愛の花咲く麦畑
【ファーム(農業)】と呪文を唱えながら【ホール(穴掘り)】と二重起動で魔法を展開させる。
すると、目の前にフカフカに耕かされた土地が広がり、近くで見ていた農業の役割を持つ獣人達が「わっ」と歓声を上げた。
獣人達が歓喜した様子で「アナホルト様、私達の脳内に『最適な役割の仕事に従事したことにより、30パーセントのバフを加える』」とのアナウンスがありました、と報告してきた。
『なるほど、【ロール(役割)】にはこんな効果もあるのか』と喜び「よし、マキバ頼むぞ」とマキバに馬用の鋤を取り付けて、畝を作る。
獣人達がそこに芋や根菜を植え、広く耕した畑には麦と小麦を撒いていく。
『うおー、なんだか力が漲るぜ〜』『これが130パーセントのパワーか〜』『俺の…俺の左手が疼くぜ〜』と獣人達が歓喜の声をあげる。
その声に混じり、『鍬を持つ手が震えるぜ〜』『鎌を持つ手も震えるわ〜』と麦畑の方からどこかで聴いたようなフレーズまで飛び出してきた。
私が空に向かって【ウォーター放る】と水の球を打ち上げると、虹がかかり辺り一面に水が撒かれ…私達はずぶ濡れになりながら新しい畑の完成を祝った。
その時、バーモント村長が「アナホルト様〜」と叫びながら駆けつけてきた。
「魔の森から他の集落の獣人が逃げて来ました」と慌てて叫び「間も無く門に辿り着きます」と報告してくる。
私は村長と門の前に急いで駆けつけポール(柱)に登ると、傷だらけでボロボロの獣人達が門の前に立っていた。
傷だらけの獣人が「オーガに追われている。中に入れてくれ〜」と門を叩く。
それを聞いて魔の森の方を見ると、体長が3m程もある大鬼が棍棒を振り回しながらこちらに向かっていた。
私は「拙い、あの大きさなら門を乗り越えてくるかも?」と思い、「私が外に出るので、外にいる獣人達を中に入れて門を閉めてください。それと、戦士と剣士に狩人の役割の獣人を待機させておいて」と村長に告げ、2本の槍を手に門の前に立つ。
すると「お兄ちゃん、行っちゃダメ!!」とリナが私の足に縋り付いてきた。
「大丈夫だからね。危ないからリナは私の小屋に隠れていて」とリナの頭を撫でて門を開けた。
私は迫り来るオーガを睨み、十分に引き付けて【ホール(穴掘り)】と足元に落とし穴を開ける。
するとオーガは横っ飛びに身を躱し、私を睨みつけた。
『オークなら間違いなく穴に落ちたのに。オークより遥かにデカいのに、動きが俊敏とは…』と内心で舌を巻く。
再びオーガを睨みつけ、次の手を考えるが良い手が思い浮かばない。
『何とかオーガの足を止める事が出来たら…』と油断なく手に持つ槍を見ながら考えていると「「「アナホルト様を助けろ〜」」」と壁のポール(柱)の上から戦士に剣士と狩人の獣人達がオーガに向かい矢を放つ。
だが、矢はオーガの棍棒と筋肉の鎧に阻まれダメージを与えられずにいた。
するとその時『ピコン』と通知音が響き、『住民が一つになったことで派生魔法【オール(全て)】が解放されます。また、住民への想いにより派生魔法【エール(応援)】が解放されます』とアナウンスが流れる。
私は獣人の戦士達に【オール(全て)】を唱え、【エール(応援)】を重ねて唱える。
『ピコン』と通知音が響き、私と獣人達に『【エール(応援)】の効果により、対象者に20分間50パーセントのバフが掛かります』とアナウンスが流れる。
獣人の戦士達は適正な役割による30パーセントのバブに50パーセントのバフが上乗せされ、普段の2倍近いパワーを得る。
「くらえ〜」と再び獣人達がオーガに矢を放つと、今度は矢がオーガに深く刺さり、オーガの足が止まった。
『今だ!!』と手に持った槍に【ロール(回転)】を掛け、「【スピア放る】」と回転する槍をオーガの心臓に向けて放りつける。
オーガの胸に大きな穴が空き、そのままオーガが倒れ二度と動くことはなかった。
『ピコン、上級魔物を討伐したことにより、派生魔法【ホーリー(聖魔法)】が解放されます』
私が集落の広場に戻ると、傷ついた獣人達がバーモント村長の指揮で食事が振舞われていた。
私は「怪我をしている獣人の方はこちらに集まってください」と獣人を集める。
「怪我した人を対象に【オール(全て)】でグループ化して、【ホーリー(聖魔法)】で対象者を治療する」と魔法を唱えると集まった獣人の怪我が治り、皆んなが私に手を合わせて拝み始めた。
何とか拝むのをやめさせて、その日は広場に【ホール(集会所)】で仮設の小屋と【ウール(羊毛:用途)】で寝具を出し、疲れた身体を休めてもらうことにした。
その横では、戦士と剣士、狩人の役割の獣人達が【エール(応援)】のバフによる筋肉痛にのたうち回っている。
『なるほど。急激なパワーアップにはそれなりの反動が来るか…【エール(応援)】のバフは切り札にすべきだな』と今日の戦いを振り返る。
オーガとの戦いを終えた私は、クタクタになった身体を辛うじて動かして小屋に帰り着く。
すると中からリナが突進して来た。
「お兄ちゃん、無事で良かった〜」と泣きじゃくるリナをいつものように寝かしつけ…いつしか私も夢の中に落ちていった。
※現時点のギフト
ホール(穴掘り:空間含む)レベル3
(放る)
(集会所)レベル2
※派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
ウォール(壁)
ウール(羊毛:用途)
ポール(柱)
ロール(回転)
(役割)
ファーム(農業)
オール(全て)
エール(応援)
ホーリー(聖魔法)
※レベル特典
二重起動




