女性視点(ガールズ・サイト)
翌日。
式典、倶楽部紹介が終わった後は、いよいよ授業の開始だ。
オウマは、登校、午前授業、昼食、午後授業、風紀委員の助太刀をこなした。
「皇眞さん、助太刀の公務は本日は終了です。ありがとうございました」
風紀委員会の執務室で、房代が丁寧に頭を下げる。
たわわのみわわの胸が、以下略。
風紀委員と助太刀は相棒制だ。
オウマは見習い助太刀でありながら、中等部から風紀委員を務めている房代と組むことになった。
風紀委員長、塚原正宗の鶴の一声で、それは決まった。
房代は性格的に荒事を嫌う。
そのため房代の助太刀は空位だった。
そこに頑丈さを見込まれたオウマが割り当てられた。
剣ではなく盾としての、人員配置である。
「今日も何事もなく、良かったですね」
房代が笑みを見せる。
担当区域の巡回でも何事もなく、投書箱にもこれといった投書は無かった。
学院は平和である。
事件・事故はゼロ。
そう報告書に記入する瞬間が、房代は大好きだった。
巡回が空振りに終わろうと、投書箱が空だろうと、何事も無い方が良いのだ。
風紀委員は抑止力。
それだけの役目で十分だった。
武力である助太刀に、上機嫌で声を出す。
「皇眞さん、後は私がやっておきますね。部屋の鍵も施錠後、返却しておきます。本日の公務は終了です。お疲れさまでした」
濃紺の制服に頭を下げる。
濃紺は学院内では、少数派なので目立つ。
目立つそれを青紫が連れている。
巡回時には、かなり目を引いた。
濃紺にはかなりの数の、好奇、軽蔑、侮蔑の視線が向けられていた。
注意できるほどの悪質性は無いが、その選民思想に房代は、ムッとした。
何か言おうと前に出ようとする度、皇眞に制された。
手を伸ばして阻んだ皇眞に、視線を向ける。
嘲笑さえ受けていた濃紺は、無言で口と目を細めた笑顔で、首を横に振っていた。
この人は、なんて器が大きいのだろう。
房代は苛立った自分の矮小さを恥じた。
助太刀なんて今まで不要だと思ってたけど、この人となら、皇眞さんとなら上手くやっていけそう。
流石、正宗様が直々に助太刀に採用された方。
素敵。
正宗様の人事センス、素敵すぎる。
房代は、両手を顔に当てて、その度うっとりしていた。
「分かりました、それではまた明日。失礼致します」
オウマは合わせて、恭しく頭を下げる。
昨日も巨乳、今日も巨乳、そして明日も巨乳。
ビバ巨乳。
そこにそれが存在するだけで、そこにいるだけで、オウマは幸せだった。
後は、もろ肌と、肌触りと、肌匂いと、肌味だ。
期待に胸が躍る。
何やらバディ制度とかで、房代と自分は二人一組なのだ。
チャンスは無限大に近い。
思春期の男女だ。
何が起こってもおかしくはない。
偶発的な事故的な幸運的なイベントが起こっても、おかしくはない。
またその発生確率は、接触頻度、一緒にいるのが多ければ多いほど高くなる。
巡回中のゲリラ豪雨での雨宿り。
張り付いたシャツに、透けた下着。
冷えた身体にシャワーイベント。
間違ったフリして、扉を開けるなどなど。
うひょー。
オウマは想像だけで飛び跳ねたくなった。
魂が削られるほど勉強させられ、入学したかと思えば初日から暴行を受け、下校時にはぶん殴られ、翌日には竹刀でしばかれ、保健室では黒こげになりそうな電撃を受ける。
そんな不登校一直線な生ゴミ学院生活が、房代と組んだだけで、バラ色に変わった。
学校に来るのがこんなにも楽しくなるとは、夢にも思わなかった。
だからこそ、あえてもう一度言おう。
ビバ巨乳。
巨乳は正義、大正義。
巨乳の前に巨乳無し、巨乳の後に巨乳無し。
巨乳の側は誰にも渡さねえ。
明日も明後日も未来永劫、俺のモノじゃー!!
ぐははははは。
執務室を退室したオウマは、高笑いを隠し切れそうになかった。




