対峙(2)
無理に攻撃をした代償か、ポチの腕からは血が滴り落ちていた。
(操られておるから痛覚が麻痺しておるのか…!
このまま無理に攻撃し続ければ…こいつの命はない…)
『おい!!
それ以上無理に動いてみろ!
貴様、命を落とすかもしれんぞ!?』
ポチに話しかけるが、その瞳は光を宿すことなく、ただただ烏合天喜を睨みつけていた。
(どうすれば…さすがに、肩を貫かれている状態で攻撃を避けるのも限界が…!?)
烏合天喜は視界の端にチカチカと光る何かを感じた。
ちらりと視線を向けると光希が何やら合図を出しているようだった。
『おい小娘!
手筈通りに行うのだぞ!』
烏合天喜は痛む肩に鞭を打ち、ポチに向かい攻撃を仕掛ける。
ポチはまるで自分が傷ついていくのも厭わずに向かっていく。
(…くっ、なかなか手強い…だが…!)
『ーーーー小娘、行くぞ!!!』
「はい!」
烏合天喜が囮役となり、ポチを引きつけている間に光希はある作業をしていた。
それは、烏合天喜に指示された術式を床に書くという作業であった。
描かれた術式は主従の契約陣。
ポチと光希の間にできていた縁は揺るがないものであった。
しかし縁だけではどこか頼りなく
今回のような事態に陥った時主導権が敵側に移行しやすい。
その為、より強固な関係を結ぶ必要があった。
烏合天喜は攻撃を繰り出しながら契約陣の元へと誘導し、ポチがその方陣へ足を踏み入れた。
すると方陣は妖しく光り、そこに描かれた文字が宙を舞い次々とポチへと張り付いていく。
ポチは両腕を後ろに縛られるような形で方陣の中で膝をついた。
『小娘!
この錫杖に血を垂らし、ポチの胸部目掛けて投げろ!!』
光希は烏合天喜に言われた通りに錫杖に血を垂らし、ポチへと投げた。
それは見事に胸部に当たる。
その瞬間、ポチを眩い光が包み込んだ。
「ーーーーっ!?」
思わず目を瞑る。
光が収まり、目を開けると同時に感じる衝撃。
「ぐぇっ!」
『光希ッ
ごめ、ごめんなぁ…ッ
俺、俺ッ』
泣きながら力強く抱きしめてくるポチを、光希は抱きしめ返した。
「いいの。大丈夫。」
『おい貴様ら!!!
そんな抱きしめ合ってる暇があるのなら、早く時雨様の元へ向かえ!!!
ポチ!雷獣であるお前なら行けるであろう!』




