夜の冬
先ほどの場所から離れ、言葉に言い表せられない程に、どんよりとした気持ちで歩き始める。
まるで太陽の様に、歩みを進める度に暗くなっていく。
「【冬の下】って、日没みたい」静かに話しかける。
「そうなんだよ。歩みを進める度に暗くなっていくの」
足元が明るいわけではない。奥に視線を向けると街灯のない本当の闇夜。
「どうやって進むの?」
「こっち来て」
薄暗くなってきたタイミングで樹の幹に寄り添ってもらうために右手で触る。
今度はあたたかい
夏の下では、ひんやりしていたのに不思議だ…
「こうやって行くといいんだよ。アッティスは、道しるべにもなってくれる」
2人は幹をなぞりながらしばらく進む。
「ここでも果物が実るんだよね?えっと…みかんだっけ?」
「そうだよ」ぼんやりしていく後ろ姿が答える。
「陽が当たらなくてどうやって育つの?」
「夜明けの場所になってるの。夜明けの微量の光を吸収して育ってるの。そっちを先に行こっか」
言葉の最後は引っかかったが、今はそれよりも徐々に暗くなっていく不安からエアリスについていくことが重要だと感じ、深く考えずに後をついて行く事にした。
しばらく進む
「明るくなってきたね」
ほんとだ
エアリスの背中が見え始めた。
エアリスは立ち止まると、上を見上げて手を伸ばす。
「はい」そのまま手をこちらに。
手にはみかん。
「ありがとう」
みかんを受け取るとエアリスに誘われて、世界樹の根に座る。
2人でみかんの皮を剥いて食べ始める。
「美味しい」
世界樹になる果物は、どれも美味しい果物。
時を忘れる程の時間を過ごしているのに、あっという間に感じた。
2人で居るのにまるで、独りになったみたいに静かだった。
「行こっか。ちょっと戻るよ」
エアリスからそっと手を引っ張られ、優しく立ち上がる。
僕は"妄想の旅"が終わろうとしていると、我に返り始めた。
…2人の足音だけが会話していた。
徐々にまた暗闇に向かう。
「ほら、見上げて。夜の星だよ」
唐突な声だけのエアリスに誘われて、上を見上げる。
……うわぁ……本当に綺麗…
世界樹で唯一の枝葉の隙間から、本物の星空が見える。
望遠鏡で天体観測をしてるみたいだ
どんな表現がいいのか分かんない
でも……写真で見るような、散りばめられた夜の星空
はぁはぁ
目には見えないが白い息が吐き出ている気がする。
その吐き出された呼吸は周りの空気に雪のように優しく溶け込む。
刹那
現実の薄汚くも儚く、優しく、心あるやり取りを思い出す。
……あぁ僕も結局同じだ
夜の空を見上げながら、自責の念に駆られ目を瞑る。
涙と流れ星が流れる。
次回(最終回)は、【2026年1月6日 1時00分】 に投稿いたします。
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