ロリ巨乳の破壊力
「原田先輩、待って下さい」
舞台を降りようとしていたコブシが振り返る。
「皇眞さん、救急箱をお願いします」
言いながら房代はコブシに駆け寄っていく。
「あーい」
机に乗せていた救急箱を手にし、皇眞もそれにならう。
風紀委員のもう一つの公務。
司会・進行に加え、負傷に対する救護がそれだった。
「原田先輩、消毒と止血をしますから、大人しく立ってて下さい」
「これぐらい別に」
ピー。
コブシは降参とばかりに、また手のひらを見せる。
立ち止まったコブシの胸に、房代が手当をほどこしていく。
「少し沁みますね」
オウマは救急箱を開いて控えている。
房代はそこから、ガーゼと消毒液を取り出す。 ピンセットで掴んだ綿布に、滅菌液を染み込ませる。
それをコブシの胸の小さな穴に当てる。
コブシの胸に軽い痛みが走る。
だが、コブシはそれを気にしなかった。
そばの田舎頭を睨むのに忙しかったからだ。
また、てめえかよ。
房代は傷口の消毒の後、垂れた血を拭う。
既に血は止まっているが、胸の穴に絆創膏を貼る。
半裸の上半身の中心に絆創膏。
少々不格好だが、コブシは気にしなかった。
そばの石頭を睨むのに忙しかったからだ。
コロす、コロす、コロす。
オウマは動きを追うのに忙しかった。
房代の巨乳は動く度に揺れている。
それに合わせ、眼球を目まぐるしく動かしている。
たっぷん、たっぷん。
ゆらゆら。
ばいーん。
すー、とと。
幸せは、縦横無尽に慣性のまま、遅れて揺れる。
房代は童顔で、背も小さい。
顔の幼さと、身体の迫力がアンマッチだ。
そのコントラストの格差が素晴らしい。
ロリ巨乳、最高である。
「これで良しっと。原田先輩、終わりました。動いていいですよ」
房代が手当を終える。
次の瞬間、コブシは突っかけた。
ようとした肩を、後ろから誰かが掴んで制した。
ああ!!
邪魔をされた苛立ちを隠さず、コブシは振り返る。
そこには副主将が立っていた。
コブシの殺気に、首を横に振っている。
思い付きの乱入に、副主将は迅速に答えてくれた。
下級生に指示を出し、入場曲まで準備を整えた。
信頼は厚い。
その副主将が首を振っている。
今はまだその時ではないと。
コブシは舌打ちの後、拳を降ろす。
手ぶらで帰るのも癪だ。
ちょっとイジメてやるか。
オウマに近寄る。
「またお前か。放課後、部室に来い」
上から見下ろしながら、話しかける。
オウマは、房代が救急箱を取り出しやすいように、低い姿勢にしゃがんでいた。
手当を終えた房代は、副主将と何やら話している。
できる副主将が気を利かせ、オウマから房代を引き離したのだ。
オウマは開けていた救急箱を閉じ、立ち上がる。
あー、面倒臭せえ。
一発殴ってくれて、許してくれないだろうか。
どうしてこんなにも、汗ばんだ野郎は不快な存在なのか。
息を止めておこう。
巻き藁をぶっ飛ばしたコブシは、良い感じに汗をかいている。
無言と、息を止めたオウマを、ビビったと勘違いする。
元々自信家なのだ。
「来ねえとどうなるか」
ぶっはー。
無理無理無理、人は空気で生きている。
オウマが吹き出す。
勢いよく吐いた息が、コブシの前髪をなびかせる。
つばきが飛んだような、飛んでいないような。
男の息に、コブシの額に血管が浮かぶ。
房代と話している副主将を見る。
首を振っている。
コブシは、殴りたい衝動を何とか自制する。
奥歯を噛みながら、オウマを脅すことで何とか衝動をやり過ごした。
「てめえ、俺に逆らって、この学校にいられると
思ってんのか?」
オウマは答えない。コブシはその勢いのまま続ける。
「俺の親父は、学院理事だぞ。てめえみたいな木っ端編入生なんざ、直ぐにでも放校処分にしてやんぞ」
濃紺の制服に、コブシは凄む。
この時、初めてオウマは取り乱した。
放校処分、それは困る。
まだ房代のおっぱいを、一摘みも一掴みも一しゃぶりもしていない。
あわわわわ、どうしよう? どうしよう?
口元に手を当てたオウマ。
その眼球が目まぐるしく動く。
上下左右斜めに走り、考えを巡らせる。
「分かったら、放課後、部室に来い。それで許してやる」
うろたえ騒ぐオウマに、コブシは満足げだ。
放課後、人間サンドバックにして、全身を打撲だらけにするか、鼻と前歯を折るか、どちらにするか楽しみだ。
対外的には、体験入部での事故にすれば良い。
自分は支配者だ。
何をしても許される。
二連敗したオウマに、勝利するよりも、敗北の屈辱を晴らすことをコブシは優先していた。
それが、今のコブシの限界だった。
殻を破れない理由である。
「オウマさん、席に戻りましょう」
副主将と話し終えた房代が、オウマの元に戻ってくる。
その胸はたわわ、たわわに揺れている。
オウマは房代に従い、席に戻る。
顔を青ざめたオウマに、コブシはご満悦だった。
倶楽部の実演が再開される。
大きく実った胸を横目で盗み見る。
その度にオウマの顔は血色を取り戻していく。
進行に、房代が身を乗り出す。
上着の盛り上がりに丈が足りなくなった、白いTシャツのチラリズム、そこで完全復活をオウマは果たす。
そうだ。
明日の放校より、今のおっぱいだ。
今日揉めば良い。
オウマは、そう決心した。
倶楽部の実演紹介が終わった放課後。
オウマは房代に案内され、学院を見て回った。
「黒田さん、さっきの手当見事でしたね。慣れた手つきで、実に見事でした」
オウマはよく房代に話しかけた。
房代は頭一つ低い。
それがこちらを向く。
「ワタシ将来は、看護士を目指しているんです。そして、お医者さんのお嫁さんになれたらイイなあ」
上からの視線は、胸の膨らみがよく分かる絶景だった。
シャツと制服のボタンはきっちり止められているので、谷間は見えない。
だが、その固さ、清楚さと、盛り上がった胸と言うアンバランスが、実に良いのである。
今そこにある巨乳。
当然オウマは、呼び出されたことなどすっかり忘れ、その存在を楽しんでいた。
待ちぼうけをくらったコブシは、サンドバッグ一つ、パンチングミット二つ、全国クラスの下級生三人ヘッドギア有りを、すべてオシャカにしていた。
二連敗した相手に、三度目の正直は有り得ない。
勝負の神様は、都合の良い再戦など許さないのである。




