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ドレッドノート Ⅲ

ドレッドノート アルアインの攻撃パターンにも慣れてきた真は安定して戦いを進めることができるようになってきていた。だが、それでも真は一つの懸念があった。


(こいつ……レイドボスか?)


レイドボスとは、MMORPGにおいて、大人数で挑むネームドモンスターのことである。一人用のRPGでは巨大なボスに対しても1PTで挑むのが普通であるが、MMORPGという大人数で参加するゲームの特性を活かして、何十人若しくは百人を超える規模で巨大ボスに襲い掛かるものがある。それがレイドボスと言われるモンスターで、大規模の人数で一斉に戦うことを想定しているため、その生命力は他のモンスターに比べて桁違いに多い。


戦い続けているが、未だに倒れることのないドレッドノート アルアインに対して、真は普通のモンスターではなく、レイドボスとして追加されたモンスターなのではないかと思うようになっていた。


これだけの巨体を持つドラゴンである。しかも攻撃の隙は大きいものの攻撃範囲が広いのは大人数を相手にすることを前提にしているからだろう。レイドボスであってもおかしくはない。


(だったら、バージョンアップの告知にレイドボスだって書いておけよ……)


バージョンアップの告知の適当さは今に始まったものではない。嘘は書いていないが重要なことが抜けている。懇切丁寧に教えてもらえるなど最早期待などしていないし、警戒しないといけないことくらい分かっているが、それでも必要なことを記載してない告知には苛立ちを覚える。


MMORPGでレイドボスにソロで挑むようなことはまずやらない。よっぽどのレベル差があって、装備にも自信があれば、低レベル帯のレイドボスを遊びで倒すくらいのものだ。それも、低レベル帯にいる人に対して迷惑がかかるので、誰も倒さないような放置されている奴を狙うくらい。


予想以上に時間がかかっていることが気になりながらも、真は大剣を振り続ける。


「グアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!」


ドレッドノート アルアインはまたも大きな咆哮を上げると翼を上下に動かして空中へと飛び上がって行った。


最初に見た時には逃げるのかと思ったこの行動だが、この行動はもう分かっている。真は周りに注意を払いながらも円を描くようにして全力で走り始めた。


(どこから来る?)


ドレッドノート アルアインが空中に飛び上がると、死角からの突撃を強行してくる。高速で強襲してくるため、どこから来るのか確認してから動いたのでは遅い。そして、どこから来ても対応できるように円を描くようにして走る。


「ガアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!」


けたたましい叫び声とともにドレッドノート アルアインがその巨体ごと真っ赤に染まる夕焼け空を突き破るようにして襲い掛かってきた。


「うおおおおおーーーーッ!!!」


真の横から猛烈な勢いで飛来してくるドレッドノート アルアインをギリギリのところで回避する。全力疾走から、ダイブするように飛んだため、受け身を取ることもできず、空中庭園の芝生の上に顔から突っ込む形となった。


ドレッドノート アルアインの方も空中庭園を抉るようにして激突しているが、そのことを意に介してすらいないとばかりに、姿勢を整えると真の方へと向き直った。


(大丈夫だ、この攻撃も対応できる)


ギリギリでの回避であったが、避けることはできている。予備動作もあるため、予測は簡単だ。しかし、全力で走らないといけないので、長丁場になるとゲーム化の影響があるとはいえ体力面で心配にはなってくる。


<ソニックブレード>


真は距離が離れたドレッドノート アルアインに向けて音速の刃を放った。空気を切り裂く甲高い音が空に響き、真空のカマイタチが見えない刃となってドラゴンの頭に命中する。


頭にソニックブレードの直撃を受けたドレッドノート アルアインはそれでも猛然と真に向かって進んでくる。


<クロス ソニックブレード>


切り返す刃で十字を斬るようにして更に音速の刃をドレッドノート アルアインに向けて放つ。


遠距離攻撃スキルのソニックブレードから派生する二段撃目のクロス ソニックブレード。近接攻撃が主体のベルセルクにとって数少ない遠距離攻撃スキルである。


それでも、ドレッドノート アルアインの歩みを止めることは叶わず、真の目の前まで来ると大きく頭を振りかぶった。


ドレッドノート アルアインはその頭ごと大地に突き刺すようにして真を狙って振り下ろす。直撃すればそのまま狂暴な牙の餌食になるのだろうが、何度も見ている攻撃で、頭を大きく上げる動作があるため避けるのも容易い。


真は難なく攻撃を回避すると、間髪入れずに連続攻撃スキルを叩き込み、〆のライオットバーストまでしっかりと刻む。


「グオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ!!!」


ドレッドノート アルアインは再び大きく雄叫びを上げ、翼を大きく広げた。そして、そのまま翼をはためかせて巨体を空中へと浮かび上がらせた。


この後来るのは空中からの強襲。この攻撃はもう三回目だ。先ほどもギリギリではあるが、回避することに成功している。


もう対応の仕方が分かっている真はドレッドノート アルアインの周りを回るようにして走り始めた。全力で走り出すのはドレッドノート アルアインが上空まで飛んでからでいいだろう。真はそう考えていた時だった。


ドレッドノート アルアインは空中庭園から浮かび上がってはいるが、そのまま滞空し、上空へと上昇することはしなかった。その代わりに、ドレッドノート アルアインは大きく息を吸い込むようして胸を張り、頭を上げる。


そして、周りを走っている真を見据えると、一気に吸い込んだものを吐き出すように頭ごと前に突き出して口を大きく開けた。


ゴオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーッ!!!


ドレッドノート アルアインの口から吐き出されたものは紅蓮に燃える灼熱の炎。伝説に語られるドラゴンの炎のブレスが真に向けて吐き出さた。


「うわああああーーーッ!?」


怒涛の如く押し寄せる焔火の奔流の直撃を受けた真が叫び声を上げる。咄嗟に両手で顔を覆い、転がるようにして地面にのたうち回る。


「熱っつうーーー!?」


地獄の釜戸と化した中から真が這う這うの体で脱出する。


「くっそ……やってくれたな……!」


真はすぐに起き上がり、炎が納まった空中庭園に着地するドレッドノート アルアインを睨み付けた。真は平然と立っているが、ドラゴンが放つ炎のブレスをまともに受けたとしたら、普通であれば即死していただろう。


だが、真はレベル100のベルセルク。他の人が即死する攻撃でも『熱い』で済んでいる。


(奥の手ってやつか……でも、こういう攻撃をしてくるってことはそろそろ終わりも近いんだろうな)


ドラゴンが吐く炎のブレス。強力無比ではあるが、それ以上の攻撃はないだろうというのが真の予想だった。それなら、もうパターンは出尽くしたはず。一番強力な攻撃を出してきたとなれば、ドレッドノート アルアインも瀕死まできているに違いないと考えた。


<バーサーカーソウル>


真は自身に眠る狂戦士の魂を開放させる。バーサーカーソウルは自己強化のスキルで、攻撃力が増加する代わりに防御力が半減するベルセルクの特徴を体現したかのようなスキルだ。


ここから一気に方を付けるためにドレッドノート アルアインに向かって一直線に走り出した。


<スラッシュ>


ドレッドノート アルアインの懐まで潜り込むと、真は連続攻撃スキルの一段目であるスラッシュを叩き込む。


続けざまに連続攻撃を叩き込み、ルインブレードまで入れるとドレッドノート アルアインは大きく腕を振り上げて、地面に叩きつけるようにして真を狙った。


これを真は危なげなく回避すると、避けた動作から連動するようにして踏み込みからの斬撃を放った。


<スラッシュ>


再度連続攻撃スキルの起点であるスラッシュを放つ。


<フラッシュブレード>


閃光のような大剣の横薙ぎが巨大なドレッドノートアルアインの身体を切り裂く。


<ヘルブレイバー>


真は途切れることなく、連続攻撃を叩き込む。下段から大きく身体ごと飛びあがって大剣を切り上げる。


<カタストロフィ>


ヘルブレイバーの発動によって飛び上がった体勢から一気に叩き割るようにして加速させた神速の斬撃でドレッドノート アルアインを縦に斬りつけると同時に、崩壊の白い光が爆発する。






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