最初より前のハナシ
記憶をなくした少年と冒険者になりたい少女の壮大な物語
が始まる前のお話
どこまでも真っ白な空間の中に、歯車がいくつも浮いていた。
色も大きさもさまざまな歯車は、それぞれの速度で回り続けている。
無限に広がっていそうな空間を二人の男性が落ちて行く。一人は赤いマントを羽織った男、もう一人は大きな鞄を持った若者だ。
両者とも傷を負い、憔悴した顔をしている。額からは汗が滲んでいた。
やがて二人を追うように一人の男が落ちてきた。先行する二人を睨むその表情は怒りと焦りで満ちている。二人に手を伸ばしながら吠える。
「貴様らに未来は壊させん!!」
「ノワルか!?」
ノワルと呼ばれた男の掌から赤い光球が飛び出した。光球はうねりながら二人に飛んで行く。
命中する刹那
マントの男が壁になるように前に出た。
「うぐぁっ!」
光球を受けた男は若者とは別の方向に吹き飛んで行く。
「先輩!!」
若者が悲鳴のような声をあげた。
マントの男は若者に向き直り叫ぶ。
「お前だけでも行け!!!」
俄に空間にヒビが入り始めた。
「でも…っ」
徐々にヒビの入った壁が剥がれ始める。剥がれた痕には真黒な空間が見える。
「必ず未来を変えるんだ…… ディス!!」
やがて黒い空間に包まれ
ディスは意識を失った………