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夢見るドリーマー  作者: イカレポンチ
プロローグ
2/3

第一話

「あい、以上がこの学校の概要だ。なんか質問あるか?」

俺が転入したN高校の設備や一日の流れを男は頬杖を付きながら俺にそう告げた。この男は今度から俺のクラスの担任教師である。

机の上は書類の山が積み上がり、端っこの方にマグカップが置かれていたがコーヒーを淹れた跡あるだけで中身は空だった。ものの置き場が無い状態でその教師は書類の上に肘を置きながら、いかにもだるそうに十分ほど話を続けた。

だらしない様に見えて髪は整えられており、スーツは皺一つないほどノリがかかっていて、なおかつ着こなしもうまい。はっきり言って出来る男風なハンサムだ。

「先生の名前はなんていうんすか?」

今まで説明を受けていながら名前も知らないというのも質問しておいて変な話だと思いつつ質問した。

「男に教える名前はねぇ」

教師は吐き捨てるように答えた。

春休みだからかほとんどの教師は部活動の顧問として出払っているのであろう職員室は、他の教師のキーボードを打鍵する音と息遣いがする以外には俺とこの教師の会話するのみでひどく静かだった。そのため余計に俺の耳に思いもよらない言葉が突き刺さった。

唐突な出来事に俺が面食らっていると、

「ん?なんだ?もう質問はないだろ。明後日からから学校頑張れよ」

と教師は笑みをたたえながら続けた。

なんださっきのは聞き間違えただけか。こんなに爽やかな笑顔で俺を励ますような事を言う人が、人としてあるまじき発言をするはずがない。

意を決してもう一度問う。

「先生の名前なんて言うんすか?」

「男に教える名前はねーって言ってんだろーが!」

人間失格であった。

「草彅くん。耳ついてんの?同じこと何回も言わせないでくれる?だいたい質問あるかって聞かれたら無いですって答えるの普通だよね。」

「先生草彅じゃなくて草壁っす。あと人に名前訪ねられたら答えるのが普通だと思うっす。」

俺は怒りを抑えながら言う。

「オメーの名前なんて興味ねーよ!だいたいこっちは昨日キャバクラにボラれて今月の生活ピンチだっつーのに苛つかせんじゃねーよ!分かったら俺の質問にはイエスのみで答えろ!質問はないね剛くん。」

こいつ、終わってやがる。

「どこのYouTuberだよ。俺の名前は秋人っす。」

「なに教師にため語きいてんの?あと〜っすての辞めろ。高校時代のトラウマで体育会系のノリ嫌いなんだよ。」

もう…情緒がもう。

「いいか?俺のクラスの生徒には鉄の掟がある。俺に迷惑をかけないこと。俺に迷惑をかけた瞬間お前の内申は塵と化す。ただし、女子はその限りではない。あと…」

俺が落胆し言葉を失っている最中もこのイカれた教師は呪詛を俺に送り続ける。

「だいたいやっと草餅くんとの話が終わると思って機嫌良くなってとこなのによー。」

「草壁っす。」

「人の話聞いてた?それ辞めろっていっただ…。

言葉の途中で職員室の扉が開く。お疲れ様です、と軽く会釈をしながらすんごい美人が入って来た。

亜麻色の髪のすんごい美人。女優でいうと新垣○以みたいな美人。

その美人はこちらの方に向かって歩いてくる。

「堂島先生お疲れ様です。」

その女性が俺と話をしていた教師に向かって声をかける。

まるで花のような素敵な笑顔だった。

「まるで花のような素敵な笑顔ですね、篠宮先生。お疲れ様です。」

世の男の発想力って乏しすぎだろ。おんなじ事考えてたのかよ。

堂島と声をかけられていたのは先程から俺に悪態をついていた教師であった。

「堂島先生ってば冗談はよして下さいよ。」

篠宮と呼ばれた美人が答える。

「いえいえ本気ですよ?ハッハッハ」

いやいやホントに冗談はよして下さいよ。

先程までの態度とはうってかわり、朗らかな雰囲気を醸し出すこの男はさっきの男と同じ人物なのか?ゲロみたいな声も高橋○生みたいに爽やかになってるし。

「ふふ。それでそちらの生徒さんは?見ない顔ですけど。」

「ああ、この子は明後日の始業式から転校してくる草彅君ですよ。僕が担任を持つことになりまして、丁度この高校の説明をしてたところなんですよ。」

堂島は篠宮と呼ばれる教師の問に答える。

「あら、こんにちは。私は篠宮朱里よ。よろしくね草彅君。」

篠宮は俺に向かって笑顔を向ける

「よろしくお願いします、篠宮先生。それと俺の名前はくさか」俺は篠宮に挨拶ついでに名前の訂正を仕掛けると

「よーし草彅くん。この学校を生徒会長に案内させよう。ついて来なさい。」と、堂島に遮られてしまう。

「草彅君、転校したばかりで不安ばかりだと思うけど、堂島先生は面倒見がいいから安心してね。」

篠宮は俺になんの曇りのない笑顔でそういう。さっき迷惑かけるなって脅されたばっかなんですが。

「いやいや、そんなことないですよ。じゃ、黒壁くん行こうか。」

「草壁っす。」

腕を引っ張られ、無理矢理職員室から連れ出される。廊下に出た所で腕を引っ張られ、顔を近づけられ耳打ちされる。

「お前、篠宮先生に言ったら殺すからな?」

随分ストレートな発言だな。さっきまでの好青年どこいったんだよ。

「んで、結局おまえの名前なんだっけ?」

堂島は興味なさそうに俺に問いかける。

「草壁秋人です。これからよろしくお願いします。堂島先生。」

俺はこれからの学園生活に落胆しつつ、そう答えた。


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