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狐に嫁入り!  作者: 春海
出会い
7/48

優しい人

「ッ!?」




『…もうよい。我の前でその様に気丈に振る舞うことはない…

今までよう頑張ってきたの。

もう1人で抱え込まなくてもよい。

今は心ゆくまで、本能のままに我の胸でお泣き…

大丈夫。我以外、ここには誰もいない…』




「ーーっう…うぅっ…ッ!!」




それでも光希は、声をあげて泣くことはなかった。

ただ声を押し殺す様に、時雨の胸に顔を押し付け…泣いた。


時雨はそんな光希を愛おしそうに抱きながら、背中をぽんぽんと優しく叩く。

『大丈夫』『よく頑張った』そう言いながら…


++++++++++++++++++++++++++++++++++++




「ーーーズズッ」




どれほど涙を流したのだろうか。

時間の感覚もわからない。数分かもしれないし、数十分かもしれない…

どれほどかはわからないが、時雨はただ静かに私の背中を優しく叩いてくれた。

それはとても心地よく…

私は本能のままに泣いていた。


…なんで、こんなに優しくしてくれるのだろうか。


彼は人間ではない。それなのに、ただの人の子である私に…出会ったばかりの私に…彼はとても優しい。



「…なんで…」



思いは気付けば声に出ていて…



『…ん?』



「どうして、優しいの…?」



胸から顔を離し、時雨の瞳をじっと見つめる。

彼も同じ様に私を見つめ、そしてふわり、初めて見るような優しい笑みを浮かべた。



『なぜ…など、理由は1つしかなかろう。


其方は我の妻となる女じゃ。優しくしない理由が見つからぬ。そうじゃろ?』



私の目尻に溜まった涙を彼はその綺麗な指で拭いながら、なんてことないように言ってのけた。


あ、そうかも。


なぜかこの時、私はすんなりとその言葉を受け入れていた。

泣きすぎて、思考回路がぐちゃぐちゃになったとしか思えないけれど。

この優しい人の妻も悪くないかなーなんて、のんきに考えていた。


そして何をトチ狂ったのか私は…



「…いいよ。

貴方のお嫁さんになっても。」



時雨という妖怪を、受け入れてしまった。

そして時雨はなぜか…




『ーーー…ッ!?!?』




顔を真っ赤にして私を見ていた。

さっきからあんなに恥ずかしい言葉をつらつら言ってたのに、なぜこんなことで紅くなる。



「ねぇ。」



『なんじゃ。』



「なんでそんなに真っ赤なの?」



『こ、これは…

いや!違う!真っ赤などではない!

太陽じゃ!夕日に照らされてるだけじゃ!しかしこの部屋は暑いのう!

ほれ、えあこんというやつを使うべきではないか!?』




「いや、そこまで暑くないし。

そもそも日はもう落ちてるから夕日とかないよね?」



『むむっ』



「むむって…

何言ってるのよ…ふふっ」



『ーーー…やっと笑ったの…』



あぁ、私笑えたんだ。

まだ、笑うことができたんだ。

時雨に言われて気づく。

あぁ、今日はなんだか時雨に助けられてばかりな気がする。

ほっと、安心したらなんだか眠くなってきた…



『…眠るのか…?』




「…ん。

ちょっと、眠い…おやすみ…


…時雨」




一気に押し寄せてきた睡魔に抗うことはできず、私は意識を手放した。

手放す少し前『おやすみ…光希殿…』と、名前を呼ばれたのと額に感じた柔らかい感触は夢であったのか…それとも…

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