決着(2)
「…ぅ…」
重い瞼をあげる。
心なしか、身体が重く感じる。
「…っ!しぐれは!?」
勢いよく起き上がり、辺りを見渡す。
眼前に広がるのは見覚えのある景色。
気づいたら私は、自室にいた。
夢だったのだろうか…?
淡い期待がよぎるが、姿見に映る自分の姿を見てあれは夢でなかったのだと、現実だったのだと思い知らされた。
「…やっぱり夢じゃなかった…」
『…目が覚めたか小娘。』
襖が開く。
そこには水差しを手にした烏天狗がいた。
素っ気ない物言いであったが、その表情が少し和らいだような気がした。
「し、しぐれは?」
烏天狗に問いかける。
すると彼は私が気を失っていた間に起きた事を順を追って説明してくれた。
『まず、時雨様は無事だ。
事が済んだ後我等がいたあの空間が消え、気づいたら学園の近くにある社にいた。
…どうやらポチがそこの狛犬だったからか、我等の身体も一緒に引きずられたらしい。
そこからは獣道を開き、屋敷に戻ったという感じだ。
小娘、貴様は丸一日寝ていた。
…体に不調はないか。』
「…え?」
まさか体調を気にかけられるとは思わず、聞き返してしまった。
すると、烏合天喜はチッと舌打ちし
『…っ、だから!体調は!変わりないかと聞いているのだ!』
「あ、うん。大丈夫です。」
烏天狗は眉間にシワを寄せながら言う。
『…貴様が居なければ、時雨様を救うことはできなかっただろう。
…そのことに関しては、貴様に礼を言わないこともない!』
「ふっ、ふふふ…あははっ」
嫌々というか。人間に感謝するなど嫌だろうに。それでも、主人を助ける手助けをした者に礼を言わねば気が済まなかったのだろう。
その葛藤が目に見えてわかる。それが不覚にも面白かった。
『な、なにを笑う!無礼だぞ!』
「だって、考えてる事全部顔に出てるんだもの!面白くってっ!」
『くっ、もういい!笑うな!コラ、小娘!』
その時
スパーンッとこれまた勢いよく襖が開く。
そこには…
『みつきー!!!!!』
「シロ?!」
『あ、バカッ』
現れたシロは勢いよく光希に飛びついていった。
『よかったよかったよかったよー!!!
俺、みつきもう目を覚さなかったらどうしようって!本当によかった!大丈夫か?痛いところないか?!』
「だ、大丈夫、大丈夫だからちょっと力を緩めてくれると…」
おい、烏天狗。頭を抱えるのはいいけど、まず私を助けてくれ。結構な力だからね?シロ、結構な力で私を抱きしめてるからね?骨がちょっと危ないからね?
私の念を感じ取ったのか、烏天狗はシロの首根っこを掴み私から引き剥がした。
『主人が無事で嬉しいのはわかるが、勢いが良すぎるぞ。我等の力加減で抱きついては、人間の骨などすぐに砕け散る。気をつけろ。』
『!?
光希?大丈夫か?!木っ端微塵か?!』
「大丈夫。平気だよ。」
そう微笑み返すとシロはホッと安堵の表情を浮かべた。




