第14話:まさかの目撃者
どうも、格孤です。
ゆりちゃんたちはただいま絶賛昼休みでわいわい(?)中です。
やっと若干物語に関係してきました。
早速本編へどうぞです。
椅子を持ってきた二人は、一つの私の机に所狭しと各々の弁当を広げ、黙々と食べ始めた。
「んん~いや、それにしても、アレだねっ!かんのさん!」
いや、黙々とではないか。
「え?なんですか?」
お茶を飲みつつ、聞き返す。
「かんのさん、背超ちっちゃいね!」
「ふぶっ…!う…」
予想外の発言に、飲んでいたお茶を吹き出す。
いきなり…気にしてるところをついてきたな足立さん!
私のお茶返せ!
「大丈夫?」
美代さんが、ハンカチを差し出してきた。
「あ、ありがとうございます…」
「あははははっ!おもしろい!いまの吹き出し方漫画みたい!おもしろかったよ!あはははは!」
「伊空…まったく、あなたって…」
美代さんが、飽きれたような顔でつぶやく。
ところで、足立さんの名前は伊空っていうんだね。
珍しい名前だ…。
「あははは!ごめん、ごめんよっ!…っ!」
…といいつつも、足立さんはなおもお腹を抱えて笑い続けている。
…とりあえず、反論しとこう。
「そ、そんなに笑うほどちっちゃくないですよね?」
きょとん。
一秒間を置いて、
「ははははははは!」
再び笑いだした。
「ちっちゃいよ!いや、ほんと!私がいままでみてきた高校生の中で、一番ちっちゃいよ!」
「そ、そんなっ…?」
それはちょっとおおげさすぎじゃなかろうか!
「だって、ほかにも私ぐらいの身長の子なんていっぱい…!」
「いないよ!いない!高校生だよ?あははは!だって今ゆりちゃん身長何センチぐらいよ?」
「い、言いません!」
「ええ~なんで~?えっと、私が今大体155とかそんぐらいで~、ゆりちゃんが私よりも20センチぐらいちっちゃいから~…大体130?ちっちゃいっ!きゃあかわいいっ!」
ひ、ひゃくさんじゅう?
「そ、そんなにちいさくありませんよっ!」
「ちっちゃちっちゃ!あははは!ゆりちゃんおもしろいね!」
そっちが勝手におもしろがってるだけだろ…!
っていうのは言わずに伏せておこう。
「か、からかわないでください!それに、140はありますから!…多分…」
いや、どうだろうか…?
いやっ!あるはずだ。
140なかったら、さすがに小学生中学生ぐらいだし…
すると足立さんはなにを思ったか、突然私のほっぺたをつねって、きゅーっと引っ張り始めた。
「はゃっ…ひゃだちさんっ!?」
「あはははっ!ふにふにー!小学生みたい!ははは!しかも、なんでだろうね!このちっちゃいお顔の異常な可憐さ!」
「ふあふあふや…」
一通り私のほっぺをこねこね撫で回したあと、何を思ったか!いきなり抱きついてきた!
「わゃっ…!って危なっ!」
抱きついた反動で机にぶつかったため、上においてあった水筒が倒れそうにグラグラしていた。
が間一髪で抱きつかれたまま手をのばしてキャッチ。
「もお~かわいすぎるよ~ゆりちゃん!ぎゅーってしていい?」
「い…いや、もうされてるんですけど…」
ふわっ…と、いいにおいがする。
今私に抱きついてる足立さんも、それなりに整った顔立ちをしているのだから、けっこうもててるのではないだろうか?
かわいい子にかわいいって言われると、なんか、なんだろう。複雑な気持ちになるよ。
「もう、伊空!そろそろやめなさい!」
「はは、ごめんごめん、かわいすぎて、つい!」
美代さんの一喝で、ぱっ、と、足立さんは私から離れる。
た、たすかった、ありがとう美代さん…
「ふう…」
全く、つい、じゃないよ…
改めて、再びお茶を飲み始める。
まったく…元気のいい子だなぁ…
「あ、そういえば、ねえねえふたりとも、」
おっと、早いな。
もう次の話か。
話題が尽きない子だ。
「先輩なんだけど、2年生の相馬先輩って知ってる?苗字だけで名前までは知らないんだけどさ!」
「ふぶほっ!?」
「菅野さん!?」
…こ、これこそ予想の斜め上、お茶を吹き出す以外のどんなリアクションがとれようか。
この子は、私にお茶を飲ませてはくれないのか?
…まさか、ここでいきなり先輩の名前があがるなんて…
完全に油断してたよ。
さっきよりも盛大に吹き出したせいか、美代さんがまた別のハンカチを差し出してくる。
って何枚常備してるんだこの娘…?
「だ、大丈夫?菅野さん…わ、私は知らないけど…誰?菅野さん知ってるの?知り合い?」
「あ、ありがとう…えっと、知り合いというか…」
命の恩人だったりして。
「え?なになに、ゆりちゃん知ってんの?」
「え、えっと…」
二人が、というか主に足立さんの方が、詰め寄って聞いてくる。
これは…多分言わないほうがいいよね。
というか、言っても無駄な気がするし…
どうせ信じてもらえやしない。
まあそれはそうだ。
宇宙人だもの。
当事者の被害者である私でさえ最初は信じられなかったんだから…ってか、今も信じてないけど。
「なになに?どうしたの、ゆりちゃん?知ってるの?」
何秒か考えを巡らせていた私を見て、足立さんが痺れを切らして聞いてくる。
「あ、え?いえ、しらないです!なにも知りません!誰でしょうか、その人?」
「な、なんだなんだ?あからさまに怪しいけど…?」
「私も、知らないわ。男の人?誰?有名なの?」
「男だよ!有名有名!二人ともやっぱり知らないんだ!」
「やっぱりって?」
「だって二人ともそういうに興味なさそうな顔してるもの!なんちって」
ぬ…
失礼な。
なんだそれ、いささか不愉快だな!
まあ興味ないけど
「人は見かけで判断しちゃダメなのよ~?」
「そっかそっか。じゃあ美代ちゃんは興味あるのね!」
「いいえ?あまりそういうのは」
笑顔でさらっと言い放った。
「なんだい…やっぱないんじゃん…えーっと、あのね!相馬先輩っていうのはね!」
お、おいちょっと
なんだ?私には聞かないのか?
つまり私は聞かなくても、興味ないだろうってことがわかるような顔でもしてるのか?
悔しいような嬉しいような…
そのあとの、身振り手振り感想交えた足立さんの熱演説は、諸事情により割愛させてもらいたい。
とりあえず、要点をまとめていうとこうだ。
足立さんの話によると、先輩はこの学校ではかなり有名らしい。
その一つの理由として、先輩は昨年この学校に入学してきたときから、生徒会に入って、いろいろと生徒のために頑張っているらしい。
なにか行事があるたび、司会を受け持って、場を盛り上げたりしているため、生徒からはもちろん、先生方からも人気があるようだ。
先生方から気に入られている理由がもう一つある。
それが、理由の二つ目…。
なんといってもその才能だ。
足立さんの話によれば、どうやら完璧にできない教科はないらしい。
勉強ができるのは言わずもがな、
運動をさせたらトップの成績は間違いなし。
絵を描かせたら先生も驚く作品を作り上げ、
歌を歌わせれば超一流、楽器の扱いも教えればすぐにマスターするらしい。
流石にそれは言い過ぎだとは思うが…
理由の三つ目は、その面倒見のよさと愛想の良さだ。
後輩の面倒見のよさは度を超えているらしい。
後輩だけじゃなく、誰にとっても同じなようだが、頼まれたことは必ず最期までやり通す。
しかも、完璧完全、むしろやる必要もなかったようなおせっかいじみたことまでやってしまうらしい。
それで頼みごとをした方が大助かりになっていることは間違いがないから、おせっかいとも言えないようだ…。
それって、人もいいよな…。
愛想がいいのは、昨日身をもって体験したから、わかる。
なんといっても理由の四つ目、その完璧な容姿だ。
女子からみても、悔しいくらいにかっこ良く、
悔しいくらいに美しく、
悔しいくらいに素敵なのだ。
それも、昨日身をもって体験した。
ニコニコしてて、いかにも愛想良さそうだった顔から、突然きりりとシリアスな顔つきになったり、どきっとするような甘い表情に変わったりするのだ。
男子にそこまで興味ない私から見てもそうだったのだから、普通の女の子にとってはきっとたまらないんだろう。
…と、まあ、これらが才色兼備で文武両道で、他にも完璧超人を表す言葉があったらそれらすべて総占めにしてしまいそうなそんな完璧な先輩の話だったが…
さ、さすがにここまですごいか…?
そんな訳ないじゃん…
そんな完璧超人なんて現実にはいないって…。
「んね!すごいでしょ!」
「た、確かにすごいとは思いますけど…」
「それ本当なの?伊空の妄想が混じっちゃったんじゃなくて?」
「ち、違うよ~!まあ、確かに私も人から聞いた話だから、本当かどうかは知らないけど…」
「…でも、それが全部本当のことなら、とんでもなくすごい先輩なんじゃない?」
「でしょ!もし本当だったら、まさに漫画か小説の世界のキャラみたいだよね!まさに欠点がないっていうか…!」
欠点がない?
いや…あると思うよ…
みんなしらないんだ…
先輩学校じゃ隠してるんだな?
あの腹黒さを…
お、思い出しただけで鳥肌が…
「ああーかっこよかったわ~」
ん、過去形?
「え?よかったって…会ったことあるんですか?」
「それ!そうそう、聞いてくれる?それが話したかったの!いい質問です~!」
「はあ…」
「なに、会ったことあるの?」
「うん!あのね!昨日だったかなあ?学校が終わってすぐに、駅まで自転車を取りに歩いてたんだ!」
昨日?
ああ…それじゃあ、もしかして私と同じかなあ…
もしかして、私昨日足立さん見たかな…?
「そしたら、突然後ろからものすごいスピードで私の横を走り去って行った人がいたの!」
「…それが、その相馬先輩だったの?」
「そう!もう、突風かと思ったよ、それほど本当にすごい早さだったんだ!」
「あら、突風なんて難しい言葉、よく知ってたわね…。」
「え?」
いや美代さん…そんなに本気で驚いたみたいな表情で言われても…
足立さんってそんなにバカなの?
「しかも驚いたのは、そんなすごいスピードなのに、先輩は全く汗かいてない感じで、澄ました顔で、綺麗な走り方で、だだだ~っ!って感じよりも、スーッて!」
足立さんは、全く気にしてないようだ…
…足立さん…
「それで?もしかして、走り方が綺麗でかっこ良かった、で終わりじゃないよね?」
「え、違うよ!こっからだよ!えっとね、見てたらすぐ曲がり角曲がっちゃってね、そのあとすぐはなにがあったかわかんないんだけど、すぐに追いかけて見てみたら、なんと!」
「なんと…?」
「聞いて驚かないでよ!あのね…」
数秒溜め、
「道路脇の歩道は戦争でもあったかのように潰れてベキベキになっていて、その前で悠然と先輩が佇んでいたの!しかも、その手には子供が抱っこされていて…」
「…え?」
何だその図?
さすがにそれを信じろというのには無理が…
ちらっと横を見ると、美代さんも同じく「え?」という顔をしている。
「それでね!」
そんな私たち二人なんて意にも介さず、話を続ける。
「道路の真ん中で仁王立ちして、子供をお姫様抱っこで抱えていて、肩で息をして、周りを見回していたの。まるで、見えない何かを目で追うように。」
「み、見えない何か…?」
いやいや…そこまできちゃったら、さすがに足立さんの妄想もしくは夢…
あれ?待って…
昨日?
学校が終わってすぐ…
駅前の自転車置き場に向かう途中の道で…?
「しかも、驚くべきことにね!先輩がいきなり上を向いたと思ったら、さっと後ろに飛びのいたの!その瞬間、先輩が今までいたところに、見えない何か重いものが落ちてきたように、ドーンって!大きい音がして、道路がへこんだの!なんだと思う?これ。」
「…………」
私の脳裏には、昨日の先輩との会話がエンドレスリピートしていた。
『宇宙生物っていうのは、僕たちが普段暮らしている世界には視覚化されていないんだ。それを見る事ができる才能を持った人は、世界中を見渡しても少ししかいないらしい…』
「よくわからないけど、それだけ聞くと、その先輩と見えない何かとの間に、漫画みたいな戦闘みたいなのがあったみたいね…?」
「でしょ!私も、それをみたとき思ったね!先輩は、実は何か超能力を持っていて、日々世界を守るために、悪の組織と戦っているんだってね!」
「…まあそれが演技だったら、ちょっとイタい人だけどね。でもすごいね…それは…」
「………っ…」
それは…
そのシーンは…まさか…
「ん?どうしたの、ゆりちゃん?そんなに驚いた?あ、これ嘘じゃないからね!本当に昨日あったんだからね!」
「…あ……」
道路脇の歩道が潰れていて…
見えない何かと戦っているように先輩が…子供を抱えて…
子供…
「え、その、先輩が抱えていた子供っていうのは…?どんな…」
「ああ、あの子ね!結構背ちっちゃかったから、服装は先輩に隠れてて見えなかったけど、多分小中学生ぐらいじゃないかな…多分、襲われてたその子を、先輩が間一髪のところを助けたのよ!ああ~かっこい~!」
「背が…ちいさかった?のですか?」
「え?うん…まさに、ゆりちゃんぐらいの…って、ずいぶんその子にこだわるんだね?まさか、あれゆりちゃんだったり?」
「え?いや、そんなまさか!」
軽く笑い飛ばした。
結構見事な嘘つきっぷりだったと思う。
「そっか。そりゃそうだよねえ~いやあ~すごかったなあ…なんか、映画の世界に入っちゃったみたいだった。先輩かっこ良かったなあ…あんなエキサイティングな先輩学校じゃ見られないよね~!いやあ得した得した!」
「ははは…」
レベルマックスの愛想笑いをふりとばしながら、私の頭にはある答えが浮かんでいた。
なんて、言わなくたってわかるだろうけどね。
昨日足立さんが目撃したその子供…
まったく、思い当たる節、とはまさに言い得て妙だ。
それがまさか私だったとはね。
第14話お読みくださりありがとうございます。
え~つまり、ゆりちゃんは小さいということですね。
ちなみに身長はひゃくs「やめてえええーーっ!!!」ぐほぁっ
………??
い、今ゆりちゃんに殴られたような気が…
気、気のせいかしら…
あ、と、とりあえず、次回は「流れる旋律」です。
では、格孤でしたっ!