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ホープ

「この丸く愛らしい彼の名前はホープ。

日本の学生、ハルムネ・ヤマシロのノートパソコンから偶然生まれた成長するAIプログラムだ」


「こんな見た目だが、私達の全ては彼に託される事になる

その為に、彼が敵国の存在であろうとも私達は全力の情報提供、サポートを惜しみはしない!」


「自己紹介が遅れた!

私はアルマ・バルテン、元ドイツ軍小隊の指揮官をしたていたが軍縮の際切り捨てられ、それからは化粧品会社のコールセンターで働いていた!あと女だ!

見ればわかるか?」


11人がその一室で狭苦しくパイプ椅子を並べて見守る中、長い金髪を後ろで硬く結んだ彼女はプロジェクターの映す映像を顔面に受けながらそう叫んだ。


「何か質問はあるか!」


彼女が叫ぶと1人の老人がゆっくりひらひらと手を上げる。


「なんだ!シュート!」


「次に陸に上がるのはいつだ…もうダメだ

せめてタバコをだな…」


「艦内は禁煙だ!

次!ハルムネ!自己紹介と彼の性能について説明しろ!」


「は、はい」


言われて、俺ハルムネがプロジェクターの映す映像の横に立つ。


「山城春宗です、よろしくお願いします。

彼は俺のパソコンからいつの間にか生まれていて、最初は人のパソコンを勝手に荒らしたり覗いたりするので「バンデット(無法者)」なんて呼んでたり」


「ホープだ!」


「って、アルマさんに改名されましたが。

…とにかく、まずはこれを見てください」


俺はプロジェクターと繋がれたタッチ式のノートパソコンに、あらかじめ画面の端に置いておいたそのデータを指でツツーと滑らせて彼に当てる。

彼は俺の指を目で追って、何事かと言わんばかりの表情でそれを見ていた。


status.exeと書かれたそのデータのアイコンは彼目掛けてぶつかると、瞬間巨大な枠に変化し、その数値を表示した。



name:HOPE

age :1286.56.11.06

sex :?

type :?

lv :3

hp :5

atk :3

dfe :2

spd :0

skill :?


「なんだこれは!説明しろ!」


「はい、俺が今ホープに当てたデータは実は俺が作った物ではなくて、アメリカのラッキー・ノバ社が提供している「プライムクエスト」と言うオンラインゲームのデータを解体したら出てきた物で。

そのゲームでは最初に自分の操作キャラを作成する時に16兆通り以上のカスタマイズによって作成するんです。

肌の色や胸の大きさまでそのキャラクターのステータスに関係してくるんですけど、それを計算してキャラクターにステータスとスキルを当てはめてくれるデータみたいなんです。

それを俺が単体で起動出来るように改造して、ふざけて彼に当ててみたら…」


「わからん!

もっと簡単に説明しろ!」


アルマさんがキレる。


「え…簡単って…」


これ以上の噛み砕きようが見つからずオロオロしていると、再びさっきのシュートと呼ばれた老人が手を上げて言う。


「いい、次、行ってくれ」


「は、はい!」


しかめっ面のアルマさんを無視して続ける。


「あの…これだけじゃ分かりにくいと思ったので、これから突入する|アメリカ合衆国中央情報局《CIA》コンピュータのセキュリティウォールにこれを当ててみたんです。

その数値が…これです」



name:?

age :6

sex :?

type :?

lv :80

hp :452

atk :950

dfe :5002002

spd :0

skill :?


「化け物じゃないか!」


アルマさんもこれは理解出来たようだ。


「はい、幸いこのセキュリティウォールはAIではありませんから自ら判断を下して攻撃なんかはして来ませんが、耐久性がずば抜けていて、破壊するのは難しいでしょう

…だけど今がチャンスです」


「チャンス?なんでだ!」


「この数値…lvは成長度、hpは体力、atkは攻撃力、dfeは防御力、spdは素早さ、skillは持っている特殊な能力を表しているのですが。

このSW(セキュリティウォール)、レベルの割りにはHPがやけに低い」


「低い?どこがだ!ホープの90倍だぞ!」


「い、いえレベルの割りには…」


シュートの方を見ると、次に進めと言わんばかりに顎をクイッとさせていた。


「…このHPの低さ…、多分CIAがこいつの性能を過信してメンテナンスを怠った結果だと思うんです」


「プログラムも老朽化する時代か…」


シュートが呟いた。そして続けて言った。


「しかし破壊した後が大変なんじゃないのか?

CIAのSWなんか破壊すればスグに警報でもなるだろう。侵入なんてスグにバレる。

それに成長するAIは確かアメリカでも日本でも半兵器扱いだ、日本で発見された成長型AIは条約上アメリカに献上することになっているんだろう?何故か戦時中か否か問わずにな。

見つかれば没収される可能性すらある上、日本が条約を破りアメリカに攻撃した事実になってしまうぞ」


「そ、それは…」


「強行突破だ!」


アルマさんが答えた。


「幸いな事にホープは殆ど言葉を話せない!

いくらCIAの拷問といえども彼が情報を漏らすことはない!

彼が日本生まれだと奴らが知る術はない!」


「考え無し、ってわけだな

どちらにせよ攻撃され彼が死ねばこの作戦は失敗に終わる」


「なんだと!」


アルマさんとシュートが睨み合う。

すると、その空気を緩めるかのように一人の少女が手を上げる。


「あの…それなら私がなんとか出来るかも知れません…」


「君がCIAのセキュリティを掻い潜る方法を知っていると?」


「いえ、セキュリティじゃなくて攻撃なら…

ハルムネ君、コレを彼に」


そう言って彼女はポケットから取り出したUSBメモリを俺に差し出した。

俺がそれを受け取ってパソコンに刺すと、画面の上からコツンと一つの小さな帽子が音を立ててホープの横に落ちた。


それを指で滑らせ、逃げ惑うホープを追って装着させる。

帽子であるのに身体の小さな彼は身体全体がすっぽりとはまってしまった。


すると、一つの柔らかな電子音。

画面を見ると一つの変化に気がつく。


name:HOPE

age :1286.58.15.25

sex :?

type :?

lv :3

hp :5

atk :3

dfe :7⤴︎

spd :0⤵︎

skill :?


見ると彼女はドヤ顔。


「防御力が5上がったな…で?」


シュートが冷たく言い放つ。


「でっ…て…。

これなら敵の攻撃を少しは凌げるかなーって…」


彼女のその言葉に対し、その部屋は沈黙とため息で返した。


「ご、ごめんなさい…」


火照らせた顔を俯かせてゆっくりと席に座る。

室内は少し長めの沈黙に包まれた。


「…ハルムネ、どうした?

まだ、何かあったのか?」


沈黙の間、ずっと画面を眺めていた俺にシュートがそう問うた。


「いや…この帽子どこかで見たことあると思ったら…。

さっき言ったプライムクエストの最低レア装備ですよ。

ちょっと待って下さい…。」


ホープからその帽子をスポンと外すと、そのままそれを画面端の俺が作ったデータ解体プログラムにぶつける。

現れた黒い枠がその帽子の性質を表す文字列をつらづらと表示した。


「やっぱり…これ、俺がステータスを見る機能を単体で起動できるようにしたのと同じで

プライムクエスト内のアイテムを「こっち」でも使えるようにしたものだ…」


「ゲームのアイテムを本物のインターネットで?」


「凄い!このソースをパクれば多分プライムクエスト内の全てのアイテムが使える様になります!

凄いです、ソチさん!」


俺がそう叫ぶと彼女は再びドヤ顔を取り戻す。


「ふふ、CIAに全部持ってかれる前に父さんのパソコンから勝手に抜き取って置いたの

これしかとれなかったけど…」


「おい待て、つまりどう言う事だ!」


いつの間にかアルマさんが話に置いていかれていたようだ。


「つまり、ゲームの中で得た強いアイテムを彼に与えれば彼も強くなるということです!」


これ以上ないだろうという程に簡潔に説明してやった。


「ん…んん?」


わからなかった様だ。


「ならハルムネ、悪いが君がゲーム内で集めたアイテムを彼に与えてやってくれないか?」


シュートが言う。


「い、いや実は…」


「やっていなかったのか!?」


「い、いえ…何度もデータを改造してたら…アカウント凍結されちゃって」


再び巻き起こる沈黙とため息。


「済みません…。

また最初からコツコツ集めて行きます」


「時間は。

どれほどかかる?」


「俺はあまりやってなかったんですけど

ステータス平均が80を超えて見習いと呼ばれる様になったのがプレイ100時間位で…」


「めちゃめちゃやってるじゃないか!」


アルマさんが叫ぶ。

シュートが無視しろとジェスチャーを入れる。


「あの、そのゲームの会社に連絡してデータを貰えばいいんじゃ?」


ソチが言う。


「それがいいな…って言うのと同時に思ったんだが。

よく考えたらこんな戦争中にゲーム会社が運営してるのか?サーバーだって動いて無いんじゃ…」


「あ、ログインできました」


「呑気なもんだな…。

ハルムネ、ついでにそのラッキーノバ社について調べてくれ、俺が連絡して事情を説明する」


「いや、私が連絡しよう。

元コールセンター職員だからな、交渉は得意だ。」


「勝手にしろ」


「…あれ?」


「どうした?」


「いや、ゲーム内にある本社へのリンク踏んだら別の会社に…

…あ!そうだ!ラッキーノバ社のサーバー2年前に他の会社に買収されたんだ!」


「新しい運営の名前は?」


「グローバー…って読むのかな、コレ」


「グローバー社だって!?」


すると、後ろの方で今まで興味なさげに話を聞いていた迷彩柄の長ズボンにシャツを着た5人の内一番ヒョロい一人が声を上げた。


「四つ葉の世界マークのグローバー社か…

そりゃ、今でも運営してるがな」


「な、なんの会社なんですか?ココ」


シュートが答えた。


「…ここはな、主は世界最大手の家電製品製造会社だ。

今はアメリカ軍に電子機器による傭兵の統制、そして兵器の開発を任されている

…今回の俺たちの敵だ」

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