シロ
学校が終わり、私は正門ではなく裏門からある場所へ向かった。
そこは私がモヤモヤした時にいつも立ち寄っては癒されていた場所。
山へと続く階段を登ると、目の前には大きな鳥居が見えた。
「着いた…。」
いるかな?
前までは私がここに来るとワンって鳴いて出迎えてくれたけれど…
「シロー?
出ておいでー!」
学校の裏手にあるさほど高くない山。
そのてっぺんにこの神社はあった。
近所の人がよく来るのか、あまり廃れていないその神社にシロはいる。
「…今日はいないのかな…」
諦めて帰ろうとした時
『ワンッ』
「シロ!」
シロは現れた。
白い艶やかな毛並みのその犬は私に突進してきた。
大きさはゴールデンレトリバーより少し大きいくらい。犬種はわからないが私の話をよく聞いてくれる躾のできたいい子である。
シロは嬉しそうに尻尾を振っていたが、私の頬に視線を向けるとピタリ、止まった。
『わんっ』
「ん?あぁ、これ?
ほら、前話してた先輩に叩かれちゃった。
でも大丈夫。私も今までの鬱憤晴らしてやったから!」
シロはなおも心配そうに見てくる。本当にいい子だ。
「大丈夫だよ。ほら、ね?
また私の話を聞いてくれる?」
シロは尻尾を一振りすると、境内の方に歩を進める。
私も後に続いて、いつもの定位置に座り
時雨のこと、学校のこと、今まで合ったことを全部話した。
シロはただ静かに私の話を聞いてくれる。
「ーーーふぅ。疲れた〜
でもスッキリしたよ。ありがとうシロ。」
『わんっ』
「…そろそろ日が落ちてきたから帰るね?
また明日ね…?」
よしよし、頭を撫でてやるとシロは嬉しそうに尻尾を振った。
そして彼は私が見えなくなるまでいつも私を見送ってくれる。
そしていつも私は不思議に思うのだ。
あんなに人懐っこい彼は一体どこから来て、どこに帰っていくのだろうか…と。
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階段を降りるといきなり目の前に扉が現れた。
「…へ?」
そしてその扉は勢いよく開く。
中から出てきたのは
『ッ!!!
其方は一体、どこに行っておったのじゃ!!』
憤怒の表情を浮かべる時雨だった。
そしてそんな彼になぜか私は怒りを覚えた。
「…別に、どこに行っていても私の勝手でしょ!」
『昨日説明したはずじゃ!
其方は今危険な状況におると…
帰りも迎えに行くと言ったのに、いつまで経っても学校から出てこぬし、挙げ句の果てに気配も辿れなくなるしで妖に捕まったのではないかと思ったぞ!!
よいか!其方は自分の立場を全く理解しておらぬ!
じゃからそのような危うい行動に出れるのじゃ!
だいたい…』
怒りのままに声を荒げていた時雨がある一点を見つめ黙り込んでしまった。
「…説教は終わり?」
何も知らないくせに。私のことを攻めてくる時雨に対して怒りの感情が生まれた私はとても冷たくそう言った。
その冷たさに気づいてるはずの時雨だが、それには一切触れず
『其方、その頬どうしたのじゃ。』
頬に手を伸ばされる…だが私はそれをパシッと払った。
「…理由も聞かず、ただ怒鳴るだけの人に話すことなんて何もないよ。
…帰る。」
『…っ、待て、学び舎で何があった!』
手を掴まれるが私はそれも振りほどいた。
その時の時雨はとても傷ついた顔をしていた。
でも私も止まらない。
「…ッ、触らないで!!
時雨も私の親と一緒だよ。
あんたは、あの人たちと違うって思ってたのに…っ」
自分の思い通りにならないと怒鳴る。
それは両親と同じであった。私の話を聞こうとしないところも。
それが嫌だったのだ。彼は違うと思っていたのに。
私を連れ出してくれた彼を、信じていたのに。
彼も私がそういう態度が嫌いだと知っているはずなのに。
「あんたなんて、あんたなんて大っ嫌い!!」
私はそう言い放って自室へと走った。
部屋に入った途端、涙がボロボロと出てきた。
時雨が自分のことを心配してくれているのはわかった。
でも、彼の怒る姿はどこか両親と重なってしまった。
私の言葉を、誰も聞いてくれない。
彼は、そんな事しないって思っていたのに…
そう思うと涙が出てきたのだ。
ショックを受けている自分に少し驚きながら、明日の朝、どんな顔をして彼に会えばいいのか考えながら
私はその晩、床についた。




