始めに
カルーシアとは……
この世界とは異なるところにある世界、つまり“異世界”の町です。カルーシアは、異世界転移者や転生者が、どんどん集まってくる不思議な町です。
カルーシアでは、異なる世界観が共存できます。私は“魔法のない”世界観“、あなたは”魔法のある“世界観”でも、カルーシアでは私とあなたは一緒にいられます。
判りにくいですか……?
では、これだけ覚えていてください。
カルーシアでは、“世界”は“世界観”から作られるーー……
それだけ知っていれば、大丈夫。
この不思議な世界を管理するのが、“異世界管理局”のお仕事です。
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異世界管理局とは……
異世界を支配している機関……ではありません。転移者や転生者がどんどん集まってくる世界で、“世界”の運行の見張り番をしているお役所のようなものです。
管理局、なんていうと何やら威圧的ですが、異世界庶務課とか、異世界生活安全課のような感じで、“ちょっとしたトラブルのお片付け”をするのが主なお仕事です。
ただし、その存在は転移者も、異世界の住人にも知られてはおりません。
カルーシアには異世界管理局の出張所がひとつあり、ルシウ・コトレットという女の人がたった一人で監視人として“不思議なお仕事”をしております。
彼女のことは、コトレットさん、と呼んであげてください。
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ここからは前置きの、前置き。
お急ぎの人は、ちょっと上に戻って【次へ>>】から先へどうぞ。
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この物語は……
長編ではなく、連作短編となっています。
一人の英雄の冒険譚ではなく、カルーシアを訪れた“たくさんの主人公達”の小さな出来事を集めて、大きな“世界”がゆっくり回る、そんな物語です。
章が変われば登場人物が変わり、視点や文体も変わります。
そして、コトレットさんは作品の主人公ですが、物語の主人公にはなりません。
コトレットさんの役割は、案内役と狂言回しです。物語の外の、メタな視点さえ持った語り手です。と、言っても、時には物語の流れに巻き込まれてしまうこともあるようですが……
ともあれ、物語はコトレットさんを“縦糸”、“たくさんの主人公達”を“横糸”に、少しずつ、やがて1枚の絵を織りなすでしょう。
その時まで、のんびり異世界の日々をお楽しみくだされば幸いです。
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この文章は……
特徴として、とかくルビが多いことをお断りしておきます。
まず、読みが難しそうな漢字(例: 城塞・素人・手練れ,etc.)……
作品世界の固有名詞(例:世界・世界観・監視人,etc.)……
それから、当て字・読み替えなんかも(例:王都・戦場・力自慢,etc.)……
漢字の読み仮名だけでも、相当の分量です。あらかじめ、ご了承ください。