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顔無言ノ葉

ひとつのテーマに従った言葉の群れ




×(否定)ばっかりが積み重なって、(肯定)は何処にも見当たらないや。

心が無ければよかったのかな。何にも思わなければよかったのかな。

だけど、心がない僕はきっと歌えないただの人形だから。

君が僕を作り出して、僕が僕を消していくんだ。それで最後に何が残る?

こぼれおちた言葉が集まって川になったら、いつかは君に届くかな。


君に伝えたい心があったんだ。君に伝えたい気持ちがあったんだ。君に伝えたい言葉があったんだ。

でもほら、空回り。伝わらない言葉は僕の手からするりと逃げていった。

君が好きだなんて言えないや。僕が嫌いだなんて言えないや。

僕の好きも嫌いも君を傷つけるのなら、それじゃあ僕に伝えられる言の葉なんてないんだ。

君の涙なんて、みたくもないのに。


君の声が聞きたくて、僕の声を聞かせたくなくて、これじゃあどうにもできないよ。

言葉を集めるたび僕を見失って、言葉を紡ぐたび君を見失って、今じゃあ何にもわからないよ。

大好きだったはずの君の事だってほら、もうわからなくなった。それでも僕は、此処にいると言えるのかな。


僕が優しいって君は言うけど、それって僕の何を見て言ってるの?

優しさのふりをした臆病が僕の手を引くんだ。こっちにおいでって。


降り注ぐ誰かの言の葉が僕を消し去っていくんだ。

誰かの言葉に押し潰されないように必死でかき集めたこの言葉たちも、やっぱり誰かの思いが見え隠れしているんだ。それじゃあ、僕は何処にある?

探したって僕は何処にもいなくて、じゃあ君が見てるのは何処の僕?


借り物のメロディとツギハギの言葉で、僕に何が歌えるんだろう。

此処にいる僕はきっと誰かの言葉の寄せ集めで、僕自身の言葉なんてきっと何処にもないんだ。


共感するたび言葉を失って、これじゃあ何にも言えないや。

僕の手に残ったのは聞こえのいい、綺麗な言の葉だけ。これじゃあ何にも伝えられないや。

誰かの声を聞くたび何にもわからなくなって、それじゃあ僕は何を礎に生きればいい?


僕の怒りも悲しみも君を傷つけるのなら、その感情全てを捨ててしまおうか。

誰も傷つけずに生きていく事なんて、できやしないのに。だってほら、僕の手はもう傷だらけだ。

誰かの悪意が僕の心を切り裂いて、流れる雫が止まらなくなった。

ほら、今またこぼれおちた言葉が一つ。僕の心を斬りつけていくんだ。


確かなものは何もなくて、それじゃあ、僕は何を信じたらいい?

頼りにできるものなんて何処にもなくて、進む道がわからなくなった。

何もわからない世界で、君だけは確かな光だと思っていたのに。いつのまにか、君の声も聞こえなくなった。

光があるかもわからなくて、ここが闇かもわからなくて、さあ、僕は何処に行ける?


人は変わっていくものだって言うけれど、今日の僕は昨日の僕より良くなれているのかな。

辛いって声を押し殺して、怖いって声を踏み潰して、どうやら僕は此処に立ってる。

飲み込んだ言葉は消えてなくなって、残るのは虚だけ。僕の言葉なんて何処にもないや。


祈ったって、願ったって、叶わない事は知っているんだ。

君の手を取りたいよ。君の手が取れないよ。

君に会いたいなんて言えないや。


涙はもうとっくに枯れ果てた。

傷ついていない振りはもうやめにしよう。ほら、僕の両手はこんなにも傷だらけだ。

耳を塞いで、そこまで沈んでしまえば、楽になれるのかなあ。

いっそ全部諦めて、僕も消してしまえれば楽だったのに。


もうちょっとだけ、此処にいたいなんてわがまま、君は許してくれますか?





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