たいまつ)の七人はベッドの周りに並んで、白雪姫が目を覚ますのを待つことにしました。




 ***********************************


 白雪姫が目を覚ますと、ベッドを七つの顔がぐるりと囲んでいるのに気づきました。白雪姫は驚きました。と言うのも、七人の主達は姫の二人分も背が高くて、自分の●●●(カジモド)が恥ずかしくなるような美しい人達だったのです。

 それに、七人は背中に大きな翼を負っていて、まるで大聖堂(セントアリオ)の天井画に描かれた、栄光の天使達(アンジェ)のようでした。

 けれども七人は、栄光の天使達のように福音(ふくいん)を掲げるではなく、歓び(アレグリア)を歌わず、顔は悲しみに沈み、硫黄(いおう)の匂いがして、翼は黒く斑(ネーロ)に汚れておりました。


 それで白雪姫は、ああ、この人達は恩寵を失った天使(フェルテート)悪魔と呼ばれる者(ディアボロス)達なのだと知りました。



 白雪姫が(おそ)れて口も利けず、息も出来ずにいると、一番目(エン)の悪魔がずいと顔を近づけて言いました。

「我らはお前をよく知っているぞ、雪のように白くブラン・スース・ネージュ血のように赤(ルータ・スース・サン)いお姫様よ(・プリンツェスィン)。おお、罪深き白雪姫クレミネオ・ブラネージュ――……」


 すると二番目(トゥエ)の悪魔が来て、

「お前はここに来るのに、年寄りの小人に出会ったろう。小人から、何か食べ物を貰ったかね?」

姫は口の中で舌が蝶結びになったようでしたが、何とかこう答えました。

「はい、蜂蜜を食べ、葡萄酒を飲みましたが、乳には口をつけませんでした」


 するとまた三番目(ウルア)の悪魔が顔を出し、 

「お前はここに来るのに、どの道で来たんだね?」

と問いました。白雪姫は答えました。

「金で敷いた、ライオンの道で来ました」


 これを聞いた四番目(クアル)の悪魔が、

「お前はここに来るのに、何に乗って来たのかね?」

(たず)ねたので、白雪姫は震えました。

「白馬の()く、銀の馬車に乗って」


 そこでまた五番目(ペンデ)の悪魔の言うことには、

「それで私達の狼を撃ち殺し、銀の皿から食べ、絹のベッドで眠ったのだね」

白雪姫はもう、死んでしまいそうなほど(おそ)れて叫びました。

「はい、何もかも、すっかり(おっしゃ)る通りです、堕天使様」


 六番目(セース)の悪魔が前に出て、

「お前が会った小人は、もしかしてこんな姿をしていなかったかね?」

と言うが早いか、一人の悪魔が三人の小人に姿を変えると、どれも地面まで届く(ひげ)をしていて、にこにこ笑っておりました。


 白雪姫は驚いて、もう言葉もありません。


 悪魔達はみな、満足そうに頷き、七番目(シエテ)の悪魔がいいました。

「どうやら、罪深き子、ブラネージュ。お前は私達のお客になるのに、申し分がないようだね。さあ、今夜は銀の食器をもうひと揃い、ベッドをもうひとつ(こしら)えなければなるまいぞ」

こうして白雪姫は、悪魔達の一等のお客様になり、もてなされました。



 銀の食器とベッドは、(またた)く間にもうひとつずつ(こしら)えられました。




 ***********************************


 さて、松明の七人(トルチャ・シエテ)は、白雪姫を下にも置かないもてなしようで、テーブル(もちろん金で出来た方です)には王様でも見たことない豪勢な御馳走が並び、葡萄酒は血のように赤く、足りないものはひとつもありませんでした。



 白雪姫は悪魔達と楽しく食事をしておりましたが、ふと、ここはどこなのか、と(たず)ねました。すると白雪姫の隣の悪魔(フェルテート)が、ナイフとフォークを置いてこう言いました。

「ここは罪の家(カーサ・クレム)さ。私達は、そもそも人の良き友人であったのだが、我らと人の仲の良いことを良く思わなかった神様が、我らを森へ追いやったのだ。それで、この頃では我らの友人もずいぶん減ってしまってね」


 「今では私の友人は、自分は何ひとつ知らないことはないと吹聴(ふいちょう)して歩く男、自分の美しさを鼻に掛ける女達だけさ。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は傲慢(アルガン)さ」


 すると隣の悪魔(フェルテート)が、

「礼拝の途中に娘に色目を使う男、化粧をして着飾る女には、私がキスをしてやることになっている。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は色欲(リビドー)さ」


 すると隣の悪魔(フェルテート)が、

「人に金を貸して無慈悲に取り立てる者、足りぬ足りぬと欲しがる者の、帳簿を付けているのがこの私さ。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は強欲(グリード)さ」


 すると隣の悪魔(フェルテート)が、

雄鶏(おんどり)が鳴いても起きてこない男、ベッドに寝そべるのが何より好きな女、そういう手合いは私の手の中なのさ。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は怠惰(ファネロ)さ」


 すると隣の悪魔(フェルテート)が、

「楽しみのために食べる男、水の代わりに葡萄酒を飲む女のところへは、私の招待状が届くだろう。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は飽食(ギオット)さ」


 すると隣の悪魔(フェルテート)が、

(ゆる)すことを知らない者、怒鳴り、唾を吐き、足を踏み鳴らす者。その火に(まき)をくべることこそ私の仕事。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は憤怒(フローリ)さ」


 すると最後の悪魔(フェルテート)が、

「人の幸せを悔しがる男、高き者を引きずり下ろそうとする女、そうした者が鏡を覗く時、映っているのは私の顔さ。私は七つ罪のひとつ(ペカタ・モルタリオ)、私の名前は嫉妬(ジェロス)さ」



 こうして七人の主達(ガバディン)は、白雪姫に名前を明かし、それぞれの本当の姿を見せました。その罪深いこと、(よこしま)なことといったら、白雪姫は気を失わずにいるのがやっとでした。




 ***********************************


 さて、名乗りを終えると、悪魔達(シエテ)はまじまじと白雪姫を見ました。光こそ失っていても、天国にいた頃の美しさ(エルモソ)はそのままの悪魔達(フェルテート)に見つめられ、白雪姫は●●●(カジモド)の体を恥じて、身の縮む思いでした。悪魔達は頭を振って言いました。

「やれやれ。それにしたって神様(デイオス)め。ずいぶんお前に出し惜しみしたようじゃないか。お前の親が、洗礼(バプテスマ)を施さなかったのも、香油(ナルド)を塗らなかったのも、我らには良いことだ」


 「どれ、ひとつ我らが神に代って、お前に祝福(ベネデクト)を与えようではないか」



 傲慢(アルガン)が白雪姫の頬にキスをすると、なるで老婆(アヴィア)のようだった、雪のように白い髪が、真夜中の様に黒く濡れた見事な髪になりました。

 それから色欲(リビドー)強欲(グリード)怠惰(ファネロ)飽食(ギオット)憤怒(フローリ)、そして嫉妬(ジェロス)が頭のてっぺんから爪先まで、次々にキスをするたび、白雪姫は●●●の背中が伸び、ほっそりと娘らしい体つきになり、姫の体の間違いは残らず正されました。

 雪のように白い肌ブラン・スース・ネージュはそのままに、紅玉の(ルネル)と林檎の(ジュー)血のように赤い唇(ルータ・スース・サン)と、白雪姫は望むがままの美しさ(エルモソ)を手に入れ、まったくもって非の打ち所のないお姫様になりました。


 こうしてブラネージュは世界でたった一人、悪魔達(フェルテート)に祝福されたお姫様になり、悪魔達に愛されて、罪の家(カーサ・クレム)で楽しく幸せな毎日を送りました。



 本当は、ここでめでたしめでたしラコンテ・エンデ・ヴィ・フェリーシとお話を幕にしたいのですが……

 物語(ラコンテ)には続きがあって、私はそれを語らなければなりません――…




次のお話は【現実編(レアレテ)】の第3話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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