対峙(3)
烏合天喜に比べると出血量は少ないもののポチも傷だらけであった。
しかし彼は1つ、大きく頷くと姿を変えた。
『光希、乗って!』
「…うん!」
背中に乗ると、ポチは力強く地面を蹴った。
2人の身体は宙に浮き、時雨の元へ向かう。
「----…しぐれっ!!!!」
大きな妖狐に向かってその名呼ぶ。
しかし彼はまるで聞こえていないのかピクリとも動かない。
『おい狐!てめえ、光希の言葉無視してんじゃ…!?』
ポチが言い終るよりも先に、光希はその背中から飛び降りていた。
危険なことだとはわかっている。しかしなぜだかそうしなければならない気がした。
「ーーー…っ!」
時雨の背中に何とか着地ししがみ付く。
『光希!?大丈夫か!?』
「うん、大丈夫」
妖狐の背から、また彼の名を呼ぶ。
「時雨!」
しかし彼は微動だにしなかった。
なぜ?
光希の頭に疑問が浮かぶ。
彼はなぜ、動かないのか。
そして、彼の目の前にいる、あの、かつて人であったもの。
それも時雨同様、動く気配がない。
2人とも、まるで魂が抜けてしまっているかのように…
『おい小娘!どうだ!』
烏合天喜に問いかけられるも適切な答えが見つからない。
「わ、わからない…
時雨も、目の前のアレも動かないの…
まるで、魂が抜けてしまっているかのように…」
『魂が抜けているだと…?』




