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肉弾×白兵×遠火×魔戦  作者: 夏目義弘
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オマケ更新

 一発も避けられなかった。

 回避運動は取ってはみるものの直撃を免れただけで、六つの拳の波に飲み込まれた。

 軽度接触試合形式練習ライト・スパーリングだったので、ダメージは無かったが、とにかく異様に疲れた。

 神経の疲労に息も絶え絶えで、汗が滝のように吹き出た。

 これは良い練習になる。

 ここまで追い込める練習はそうそう無い。

 自分の成長の予感に四天は、目の前が暗くなりそうな酸欠の中、笑顔を見せた。

 

 それからY字練習は、四天の日課となった。

 トレーニングで追い込んだ後の、ダメ押しとして練習の最後に必ず行なった。

 中の人の回避能力が上がれば、Y字の三人は手加減を少なくしていく。

 回避だけ、攻撃有り、足だけは動かし防御も攻撃もせず打たれて耐久力を鍛える。

 一つのパターンをクリアするたび、様々なバリエーションを作っていった。

 攻撃側もジャブのみ、フック無し、クリンチのみと、工夫を凝らしていった。

  三ヶ月も過ぎたころ、成果が現れた。

 コブシ相手の二人がかりで、スパーリングの形になった。

 二人の拳が主将に届くようになった。

 Y字で研ぎ澄まされた知覚神経により、相手の動きがよく見えるようになったからだ。 格上相手には簡単には負けなくなり、格下相手には簡単にカウンターを取れるようになった。

 中の人がまず成長し、Y字としても成長、中の人がまた成長。

 成長した四天を相手にするコブシも成長。

 の循環が繰り返される。

 中の人が避けるようになる、コブシに拳が当たる。

 痛みが嫌いなコブシの回避能力アップ、それに追いつくため四天がY字で相互にレベルアップ。

の好循環が繰り返され、四天とコブシは飛躍的な成長を遂げた。

 オウマをY字に取り囲んだ三天には、絶対的な自信があった。

 三天がステップを踏みながら、目配せを交わす。

 誰から行く? 俺から行かせろ。了解。

 オウマは動かない。何かに見惚れているのか、ぼーっと突っ立っている。

 その無防備な背中に襲い掛かる。

 背後からのジャブ。

 狙うは肩甲骨の下、肺に打撃を加える。

 獲った!!

 呼吸が詰まり動きを止めたところを、六つの拳でボコ殴る。

 一分間の無呼吸連打で、ボコボコにする。

 肉を打ち、骨を叩き、内臓を痛める。

 倒れることなど許さない。

 拳撃の波に飲み込む。

 念のためバンテージは巻いている。

 これで拳は壊れない。

 思いっきり殴り続ける。

 同級生、後輩達の仇を獲る!!

 三天はそう確信した。

 前の二天も合わせて動く。

 そもそも回避など想定の必要は無い。

 数発避けられようが、飲み込めば良いだけだ。

 

 六つの拳が迫る中、オウマは耳を澄ませていた。

 揺れと揺れないのを楽しむために、目はいっぱいいっぱいだ。

 他に回せる余裕は無い。

 耳だけを使う。

 三人の足音に耳を傾ける。

 タッタッタン、タンタンタンタン、タッタッタッタッタッ。

 似ているようだが、実は違う。

 基本のステップは同じだが、動きの継ぎ目でそれぞれリズムが違った。

 それを読み取る。

 耳による文字通りの聴勁だった。

 足のリズムは呼吸のリズムを表す。

 人は吐いて動くのだ。

 吸っては動けない。

 それを聴き取ったオウマに、三天の動きを読むのは容易かった。

 背中、左、右。

 目視無し(ノールック)で、正確に動きの起こりを捉えていた。

「眼福の邪魔すんじぇねえ!!」

 身体を捻る。

 バックブローで背中に迫ったジャブを弾く。

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