第10話:おなか真っ黒
どうも、格孤です。
一話一話が短いので、もうあっというまに10話目ですね。
しかしどうも最近、学校が始まったせいか、忙しくて書く時間が減って…
今回は、もうバリバリ作者の願望です。
ラブコメというより、無理矢理の超展開すぎたかもしれません…
すみません。違和感がなくなるように努力はしたんですが…
…で、では、本編をどうぞ!
今日の私が…いつも通りの私だったなら、こんなイベントなんぞ無表情でかわしていたことだろう。
「やめてください…一体なんですかいきなり。」とかなんとか言って。
まぁそれは、今まで小さい頃から何回か、変態共に同じようなことをされてきたことがあるからなんだけど…
…ところがどうして、目の前にいるのは下心丸出しの気持ち悪い変態共ではなく、それなりに顔の整った…いや、正直に言ってしまえばかなりモテるだろうというぐらいの美男子なのだ。
しかも、何を隠そう『男の人の怖さ』というものを誰よりも知っているだろうと自負しているこの私でさえも、
「…あれ…これ、メガネかけてもらったら結構タイプかも…?」
とかちらっとでも思ってしまうぐらいのさわやかな好青年なのである。
…まぁつまり、つまり、だ。私が言いたいのは、
…私は今、私でもびっくりなほど動揺している。と、いうことだ。
「ぁ…えぇ…?…ぇっと…」
こ、言葉がうまく出てこない…
…なんだろうこれ、なんで私、こんなにドキドキしてるんだ?
しかも顔がとんでもなく熱いっ…多分、耳まで真っ赤に、っていうのはこういうことをいうのだろう。
い、いつもなら平気なのにっ!
「…………」
先輩は全く無表情な様子だ。
さっきまでずっと笑顔だったのに、なんか…真剣な顔になってる。
ただ私の顔を見つめてくるだけだ。
身長差が多分30cm以上あるので、私を見下ろすという感じになっている。
私はというと、逆に見上げる形でなんとなくちらっと上に顔を向ける…
「ぅひゃぁっ!」
と、すぐそこに先輩の顔があったので、びっくりしてすぐにばっと下に顔を戻す。
先輩は、まるで私に覆いかぶさるように上をふさいでいる…
……相馬先輩って…近くで見てもやっぱり…かっこい…
って!危な!こ…これはまずい!
ちょ、ちょ、ちょっと待って、状況を整理しようっ!
まず私が今おかれてる状況。
ドアに寄りかかったまま、先輩に捕獲されて…
て、え?これって、普通に危ないんじゃないか?
…はたから見たら、先輩に強引に襲われそうになってる…っみたいな…
しかもここ、先輩の部屋だし、一人暮らしらしいし…
………なぜか閉じ込められてるし……。
まぁ確かにそれは、よく私に近づいてくる変態たちと比べたら、こっちの方が断然悪い気しないし…
…ていうか……むしろ……ここで抵抗しなければ、こんなにかっこいい人と……できるかも…なんて…
まぁ、それはそれで…嬉し……い…?
って!
「ぁっ、やっ、ちょ、顔、近…っっ!」
いろいろ考えてたら、突然。
ずっとなにも喋らずに微動だにもしなかった先輩が、ゆっくりと顔を近づけてきた。
とっさに両の手のひらで先輩の体を押し返そうとするが、体格さがありすぎる、ビクともせず顔はどんどん近づいてくる。
「え、ちょ…ぁっ…!?」
あ、あぁぁぁ、ダメ!やっぱダメ!一体なにを考えてたの私は?かっこいいから許すなんて、どんだけ軽い女なの?
なにが、『それはそれで嬉しい』だよ!
もうわたしの口と先輩の口との距離は、数cmほどしかない。顔に先輩の吐息を感じる。
「あ、先輩!ちょっと…ま、待ってくだ…さ…」
このままいくと…キ…
「~~~~~~ッ!!」
こうなったらもうダメだ。冷静にものを考えるなんてことはできやしない。
目が回り、呼吸が乱れる。
だんだん、足の力が抜けていく。
緊張からか、興奮からか、恐怖からか?体が小刻みに震える。
頭からは心なしか煙が出てきたような気が…
「わ、わ、ぁ、ぃゃ…っ!ダメ、ダメです!ちょっ…ちょっと…まってっ…って……!」
「…………」
そう言って止まるわけがない。先輩はなにも言わず、ただゆっくりと顔を近づけてくる。
え、一体なんなの!?これは!
私なんか悪いこと言ったっけ?
なんでいきなりこんなことになったの?
なんで!?さっきまで笑顔で受け答えしてくれてたのに…!
いや今もうっすら笑ってるけども、これはさっきのとは違ってなんか…黒いし…!
なんで?なんで?なんで…
「…ぁ………」
も…もぉ…ダメだ…ぁ…
私の口と先輩の口は、もうほとんどくっついてるんじゃないかってぐらい近く…
も、もう諦めるしか…
諦めて、ぎゅっと目を瞑る。
「…………!」
…………
…………
…………?
あ…れ…?まだ…?いつになったら…
「ほら、それだよ。性欲。」
「っひゃぃっ!?」
突然目の前で声を出されて、飛び上がるほど驚いて目を開けると、目の前にはやらしい笑顔でニヤニヤと笑っている先輩の顔があった。
「わ、わぁっ近っ!は、離れてっ…くださいっ!」
「離れてって言われても…まずゆりちゃんがこの手を離してくれないことにはどうにも…」
「…私…手……?」
言われたので確かめてみる。と…
「…わっ、わっ、わぁーっ!」
急いで手を離す。
なんと、両手で先輩の体を押していたはずなのに、いつのまにか先輩の服をがっちりとつかんでいるではないか!
…これではまるで、先輩を拒んでたのではなくてーー…
「…僕のキスを受け入れてくれてたみたいだねぇ…?ありがとう…」
「~~~っ!」
見ると先輩は、クスクスと笑っていた。
急いで先輩から離れる。
む、無意識なのか?無意識のうちに、私は先輩を受け入れちゃってたのか?
「…ッ…なんなんですか、いったい!いきなりどういうつもりですかっ!」
恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうになりながら、必死に叫んだ。
「え、だって、欲が無いだなんて言うんだもの。確かめてみただけだよ。でも残念ながらどうやら、初対面の僕にいきなりキスを迫られたのにかかわらず、無意識のうちに受け入れちゃうくらいの強~い性欲があったみたいだよ。」
「………!」
せ、せ、性欲ぅー?な、なんだそれ…!
っていうか、『確かめてみただけ』っていうことは、演技だったってことか!
こ、こ…この…!
イラつきと恥ずかしさと、若干の残念さでいっぱいになりながら、精一杯腕を振り回して先輩を叩いた。
「むきいぃーっ!!」
「いて、いてて、あはは。あの宇宙生物はその強い性欲に惹かれてったんだね~。」
うっ…
そ…そうか…なるほど…
先ほどまでの、自分の考えていたバカなことを思い出して納得する。
もしかして、ほんとに…
いやぁぁぁぁ!
強い性欲だなんて…!
先輩に指摘されて…恥ずかしいなんてもんじゃない!
「せっ…先輩のバカァァーー!」
先輩を叩くのを止めて、思いっきりピンと下に手を伸ばしながら叫ぶ。
…ま、まさか…ほんとに私にそんな強い欲があったのか…?
「でもまぁこれで、全ての疑問が解決したでしょ?だからもう、僕の頼みを断る理由は無いはずだよね?」
「…え?」
な、なんだって?
その話をいきなりぶり返すのか?
「だから、もう一度言うよ?僕の仕事を手伝ってくれないかな?」
「………」
こ、この人…
あんなことをしておいて、よくもしれっとそんなことを…!
全て、これをいうために、私を説得させるために…!
さっきの演技といい、この人は…!
「ん?どうしたの?」
見た目はさわやかな青年って感じだけど…
「だ…誰が…っ」
「?」
実はとってもおなか真っ黒な人だったんだっ!
「誰が…先輩なんかの手伝いなんかするもんですかーっ!」
第10話目、お読みくださりありがとうございます。
先輩の腹黒さに驚愕のゆりさんでした。
次回、一応普通の日常生活に戻ります。
それでは。格孤でした。