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最初の戦闘

すみません、若干遅くなりました。

天気はカラッと晴れた日の午後。つまり、昨日の事件の後、僕とラビュースは薄暗い森の中枢に来ていた。


「ラビュース、お前逃げたよな。あの後、主人様ほったらかして姿くらませたよな。おかげで一人で大声出したイタイ奴認定だよ。」

「えっと、何の話ですか?」


ラビュースはまるで思い当たる節がないかのように真顔で首を傾げた。いやいや、こいつ最悪だ。昨日の夜、一生あなたに仕えますとか言った1分後に裏切ったよ。


「ゴシュジンサマ、カンジガイシテル」

「お~~~~い片言やめろ!お前、全然敬ってないことが分かったよ。」

「まぁ、確かに。」


昨日の夜結んだ契約は僕の魔王になるまでの道のりをラビュースがサポートする代わりに、変わらずラビュースを幹部に据え続けること。まぁ、今の段階で幹部とか言われてもピンとこないが・・・

そもそも、なんでラビュースが魔王やらないんだ?


「それは、俺は命令されて動く方が合っているからだ。」

「いや、まだ何にも言ってないけど・・・」

「ゴシュジンサマノ、ココロヲヨンダ。」

「ちょっ、おかしいだろ。なんだその能力!」


今更ながら、ラビュースと結んだ契約が失敗だったように感じる。まぁ、自分に選べる選択肢はないに等しいが・・・


「それで、今からなにすればいい?」

「簡単に言うと、魔物を殺してみよう!って言う話だ。」

なぜか、ニタニタと笑うラビュースに気味の悪さを感じながら、詳しい話を聞いていく。って言うかラビュースの口調が毎回違う気が・・・


ラビュースの話の要約はこの森にいる最弱の魔物を殺そう、そして今日が終わるまでに一人でなんとか倒せるようになろうということだ。確かに、いきなり大物とか言われても無理だろうし、そもそも魔物をまともに殺したことがないのだ。とても心配だ。


「じゃあ、このナイフあげるから、頑張って。」

「え、戦い方とかないの?」

「そういうのは、自分でスタイルを確立した方がいい。」


確かに、そうかもしれない。すると、タイミングよく目の前に緑色の魔物が現れた。ゴブリンだ。

噂では聞いていたが確かに弱そうだ。なんていうか、すでに目が取れかかっている。ゴブリンは、こちらに気づくと低い雄叫びを上げた。雄叫びを聞いた別のゴブリンがやってきてまた、雄叫びを放つ。一分もしないうちに七匹のゴブリンが集まってきた。・・・まって、なんかおかしい。勝てる気がしない。


ギュガガガガガガ~~~~~~


一匹が大きく叫ぶと一斉に六匹のゴブリンが走ってくる。彼らが持っているものは石や木の棒。その原始的な武器がかえって僕を恐怖させる。周りを見ると、いつの間にかラビュースがいなくなってる!

あいつ、やりやがったな・・・。


とりあえず、逃げる。木を盾にしながらジグザグと走る。目的はゴブリンの分断と走力の差を見るため。

あまり、知能が高くないという噂どうり、ゴブリンはばらけて走ってくる。が、森にいる時間が長いせいか思ったよりも早く距離を詰められる。

・・・どうすればいい? 考えろ・・・

 

僕は追いかけてくるゴブリンに注目しながら必死に考える。色が緑・・・っていうのは関係ないし、目が取れそうって言うのも関係ないな。あれ、何にも浮かばない・・・だいたいなんで六匹で来るんだよ!七匹いるなら、七匹で来いよ!普通、全員で来るだろう?


「・・・いや、そうでもないのか?」

そう、勇者だ。あのゴブリンは他のゴブリンたちにとっては勇者にような存在だ。と考えると、勇者が殺されたら果たして戦意を保てるだろうか。少なくとも、自分は幼なじみの彼女が死んだと知ったら自殺するし、戦意なんて保てない。じゃあ、狙うのは一匹じゃないのか?

幸い最初よりもゴブリンばらけているので、このまま一直線にボスゴブリンに向かえば二匹しか途中で会わない。でも、その二匹と戦っていたら他のゴブリンたちがすぐに追いついてくるだろう。

だから、振り切るしかない!


「ギュガ?」


突然、自分たちに向かって走り出した人間に二匹のゴブリンは驚いた。そして、そこで初めて仲間がばらばらになっていることに気づいた。さすがは人間自分たちには思いもよらないことで追い詰めてくる。だが、それでも、二対一だ。負けるはずはない。それに、離れたといっても仲間はすぐに来るだろう。そう考え心に余裕ができたゴブリンは暗く嗤った。さて、どう遊ぼうか?女じゃないから子作りはできない。腕を切ったらどういう表情をするだろうか?生きたまま食らったらどうだろうか?

そう考えるが、人間は自分と距離が近づいたのに速度を緩めない。まさか、逃げるつもりか?  


「ギュガガガ!!!」


怒り出したゴブリンに僕は突撃する。一匹の持っている木の棒をなんとか避け、二匹目のもっていた石に左腕をぶたれる。痛い・・・痛いが死ぬほどのことではない。せめて、打撲程度だろう。何発も食らったらやばいが、初めから何発も食らうつもりはない。石を持ったゴブリンにそのまま体当たりをして、突破口を開く。

そして、一直線に駆け抜ける。


「着いた、ボスめ。」


かくして、火ぶたは切って落とされた。しかし、予想以上にボスが強い。武器の利はこっちにあるはずなのにまったくナイフが当たらない。それどころかボスゴブリンの持っている石が素早く振られ近づけない。

・・・確かに、人間に置き換えたら勇者だもんな、たぶん・・・

そこで、後ろから声が聞こえ始める。やばい、もう来た!

このままじゃ、死ぬ・・・死ぬのか?まだ、何も始まってないのに、彼女と会えなくなるのか?僕が、死んで彼女は他の誰かと結婚するのか?・・・冗談じゃない!いやすぎるだろ。


「なんで、僕はこんな石におびえてるんだ?」


頭に当たりさえしなければ即死はないだろ。打撲程度だって、さっき分かっただろ。だから、一気に決める。ボスゴブリンが石を振ったタイミングを見計らって、突撃する。すぐに、また石が振られるが左手で防ぐ。


ポキッ


・・・いやいやいや、僕はなんにも聞いていない。

持っていたナイフで思いっきりボスゴブリンの腹を刺す。また、石が振られるが変な音が聞こえた左手でもう一度防ぐ。そして、何回も腹を刺す。苦痛に声を荒らげていたボスゴブリンもやがて静かになった。勝ったのだ。


後ろを振り向くとすぐ近くでゴブリンが固まっていた。そりゃ、そうだろう自分たちの勇者が倒されたのだから・・・だよね、もう戦う意思とかないよね。


ゴブリンたちは目の前の光景が信じられなかった。自分たちを撒き、そのすきにボスを殺す。やはり、人間は恐ろしい。・・・だが、やっとボスが死んでくれた!たかが、力が強いだけで今までさんざん良い思いをしてきたのだ。そして、目の前の人間を見る。左腕が変な方向に曲がっている・・・よし、勝てる!

この人間を倒せば俺がボスだ。


一度止まったゴブリンは俄然やる気を見せ近づいてくる。

・・・あれ、なんか予定と違うんですけど。ここは、逃げるところじゃないんですか?

もしかして、ゴブリンにとって故ボスゴブリンは勇者じゃなかった?ってかやばい。左腕が痛い。終わった。僕、死んだわ。目の前に近づいてくるゴブリンを見て僕は死を確信する。


「だめだなぁ、ご主人様は・・・はい、終わり。」


一瞬だった。向かって来た六匹のゴブリンは言葉どおり一瞬で消失した。ラビュースは振り返ると満足そうに僕を見る。そして、あの魔王の手下っぽい不気味な笑みを浮かべて左腕を指さして笑った。


「ぷぷぷ・・・左腕どうしたんですか、まさか、ゴブリン程度にやられたんですか。」

「お前!許さん!だいたい、なんで、いきなりいなくなるんだよ。昨日もそうだけどお前、見捨てるの早すぎるだろ。」

「まぁ、確かに。」


やっぱり、こいつと契約結んだの間違えだったわ。








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