幻術
烏合天喜は一瞬考える素振りを見せるとはっ、と何かに気が付いたようにあたりを見渡した。そして
『おい小娘!時雨様の首元に何かが“巻き付いて”いないか!?』
光希は時雨の首元に移動し近くに手を滑らせる。
「なにかって‥見た感じ巻き付いていなさそうでけれど……いたっ」
その時、何か鋭利なものに触れた。
なに、今の。なんだか棘みたいなものがあったけど…
触れた部分に目を凝らすが何かがそこにある様子はない。
『どうだ!?』
「わからない。でもなんか、棘みたいなものが…」
『やはりそういうことか!!くっ、やられた!』
「なに?どういこと?!」
今の会話で烏合天喜には彼らに何が起こっているのか分かったらしい。私にも説明してほしいのだけれど。
『あの成り損ないはどうやら幻術が使えるらしい。恐らくその棘のようなものはその幻術の媒介をしている。しかしまさか棘とは…厄介なことをしてくれるっ』
「媒介‥‥ならこの棘みたいなものを壊せば‥」
『ああ。恐らく幻術は解かれるであろう。しかし‥』
「烏合天喜。あなたがそうやって口ごもるという事は…簡単にはいかない。何かがあるという事よね?」
『察しがよいな。その通り。その棘は恐らくあの成りそこないが最期の力を振り絞り時雨様に寄生させたもの。小娘、その様子だと触れはするがそのもの自体は見えぬのではないか?』
「う、うん‥見えないけど…」
『よいかよく聞け。この幻術は呪いのようなものだ。呪いは簡単には解けぬ。下手に解いてしまうと呪い返しに合うからな。本来なあらば退魔の力を使い、呪いを根元から断ち切る必要がある‥。
しかし見えぬままに退魔の力を使い、もしその剣先を誤れば時雨様の存在をも消してしまう恐れがある。
しかも今手元にある退魔の力を宿した武具は…時雨様の妖刀しかない。』




