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「すごい絵でしょ」

 仕事から帰ってきた映美は母と夕食の食卓を囲みながら、壁に立てかけた自分の拾ってきた絵に見入った。

「うん、昼間父さんと感心してたのよ」

「どこの誰が描いたんだろう」

「ほんとだねぇ」

「あそこに捨てるってことは近所の人なんじゃない」

「分からないわよ。ばれないように、遠くに捨てたかもしれないし」

「でもこんな大きなのそう遠くへは運べないよ」

「車だってあるんだよ」

「まあ、そうだけど」

「でも持って来ちゃっていいのかい」

「大丈夫だよ。捨ててあったんだもん。それに、あんなとこに捨てたって収集車は持って行ってくれないもの。逆に助かってるはずだわ」

「それにしてもすごい絵だね。やっぱりプロかね」

「美大生とか」

「名の知れた作家の作品だったりして」

「一億で買いたいんですが。とかなんとか誰か言ってきたりして」

「ドラマじゃあるまいし」

「でもそんな予感のする絵だよね」

 二人はよからぬ皮算用で盛り上がった。

「あっ、そうそう変な男がいるんだよ」

「えっ」

 夕食も食べ終わり、二人で人心地お茶を飲んでいる時だった。母は唐突に話題を変えた。これはいつものことで映美は特段驚きはしなかった。

「ほらっ、あの公園横の小汚いアパートの」

「ああ」

 映美は思い出した。あの絵を拾ったゴミステーションのある公園の向いに建つ築何年になるだろうか、相当古びた文化アパートのような簡素な集合住宅が建っている。

「そこに住んでるっていう変な男がいつも公園にいるんだって」

「へぇ~、私は見たことないな」

「なんか見るからに怪しい男みたいだよ」

「へぇ~、そんな人いたんだ」

「ちょっと知恵遅れじゃないかね」

 映美の母は畳みかける。

「お母さんは見たことあるの」

「あたしはないよ」

 映美の母は顔をしかめて否定した。

「近所の噂になってるんだよ」

「そうなの」

「気をおつけよ。こんな世の中だからね」

「大丈夫だよ」

「それにしても気持ち悪い」

「人を見た眼で判断するもんじゃないわ」

「そうだけど、なんか気味悪いわ。近所の噂にもなっているんだよ。本当に気をお付けよ。変な人は本当にいるんだから」

「大丈夫よ。それにしても本当にどんな人が描いたんだろう。一度会ってみたいわ」

 映美は、もう一度絵の方に関心を向け、その中の青い鳥を見つめた。



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