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肉弾×白兵×遠火×魔戦  作者: 夏目義弘
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女体

 心臓の鼓動の高まりも感じる。正宗にはそれが、オウマのものか自分のものか分からなくなっいた。

 よし、イケる。

 手応えに鼓動が高まる。鼻息が荒くなるのは抑える。相手に策を気取られてはいけない。

 それにしても女体は、なんでこんなに柔らかいのだろう。指先が触れただけでも、全体の曲線、丸みが伝わってくる。力が抜けそうだ。身体がまろむ。生まれながらに染み込んだ毒、刺さっていた棘が、抜けていく。余計なものがキレイに洗い流されていく感覚。肉も骨もドロドロに溶けそうな。心身が歓喜する。もっと触れたい、触れられたい、それだけを渇望する。

 オウマは次の作戦を実行する。掴んでいた手を放し、身を捩る。呻く。

「い、痛い。お腹が、痛い」

 目をぎゅっとつむり、横に寝転がる。背中を丸め、お腹を抑える。脂汗は出ないが、バレないことを祈るのみ。

「うー、うー」

 突然唸り出したオウマに、正宗は驚いてしまった。だが固まっている場合ではない。持病の癪でも刺したのか、オウマは苦しげだ。身体を丸め、声にならない声を出している。息も絶え絶えだ。顔をくしゃくしゃにした、苦悶の表情を浮かべている。

「ど、どうしたの?」

「お、お腹が、痛い」

 狼狽する正宗に、正確な症状で答える。察しの悪さは好都合だ。冷静に腹痛薬など探されてはたまらない。元々仮病だ。治療など必要ない。求めているのは、手当だ。

 お腹に当て両手を少しずつ下にズラす。合わせて、身悶えと見せかけながら、モゾモゾした動きで、学生服のパンツと下着のトランクスを下に下げていく。

 オウマは呻きながら、寝返りを繰り返し、下のギャランデューが見えるか見えないかの境界線ラインまで下げた。薄目でちらりと正宗を見る。相手は突然の事態に戸惑ったままだ。視線をこちらに釘付けにしたまま、あわわ、あわわとしている。頃合いだ。

 真正面に寝返る。シャツの残りのボタンも、お腹を押さえた体で、静かに外し終わっている。

「痛い、痛いよー」

 両手で両脇のシーツを握りしめる。強調するように少し背筋を海老反る。お腹と下腹部を正宗に突き出す。動きにシャツが、はだける。引っ越ししたばかりで未荷解きだったので、肌着インナーのTシャツは着ていない。シャツの下は諸肌だ。引っ越しナイス。首筋から胸、腹、下腹部までが露わになる。顔をしかめながら、正宗に見せつける。

 ど、どうしたら? そうだ、誰か。

 正宗は、人手を呼ぼうと踵を返そうとする。逃がすか!! オウマはその手を掴んでそれを阻止する。ここは勝負所だ。

「さ、さすって、下さい」

 ええー!!

 正宗は突然の申し出に、内心に悲鳴が出る。さ、さする? 私が?

 オウマは苦しそうだ。握り締められたシーツは、今にも引き裂かれんばかりだ。

 確かに、さっきは触れたけど。

 痛みを感じるA10神経は、広範囲の接触に麻痺をし易い。痛みを押さえるために、手のひらなどで広範囲に触れれば、痛みを伝える神経が、広範囲の神経伝達に、かき消されてしまう。それが昔ながらの民間療法、手当なのだ。患部に触れた痛いの痛いの飛んでいけーは、科学的療法なのだ。ちなみに、飛んでいけーは、偽薬暗示(婦良シーボ)効果であり、これもまた科学的なのだ。

 手当の効果は、正宗も知っている。だが、相手は同年代の男性なのだ。異性交遊だ。思春期特有の過剰意識に、身体が動かない。その間にも、オウマは苦しんでいる。

「お、お願いします。正宗、先輩」

 声を出すのも辛そうな、か細い声が耳朶を打つ。そうだ、私は先輩なのだ。一年生が苦しんでいる。それを助けなくて、何が先輩だ、上級生だ。そう、これは破廉恥な行為ではない。正当な医療行為だ。

 正宗の目に力が戻る。決心の後は、迅速な行動だ。手を伸ばす。オウマの鳩尾に触れる。接触範囲をできるだけ広げるべく、手のひらをべったりと張り付ける。

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