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天使狩り Ⅸ

「うそ……。なんで、天使が……!?」


視界を取り戻した美月も、出現した天使達に気が付いた。大天使一体だけを相手にするのだと思い込んでいたところに、不意打ちを喰らったような感覚だ。


「出て来たんだから、倒すしかないでしょ!」


翼は歯噛みしながらも、声を上げた。


「構えて! 来ますよ!」


彩音も声を上げた。新たに出現した天使達は、何も言わずに、愚直に剣を振り上げて向かってきた。


「華凛、ショックフェザー、早く!」


こちらの準備などお構いなしに向かって来る天使達。翼はすぐさま華凛に指示を出した。


「ま、まだよ! さっきの天使に使ったばかりよ! そんなに早く使えるようになるわけないでしょッ!」


華凛が狼狽えながらも返事をした。効果範囲内の敵を全て麻痺させる極悪スキル、ショックフェザー。サマナーの強さの一翼を担うスキルであるが、強力であるが故に、一度使うと再使用までにかかる時間は長い。


「一体ずつでいいから、動きを止めて!」


慌てる翼と華凛に、美月が指示を出した。虎の子のショックフェザーが使えないのなら、一体ずつでも動きを止めるしかない。


「無理です、間に合いません!」


だが、相手の数の方が倍以上多い。一体ずつ動きを止めるスキルを使用したところで、接敵は免れない。天使達は、美月達がいる後衛に向かって、一斉に押し寄せてきている。


<ブレードストーム>


そこに、真の剣が飛んできた。荒狂う嵐のように、天使の群れの中を斬撃が走り抜ける。


ベルセルクの範囲攻撃スキル、ブレードストームは効果範囲が広いが、威力は低い。そういう特徴を持っているスキルだ。強力なスキルほど再使用にかかる時間が長い。この法則からすると、効果範囲が広いだけで威力が低いスキルというのは、再使用にかかる時間が比較的短いということである。


「俺が受け持つ! 美月の指示通り、一体ずつ動きを止めてくれ!」


真が新たな指示を出した。真が放ったブレードストームにより、天使の増援は全て真に狙いを切り替えている。


つまり、後衛は安全に天使達を狙い撃つことができるようになったということだ。


「倒すのは真に任せるよ!」


<スタンアロー>


翼が放った矢は、電撃を帯びて天使の一体に突き刺さる。スキルのダメージは大したことがないのだが、スキル名の通り、喰らった敵はスタンしてしまう。


「分かってる! 真君、任せるからね!」


<スリープリーフ>


華凛は、風の精霊シルフィードを召喚すると、睡眠効果のあるスキルを発動させた。搦め手が得意なシルフィードの十八番はショックフェザーではなく、このスリープリーフの方。一体しか眠らすことができなず、しかも、攻撃を与えると起きてしまうが、再使用までの時間が短いため、敵の動きを封じるのには使い勝手が良い。


「私も、できるだけ動きを止めますから!」


<ライトニングボルト>


続けて彩音もスキルを発動させた。突き出された彩音の手から放出されるのは、迸る稲妻。このスキルも気絶効果が付与されている。そのため、ライトニングボルトを喰らった一体の天使が動きを止める。


「助かる。こっちは任せておけ!」


<スラッシュ>


真は声を上げながら天使を袈裟斬りにする。これだけで倒れてくれた楽なのだが、新たに出現した天使達の耐久力は、今まで戦ってきた天使と同等の耐久力を持っているようで、倒すまでにはまだ足りない。


<フラッシュブレード>


真が連続で剣を振ると、横薙ぎに天使を一閃した。


さらに続けて、攻撃スキルを発動させようとしたが――


「くそっ……」


真はここで、断念。理由は一つ――


「大天使様も来るのかよ……」


雑魚の天使達に交じって、大天使も攻撃に参戦してきたからだ。ただでさえ、十数体いる天使に囲まれている状態で、大天使まで攻撃してくる。


翼や彩音、華凛が必死で天使の動きを止めてくれているが、追い付いてはいない。


真は大天使を正面に見据えて迎撃する。だが、横からも後ろからも天使達が攻撃を加えて来る。これにも対応しないといけない。


状態異常を引き起こすスキルは、当然のことながら、効果時間というものがある。華凛のスリープリーフでも、効果時間が切れれば自然と目を覚ます。


しかも、翼と彩音は早々にスタン効果のあるスキルが打ち止めになり、しばらく使えなくなっている。


そうなると、華凛のスリープリーフだけでは焼け石に水状態になってしまう。


「切り札は残しておきたかったんだけどな……」


<ソードディストラクション>


大天使の攻撃を回避しながらも、真は跳躍し、体ごと斜めに大剣を振った。瞬間的に解放されるのは破壊の衝動そのもの。激しい衝撃が、真を中心とした空間ごと震撼せた。


ソードディストラクションは高威力の範囲攻撃に加えて、スタンの効果も付与されている。


これで、雑魚の天使達は全てスタン状態。何体かの天使はダメージに耐え切れず、地面に落ちている。


「動きを止めるのはもういい! 雑魚を掃除するぞ!」


真が声を張り上げて指示を出した。スタンの効果というのは、それほど長くはない。今のうちに、できる限りのダメージを与えてしまって、天使が動き出したそばから数を減らしていけるようにしたい。


「分かりました!」


<スクリューウォーター>


真の指示に従い、彩音がスキルを発動させた。スタンで動きを止めている天使の集団に向けて、水流が蛇のようにうねりを上げて襲い掛かる。


「了解!」


<アローレイン>


翼も足止めから攻撃に切り替えてスキルを発動させる。上空に打ち上げられた矢が、驟雨のごとく天使達に降り注いだ。


「とっとと倒れてよ!」


<オーラバースト>


華凛も範囲攻撃スキルを放つ。オーラバーストは、召喚した精霊の攻撃ではなく、サマナー本体のスキル。無属性の範囲攻撃だ。


「おらぁ!」


真も天使の攻撃を躱しながら、斬撃を入れていく。本当は大天使に集中したいところだが、他の天使が邪魔だ。雑魚が出て来たのなら、雑魚から先に処理をするのがセオリー。


そして、一体、また一体と倒していき。残るは、大天使一体のみとなった。


「さあ、手下は片付いたぞ」


真は大天使を睨みつけて、大剣を向ける。


大天使の方は相変わらずの無表情。何も言ってこないどころか、顔色一つ変えてはない。ただ、無言のまま攻撃をしてくるだけ。


大振りに振られた大天使の攻撃を、真がギリギリのところで避ける。


<スラッシュ>


そこに、真がカウンターの斬撃を入れる。もう考える必要もない行動だ。この戦いの最中で、何度も同じことを繰り返してきている。


<シャープストライク>


<ルインブレード>


そして、連続攻撃スキルを叩き込む。真の高い攻撃力で、何度も斬撃を入れてきた。


(どれだけ、強いかは知らないけど、こいつはラーゼ・ヴァールの前座だ。そろそろ、終わるだろ)


大天使は人形のように、一切顔色が変わらないが、確実にダメージは入っている。それも、もう限界に近いところまで来ているのではないか。というのが、真の目算だ。


そう思っていた矢先、大天使が再び空へと飛び上がった。


「また、突進が――」


上空からの突進攻撃が来る。真がそう判断して、声を上げた時だった。


大天使が天空に大剣を掲げると、またもや眩い光が放たれた。


「ぐっ……!?」


この光を見るのは二度目のことだ。あまりにも強い光に、目を開けていられなくなるほど。そして、この光が来た後に来るものは……。


「くっそ! また天使だ! 天使の増援が来た!」


苦虫を噛み潰したような表情で真が叫んだ。さっき倒したばかりの天使達が、もう再出現した。しかも、数は同じくらい。十数体の天使達が、大天使の周りを囲んでいる。


「な、なんで、また天使が来るの!?」


思わず叫んだのは華凛だ。大天使が呼んだ天使の群れを倒してから、全然時間が経ってない。にも関わらず、また天使が現れた。


「華凛、ショックフェザーはッ?」


真が声を張り上げて訊く。


「ま、まだ……。まだ使えない!」


動揺した華凛の声が返って来た。先ほどの天使達との交戦でも、ショックフェザーが再度使用できるまでの時間は経過していない。


強力なスキルであるが故のジレンマだ。


そして、もう一つの問題。


「華凛、ノームだ! 俺の範囲攻撃は打ち止めだ! 俺ができる限り天使の注意を引き付けるが、漏れた奴は、そっちで受け持ってくれ!」


真の範囲攻撃スキルが、どれも使用不可の状態になっているということ。強力な範囲攻撃であるソードディストラクションは、つい先ほど使ったばかり。比較的、再使用までにかかる時間の短いブレードストームであっても、まだ使える状態にない。


「わ、分かった……。やってみる……」


<ノーム>


華凛は土の精霊ノームを召喚。ノームは攻撃力は低いが、防御力が高く、敵対心を上げるスキルを持っているため、疑似的な盾役をすることができる。


何とか迎撃態勢が整ったところに、天使達が脇目も触れずに突っ込んできた。


<スラッシュ>


真が天使の群れの中に飛び込んで、一体の天使に斬りかかった。


<フラッシュブレード>


続けて、真が連続攻撃スキルを発動させるが、狙いは別の天使。バラバラに攻撃を加えることで、少しでも多くの天使の敵対心を真に向ける狙いだ。


<ヘルブレイバー>


さらに、真は別の天使へと斬りかかる。


これで、3体の天使が真に狙いを付けた。


だが、そこで、真に襲い掛かってくる一際大きな影があった。


「ッチ、もう来たか……」


大天使の大剣が真に向けて振り下ろされた。真は自身の持つ大剣で、大天使の攻撃を受け流す。


その間にも、他の天使達は、真の脇をすり抜けて、美月達のいる方へと飛んでいく。


「行かせね――」


真が、通り過ぎようとしてる天使の一体に狙いを付けて、攻撃を繰り出そうとした時だった。


視界の端に、大天使が手を翳している姿が見えた。


ヒュンッ


次の瞬間、大天使の掌からビームが放出された。


ほんの一瞬だけ光が見える。それくらいの時間しかない。ただ、それだけの時間で、真は身を翻し、大天使のビームを避けていた。


「くそッ!」


再び、真の注意が大天使へと向く。そうしている間にも、手下の天使達は次々と真から遠ざかっていく。


「華凛! そっちに行った天使を何とか受けてくれ!」


振り返らずに真が叫んだ。


「えッ!? 待って! 無理! 多すぎる!」


予想外に多くの天使が来ていることに、華凛の慌てふためく声が返って来た。






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