午前の夏
次回は、【2026年1月5日 23時30分】 に投稿いたします。
最後までお読み頂き、本当にありがとうございます。
まだまだ魅力に欠けていると思っております。
読者様の正直な、お気持ちで結構です。
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しばらく歩ていると気温が高くなった気がした。
「なんか暑い気がする」
「だって【夏の下】だからね。でも安心して!涼めるところがあるから」
エアリスが手招きされ、幹のそばに近寄る。
あ〜……涼しい……
両手で幹を抱き締めるエアリス。
既に幹を抱き締めたエアリスの動作の真似をする。
「なにこれ冷たい」
「そうなんだよ〜空気の通り道がこの部分にはあるらしいの」
不思議な場所だ…
氷が近くにある時の程よくも少し強い冷たさ。
しばらく休憩。
「でもここ以外の幹は、こうではないの?」
「【秋の下】【冬の下】は暖かいの」
「へ〜逆になるんだ…」驚きが隠せない。
……はぁ気持ちいい
夏のような暑さは、大樹の不思議な力で体の熱を吸い取られていく心地いい感覚。
しばらく目を瞑り涼しさを満喫する。
胸の奥に溜まっていた熱が、ゆっくりと抜けていくようだった。
今、心臓の音と大樹が何か話しかけるようにギーギーと深くきしむ音だけしか聞こえない。
無駄な音が無いその静けさに身を委ねていると、現実の記憶が目を覚ます。
誰かに謝ることも、誰かに怒られることも、見下し合うこともないこの世界に来たがこの時、我に返る。
現実で得られる静けさの代わりに妄想の世界の静けさを手に取る。
誰かに謝ることも、誰かに怒られることも、見下し合うこともない。
挙げ句の果てに、傷付いた自分すら受け入れてくれる世界。
同時に己の不甲斐なさも押し寄せて来た。
僕は、無意識に人を見下していたのか……?
抱き締めきれない大きな体におでこをつけ悩み始める。
「はい!」
大きくも優しい声に驚いて右を見つめる。
エアリスが手を差し出して満面の笑顔で立っていた。
その手には、一切れのメロン。
「……ありがと」
悩みを含んだまま感謝の言葉をエアリスに向けてしまった。
「エア」
「グレイピアで生きているとね辛い事があるの。私たちの種族もあなたたちと同じような思考を持っている」
エアリスは僕の話しかける言葉を見透かしたように話を始めた。
「そりゃ生まれた場所は違うし、階級も違うけどそれを無くせば、全く同じ種族なのに国境を超えれば罵り合ってみたり、殺し合ったりしている。挙句の果てに自分の発言に責任すら取ろうともしないの」
エアリスは続けた。
「でも私思うの。誰かが誰かがって全員が思ったら時代なんか進まないし、一生そのままだと思う。だからその言葉を出す前に「まずは自分から」だと思うの」
……そうか
心の壁にある小さな小さな小石が体の奥底に落ちていく感覚。
自分の中にあった感情は、海で遭難していて『助けてほしい』と叫んでいる自分に、新しい思考や文化と言う名の浮き輪を投げてくれる人の浮き輪を『これじゃない』と見捨てて叫び続けているようなことなのかなと一部解釈した。
メロンを一口かじる。
自分の体の中で感じる苦味とは裏腹に口の中を甘やかしてくれた。
美味しい……
エアリスも同じようにメロンをかじる。「ん~!美味しい~!」
メロンを食べ終わるまで休憩をした。
食べ終わると残りのメロンは、ゆっくりと僕の悩みのように灰色になっていった。
そして歩みを進めた。




