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肉弾×白兵×遠火×魔戦  作者: 夏目義弘
32/62

人斬り

 オウマの目が見開かれる。房代の胸に釘付けになる。

 で、でかい。説明不要!!

 無邪気に飛び跳ねる房代。その胸は制服をはち切れんばかりに隆起している。膨らんだ二つの房がジャンプの上下運動に、ゆっさゆっさボインボインと揺れている。えーと何なの、このロリ巨乳(嬉しい悲鳴)!!

 それからオウマの目は、房代の胸に照準ロックされた。房代が動く度に、二つの爆弾は大きく揺れる。縦運動はもちろんのこと、その大きさは横揺れも可能だった。身体とはまるで別の生き物のように、揺れ動く。

 ピッ。

「以上、薙刀部による演武披露でした。次は第一剣道部による演武披露です。第一剣道部の皆様は、直ぐに準備に取りかかって下さい」

 房代が進行していく。皇眞にはこれといって役割は無い。房代の横に座っているだけだ。長机を前に、二人並んで管状パイプ椅子に座っている。横目でちらりと、房代を見る。

 前から動きを楽しむの良いが、横からの静止状態も、これはこれで良い。房代の横顔の下は、制服の胸が突起している。横から見た方が山麓アンダー頂上トップの差がよく分かる。八千メートルは越える世界有数の山だ。頂のあまりの高さに、制服の丈は足らず、開いた間から肌着インナーのTシャツが見えている。その清潔な白さがまた、雪解けよろしく山を、さらに美しく見せている。

 高名な登山家曰く。

 何故そんな命の危険をおかしてまで山の登るのかって?

 そこに山があるからさ。

 オウマはその名言に同意する。。そこに山があれば登りたくなる。それが男の性分だ。元来男は冒険家なのだ。その開拓精神フロンティア・スピリッツは抑えられない。高い頂がそこにあれば、挑戦するしかないではないか。見ているだけなど、有り得ない。

 どうやったら、あの山を征服できるか。どうやったら、あの胸を鷲掴みにできるか、顔を埋めて窒息できるか。視覚の幸せは、もうお腹いっぱいだ。次は、触覚、嗅覚、味覚を楽しもう。

 ピッ。

「準備が整いましたので、これより第一剣道部による演武披露を始めます。演武内容は、第一剣道部主将、塚原正宗さんによる、巻き藁斬りです」

 房代の房房は、笛を吹くだけでも揺れている。座ったまま拡声器マイクで進行した房代は、それを置き、いきなり立ち上がって叫んだ。

「きゃー、正宗様すてきー!!」

 座ったままのオウマを軽く肘打ちする。

「ほら、皇眞さんも応援して。正宗お姉様の御光臨ですよ。きゃー、正宗お姉様すてきー!!」

 立場を置いて、房代は一観客と化す。房代は正宗に憧れて風紀委員になった口なのだ。

 演武用に設けられた舞台には、道着姿で正宗が一人立っている。純白の上着に濃紺の袴、素足が舞台の床をしっかり掴んでいる。長い髪は上でまとめられ、馬の尾を形成している。うなじ、うなじ。

「きゃー、正宗お姉様の(うなじ)すてー!!」

 オウマも立ち上がって叫んだ。

「でしょ、でしょ、皇眞さん分かってるねえ」

 声援を始めたオウマに、房代もご満悦だ。同調動作ミラーリングに、親近感を感じる。嬉しそうな顔が、オウマとの距離を詰めている。オウマは嗅覚を楽しんだ。山は柔軟剤の香りがした

。科学的な匂いが山の大自然の強調アクセントとなっている。助太刀、最高でーす。

 黄色い声援が治まった後、正宗は四方に礼をする。会場が静まり返っていく。

 正宗の周りには、複数の巻き藁が立てられていた。居合い用に、腰の鞘を逆に返す。真剣な正宗の気迫に、会場が緊張に包まれる。誰一人話さず、物音さえ立てない。

 ドン!

「せいりゃあ!」

 まずは正面。正宗はその場で床に踏み込んだ。その反動を利用して前に突っかける。気合いと共に抜刀する。逆袈裟斬りに振り上げられた刀は、巻き藁を正確に捉える。西洋剣のどこでも切れる斧のような構造に対し、日本刀は切っ先で引っかけて抜いて斬る構造だ。そのため刀身は、西洋剣が直線で、日本刀が曲線である。また曲線であるため、日本刀の真刃スイート・スポットは狭い。そこで正確に捉えないと、ものは斬れない。

 それを難なく正宗は行った。日々の努力の賜物である。

 斬られた巻き藁が、切断面で、ずり落ちていく。それが床に落ちると同時、歓声が巻き起こる。

「見ました、見ましたか。あの正宗様の凛々しさ。きゃー、正宗様すてきー!!」

 房代がまた声を張り上げる。

 あんな怖ええ女は、嫌じゃー!!

 オウマは、そう身震いしていた。

 居合い。抜いて引っかけて斬るだけなら、さほど難しくはない。相手は動かない巻き藁だ。ゆっくりやれば、三年ぐらいで斬れるだろう。。

 だが正宗の居合いは、上級版だった。巻き藁に限界まで近づき、刀を引っ張って抜くのではなく、自分の腰を逆に返して抜いていた。前に進んだ慣性とは逆に動く。これは十年はかかる技量だ。

 さらには、きちんと刀身を鞘に滑らせ加速ささせている。鞘の角度を調整する左手と、刀を抜く右手が正確に連動しないと、鞘走りは起こらない。それを難なくやってみせた。

 切断された巻き藁の中には、青竹が入っている。立てるための芯でもあるが、青竹の強度は人間の背骨と同等との説もある。それが真っ二つにされている。

 つまりは、正宗は張り付いたような近距離で、相手の背骨を切断できると言うことだ。正宗の居合いは、手加減の余地の無い、必ず殺す技、必殺技と言うことだ。

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