ある雨の日の物語
晴れた日に、雨が降る…
それは天気雨と言われる現象。
だけど、本当は私たち人間と
狐狸妖怪である狐との
婚姻の儀が行われている証なのでした…。
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シトシトと、雨が降り始めた。
あーあー、やだな。さっきまであんなに晴れていたのに。
私は雨が嫌いだ。
ジメジメとして、髪の毛は広がるし。
傘を持たなければならないから、両手を使うことができないし。
何より、外で部活をやることもできない。
自由に走り回りたいのに。
この雨じゃ、走り回ることもできない…
「…なんて。
もう、走ることはできないんだったな…」
それはもうずっと前の話のように思えた。
私は陸上部で、それなりにいい成績を残していた。
だから選ばれた、選手として。
大会に出れると、浮かれていたのかもしれない。
その日は、まだ梅雨も明けていなくて。
今日のように雨がシトシトと降っていて。
私は学校から帰っている途中だった。
…その時だった。
キキイィィィィイィィーーーガシャンッ!!!!!
何が起きたのかわからなかった。
ただ、意識が朦朧としていて…
なぜか私は横たわっていて…
誰かが叫ぶ声が聞こえた気もしたし、空を飛んだようにも感じた。
薄れゆく意識の中、何かが私に問いかけた。
“生きたいか?”と…
なんと答えたかは、覚えていない。
ただ、次に目を覚ました時、私はベッドの上で横たわり白い天井を眺めていた。
その時のことは今でも忘れない。
生きていたことが嬉しかったのか、何かの喪失感を感じていたからなのか。
ただひたすらに、涙が出た。
…その後、医者の話を聞いた。
私は歩いているところをよそ見運転していた車に衝突されたこと。
出血がひどかったが、なんとか一命を取り留めたこと
一週間ほど寝込んでいたこと
そして…
足のダメージが大きく、日常生活を送ることはできるが
以前のように走り回ることは困難であること。
絶望。
その一言であった。