吹雪
次に時雨が部屋に現れた時、彼の傍には髪の長い女性が立っていた。
「…えっと…?」
『…あぁ、彼女は其方の身の回りの世話を頼んだ者じゃ。
名を吹雪と言う。』
『こんにちは〜
ご紹介に預かりました、吹雪と申します〜
何かありましたらお声掛けくださいね〜』
吹雪と呼ばれたその女性は肌が雪のように白かったのだが、唇だけは炎のように赤くとても美しい女性であった。
「…駿河光希です。
よろしく、お願いします。」
『…それでは、我は仕事があるでの。
吹雪、彼女のことよろしく頼むぞ。』
『お任せください〜』
時雨は『また後での。』と言って部屋を去って行った。
『それでは光希様
まずは着物の着付けからしてみましょうか〜
この屋敷では基本的に着物が普段着ですから〜』
「あ、はい!」
おっとりと話している吹雪さん。
怖そうな人には見えないから、よかった。
でも、この屋敷にいるってことは彼女も妖…なんだよね…?
『ふふふっ
考え事ですか〜?』
「!
えーっと、はい…
あの、このお屋敷は妖怪しかいないんですよね?」
『そうねぇ…
基本的には妖怪だけよ〜』
「吹雪さんも、妖…なんですよね?」
私の言葉に、吹雪さんはにっこりと笑う。
『そうよぉ
さて、問題っ
私は一体、なんの妖怪でしょうか〜?
ヒントは名前で〜す!』
吹雪…ってことは、雪…?
雪…雪女?
「雪女…ですか?」
『ピンポーン!
せいかぁい!
私は北の国から来ました、雪女でございま〜す!』
吹雪さんは『見ててね〜?』と言って、部屋に置いてある高級そうなツボに手をかざした。
そして…
「!?」
かざすと同時に、そのツボは凍ってしまった。
『これが私の力よ〜
ご先祖様はこれで気に入った男を凍らせていたみたいだけど、そんなの今やったら捕まるわよね〜?』
コロコロ笑いながら話すけれど、私からしたら凍らされるのは恐怖でしかないです。はい。
吹雪さんは怒らせないようにしよう…
「…ん?
でも夏とか暑いですよね?
大丈夫なんですか、色々…」
ほら、溶けちゃったりしないのかな。
『大丈夫よ〜
私の部屋、すごーく寒いから〜
何てったって、冷凍室作ってもらったからね〜
いやー、快適快適〜』
「どんだけ金持ちなんだ、この家は!」
何で会話をしているうちに、いつの間にか緊張もほぐれ…
『光希ちゃんは本当にいい人のところにお嫁に来たわよ〜
だって時雨様、なかなかの権力者だし、お金あるし、優しくしてくれそうじゃない?
いやー、ほんと、よかったわぁ…』
「そんなにすごい人なの?
んー、なんか、凄すぎて実感わかないなぁ…」
『凄い方よ〜?
でもね、使用人一同としてはとっても不安だったのよ〜?
もしかしたら結婚しないんじゃないかって!
なんかね、過去に色々あったみたいで…
女の影が全くなかったのよ〜!
だからみんな、もしかしてずっと独り身でそのまま悲しい老後を送るんじゃないかって…
そんなのあんまりよね〜!
だから、光希ちゃんが来てくれて本当によかったのよ〜
ありがとうね〜』
ま、マシンガントーク…っ!!
でも、こんなに部下に思われてるんだ…
時雨はやっぱり、悪い奴じゃないんだね…
それと、過去に色々あったって、何があったんだろう…
それもきになるところだけれど
何はともあれ、吹雪とは仲良くやっていけそうです。




