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狐に嫁入り!  作者: 春海
学校
23/48

名をつけるということ


『いや、それよりももっと重要なことがある。

…其方、この男に本当に名をつけたのか?』



時雨がこれまた神妙な面持ちで詰め寄ってきた。近い。



「え、うん…」



名前って言うか、色が白かったからシロでって感じてつけたんだけど…ダメだった?




『はぁぁぁあ…

なんと、本当に、付けておったのか…』



時雨は盛大にため息をつきながら頭を抱えている。

ちょっと、ため息をつくとか酷くない?



「なによ。私何か悪いことした?

だってまさかシロが妖怪だなんて知らなかったもの。」



『そうじゃな、仕方がない…しかし、よいか?

妖は人間と同じで生まれ落ちたその瞬間は自身の名を持たぬ。

年月が流れて、名を持たぬ妖を人間が認知し、噂が広がる中で妖に通り名のような名がついていくのじゃ。


…しかし、生まれたばかりのその瞬間に初めて認識した人間がその妖に名をつけたとしよう。

そうすると、その名をつけられた妖とその人間との間にえにしができるのじゃ。

その縁は言わば親子の関係のようなもの…切っても切れぬもの…

名をつけた人間が死ぬまで、縁は切れることなく妖は人間の眷属となる。


わかるか?

つまりの。この狛犬は、其方と擬似の親子関係にあるということじゃ。

つまりの、其方の眷属。其方の手となり足となる存在なんじゃよ。この犬は。』




「え、え…えぇ!?!?

え、どうするの!?

シロ、私と親子なの?!」



『?

なに言ってるんだ?

光希は俺の親であるじで大切な存在だ!』



いつの間にか泣き終わっていたシロはまた太陽のように笑った。

いや、ごめん、わたしはまだ笑えない。




「し、時雨…どうしたらいいの?!」



『まぁ、もうどうすることもできぬじゃろうな。

見ている限り、縁はここ2、3日で出来たものでもないようじゃし…

完璧に定着してしまっておる。

引き剥がすのは困難じゃの…


しかし、我とて得体の知れぬ男が妻と縁を結ぶのは気に食わぬ。

どれ、強制的に引き剥がしてみるかの?』




『!?

い、嫌だ!!

俺は光希の眷属になると誓った身だ!

お前なんかにとやかく言われる筋合いはねぇ!

それに、もともと最初に俺が光希と出会ってたんだ!

妖怪頭であってもパッと出の奴に光希は渡さねぇ!!』




『はっ、なおも歯向かうつもりか。

わんころが、面白い。相手をしてやろう!!』




「ストップ!!!!

だから、今は争わないでよ!!

それよりも先に片付けるべきことがあるでしょう!!!」





『『…あ!』』




『あ!』って、忘れてたの!?



『そうじゃの。それを片付けないといかんの。』



『しかたねぇ。光希の顔に免じて今は休戦としといてやるよ、おっさん!』


『おっさ…!』『…それに、どうやら相手も俺らの場所に気付いたみたいだしよ?』



ガタガタガタ…

保健室の扉が動く。

扉を開けようとしている。何かが。外から。

ガタガタ…ガタッ…ガタガタガタ……


扉を開けようとする音が止まった。

諦めたのだろうか…?



「ね、ねぇ。

諦めたの…ガタガタガタガタガタッガタガタガタガタガタッガタガタガタガタガタッガタガタガタッガタガタガタッガタガタガタッガタガタガタッガタガタガタガタガタッ!!!!!!!!!!


扉がまた、勢いよく音をあげる。

諦めていなかった。先輩は、そこにいてこじ開けようとしている。

ガタガタバンッバンッバンッバンッ!!!!!

扉だけでなく、窓を叩く音。この場所を壊そうとしているかのようにあちらこちらで音がなる。



「ヒッ!!」



小さな声が口から出る。怖い。なんでこんなに執着するのだろう。怖い。助けて…


体が震える。そんな時に、わたしは何かに包まれた。それは暖かく、私に安心感をくれる。



『…大丈夫じゃ。光希、我がいる。』




そっと、耳元で囁かれたその言葉で、体の震えは驚くほど治った。



「今…名前…」



見上げると、時雨はニコリと微笑み




『…小童。そなたはこの子の傍にいろ。

あやつは我が倒す…』



時雨はどこからか刀を取り出し、ドアに近づいていく。



『おっさん、負けんなよ!』



『…貴様、誰に物を言うておる。

我は大妖…九尾狐きゅうびのきつねじゃぞ?

…このような雑魚。一瞬で片がつく。



…それに。

我はおっさんではない。お兄さんじゃ!』



最後に言い残し、時雨は廊下へと出て行った。

嗚呼、おっさんって言われるのが嫌だったんだね。

せっかくかっこよかったのに台無しだよ。

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