表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/162

61.【上巻】白雪姫ト三冊ノ本

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・上巻(1/6)】

 るあ――……?


 よう、奇遇だな。何か調べものかい? こんなとこで何してんだって? 逆に、図書館(こんなとこ)で本読む以外、何をすることがあるんだってーの。

 Oops(うーぷす)。「本読むのか?」だとお。失礼な奴だな、めっちゃ読むわ。そもそも図書館(ビブリオン)“物語”(ラコンテ)が――“世界観”(イマジカ)が集まる場所だ。異世界監視人(クストーデ)のアタシには商売柄、関わりの深え場所なんだよ。


 Raa(るああ)。今日も実のところ、仕事で来てるのさ。

 Narf(なーふ)。ちょっと、この本を見てみなよ。


 実はこの本な――……



 器物に封印した“封鎖区”(セラド)なんだ。



 うーぷす、逃げんな逃げんな。

 おっかなびっくりしなさんな。


 大丈夫だってそう危険な”封鎖区“じゃない。たかが知れているから、こんなとこに置いてるんだから。”破局の因子“のある(マジヤバな)セラドなら、もっと慎重に扱ってるさ。本当にヤバい”封鎖区“は、処分するのもひと苦労だからね……


 まあ、それはそれとして。


 この“封鎖区”は単純に“世界観”(イマジカ)が変わっているだけだ。いやもう、この“世界”(カルーシア)(ハナ)っから馴染(なじ)まねえ、異物としか言いようのない“世界観”なんだけど……ああ、そうだ――…… 



 何なら、読んでみる(・・・・・)かい?



 「いいのか」って? 別に構わんぞ、減るもんでもねーし。


 ただし……なーふ。お前も知ってると思うけど、“封鎖区”ってのは“核”があって構成されているもんだ。で、“核”は例外を除いて、誰か人間の“世界観”だ。

 理解(わか)るよな? つまり、その本を読むのは、(クオレ)とか記憶(リコルド)とか、そういう一人の人間の“内面”を覗き込むことを意味するんだ。


 さあ、どうする……くくく、「読む」ってか。だよなあ?


 いひひ。まあ大きな声じゃ言えねーが、こんな面白えこともねーよなあ? じゃあ、残りの巻も出して来る……るあ? ああ、この本一冊じゃない。続き物なんだよ。つっても、三冊しかねえから、ちょいと待ってな――……


 ……――あったあった。


 ほらよ。これが“上巻”。

 そんで、これが“下巻(・・)”と“下巻(・・)”な。



 ……るああ。バカを見る目で、アタシを見るな。


 言い間違いじゃねーよ、その本っつうか“世界観”(イマジカ)は、結末が二つある(・・・・・・・)物語(ラコンテ)なんだよ。“封鎖区”の主が優柔不断だったんだろーな。

 なーふ。これ(・・)が“封鎖区(セラド)”になったのは、“世界観”(イマジカ)が妙ちくりんだってのもあるんだけど、一番はこの、物語のおかしな構造が理由だよ。


 うーん、そうだな……


 お前、折角読むんだ。どっちの結末(エンデ)が良かったか、お前、選んでやっちゃあどうだい? と言っても、既に終わった“世界”(エンデ・オルト)だけどな?


 るあ? どんな“世界(オルト)”かって?


 そうだなあ……おとぎ話(メルヘン)と見せかけた、陰惨で悪趣味(グロテスク)暗―い話(メンヘル)ってとこかな? まあ、そんなイヤそうな顔すんなって。


 この異世界監視人(オルト・クストーデ)ルシウ・コトレットが読み聞かせてやっから。



 いいかい? むかーしむかし(アルタ・パサド・)、あるところに(アルタ・ルオーゴ)――……




 ***********************************


 むかしむかし…(アルタ・パサド・)…あるところに(アルタ・ルオーゴ)――……

 遠い遠い国に、カルーシアという町がありました。


 ある冬の日(イヴェール)。空から白い羽のように、雪がひらひらと(ネージュが)舞い降りてくる日のこと。若く美しいお后(レジナ)が、黒檀(こくたん)の窓辺に腰を掛け、刺繍(ししゅう)(こしら)えておりました。

 レジナはひと針()っては落ちてくる雪を見上げ、見上げてはひと()いしておりましたが、ふとした拍子に、うっかり針で指を突いてしまいました。


 すると(サン)が、降り積もった雪に(したた)りました。


 お(きさき)真っ白な雪(ブラン・ネージュ)の上の真っ赤な血(ルータ・サン)の染みが、はっとするほど美しく思えました。そこで、

「ああ、この雪のように白く(ブラン)、血のように赤い(ルータの)子どもに恵まれれば、どのように素晴らしいでしょう」

そのような子どもが授かるように、神様(デイオス)にお祈りしました。


 王様(ロワ)が城仕えのお医者(ドットーレ)から、お后がお子を授かったと告げられたのは、それからまもなくのことでした。



 この雪のように白くブラン・スース・ネージュ血のように赤く(ルータ・スース・サン)――……




 ***********************************


 汗と脂と薬湯で、()せ返るような部屋で――……


 お后の寝所を慌ただしく出入りする、産婆とお医者、傍仕えの女達(カメリエラ)。いち様に顔が険しいのは、お后の尋常(じんじょう)ならぬ難産のせいです。苦しげな(うめ)きと、抑えきれなくなる悲鳴が、夜通しお城の廊下に響いておりました。


 さて、お后の口から上がったひと際大きな叫びが、断末魔の()と気づいたお医者(ドットーレ)は、傍らの助手を肘で突きました。

 突かれた助手は、隣の部屋で気を()んでいた王様の前に飛んでいくと、急いで申し上げました。それを聞いた王様は、目を見開いて立ち上がり、真っ青になり、真っ赤になり、最後に死人のような土色になって、ひと言、

「良きように」

(うめ)きました。


 また助手が、大急ぎでお医者のところへ戻っていくと、王様は椅子に崩れ落ち、肘掛けに預けた腕に顔を埋め、声を殺して泣きました。



 王様の許しを得て、お医者は嘆く産婆を押し退けて、お后のお腹をナイフで裂きました。死んだお后(モルトウエ)の中から、生きている子ども(ベーボ)を取り上げるために。


 そうしてお后から取り出された子ども(ペーデル)、お后の願い通り――

 雪のように白(ブラン・スース・ネ)く、血のように(ージュ・ルータ・ス)赤い子ども(ース・サン・ベーボ)でした……



 子ども――生まれたお姫様(プリンツェスィン)は、丸々と太って、よその赤ん坊の二人分も大きな体をしておりました。が柔らかな産婆が産婆(うぶぎ)に包んで抱いてきたお姫様を見て、王様の土色の顔は、冬の海よりまだ黒い凍りついた顔になりました。


 それはお姫様が、雪のように白(ブラン・スース・ネ)く、血のように(ージュ・ルータ・ス)赤い子ども(ース・サン・ベーボ)だったからです。




 ***********************************


 その肌と髪の毛、それは雪の白さ(ネージュ・ブラン)でした。王様の腕の中で、お姫様は右と左の大きさの違う目で見上げておりましたが、その目と、●●●●の唇は血の赤(サン・ルータ)の色でした。王様は、赤ん坊の口の中に、もう歯が生え揃っているのを見ました。腕は曲がっており、足には毛が生えており、背中はひどい●●●でした。

 王様が見たところ、お姫様の体には、ひとつとしてまともなところはないように思えました。


 そして、王様は間違っておりませんでした。


 王様は、本当はお姫様に名を与えたくはありませんでした。このようなお姫様に名前をつけて、呼ぶことなど、できはしないと思いました。けれども、そうも参りません。やっぱりお姫様には(プリンツェスィン・ヴ)、お姫様に相応しい(ィ・プリンツェスィン)名前がいるのでした。

 ああ、しかしながら、このような子ども(ベーボ)には、どのような名前が相応しいというのでしょう。


 お姫様を(たた)える名にしようにも、お姫様は(たた)えるべきものを、何ひとつ持たずに生まれてきました。名前に願いを託そうにも、どのような神様(デイオス)がこのお姫様の祈りを聞くのでしょう。古い王族(ロアーレ)聖人(サンクト)から名を頂くにも、このお姫様には釣り合わないのです。


 そこで、このかわいそうな●●●(カジモド)のお姫様は、ただひとつ、美しい(エルモソ)と言えないこともないだろう透き通った白い肌(ブラン・ポー)をして、こう呼ばれることとなりました。



 雪のように(ブラン・スー)白いお姫様(ス・ネージュ)“白(プリンツェ)(スィン・ブ)姫”(ラネージュ)と――……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ