とりあえず回してみたら威力は出るよね
「オークが攻めてきたぞ〜」との声が、まだ夜が開け切らぬ集落に響き渡る。
それは、南側の壁を支える【ポール(柱)】の上で見張りをする獣人の声だった。
その声に飛び起きた私は、横で眠るリナを起こさぬように、まだ暗い集落を南に走った。
南側の壁に着いた私は、【ポール(柱)】の上に登り魔の森からこちらに向かう5匹のオークを確認した。
獣人達も【ポール(柱)】に登り、手に持つ弓に矢をつがえながらオークを見つめる。
「慌てるなよ、引き付けて弓を放つように」とバーモント村長の声が響く。
見慣れぬ壁に囲まれた集落の様子に戸惑いながら、オークが近づいてくる。
「放て〜!!」とバーモントの声が響き、オークに向けて一斉に矢が飛ぶ。
私も「【ファイヤー放る】」と炎の球を投げ付けるが、オークの分厚い脂肪に阻まれ少しのダメージしか与えることが出来ない。
逆に怒り狂ったオークが壁に取り付き、その拳で壁を叩く。
しかし、【ホールド(保持)】の魔法がかけられた壁はびくともせず、太陽が登り始めた頃オークは魔の森に帰って行った。
私はほっとしながらも、「何とか撃退出来たが…火力不足が問題だな」とオークが去って行った魔の森を見つめた。
無事にオークを撃退することに成功した獣人達は「アナホルト様バンザ〜イ」などと騒ぎ、抱き合っていた。
興奮が冷めぬ獣人達に、「朝ごはんが出来ましたよ〜」と優しい声が広場からかけられた。
その声に惹かれた私は、獣人達と一緒に朝ごはんを食べた後、改めて集落の住民達に挨拶をする。
「獣人の皆さん。改めて私は『アナホルト』と言います。辺境伯から、ここハセースルの地を統治するように派遣されてきました。皆さんと一緒に住みやすい環境を作っていくので、協力をお願いします」と挨拶すると、「アナホルト様こちらこそよろしく」と獣人達が返してくれた。
「ありがとうございます」と獣人達の声に応え、この集落を回って感じた問題を伝える。
「今回、オークを退けることは出来ましたが、退治するには力不足でした。強力な武器か魔法が必要です。また、壁に張り付かれた事から堀で集落を囲い防衛力を高めます」と魔獣の対策を告げる。
「また、住居を充実させましょう。水路や井戸を完備して、畑も広げましょう」と続け、「衣食住のレベルを上げて、もっともっと住みやすい集落にしていきましょう」と政治家の演説のような宣言をしてその場を離れた。
【ホール(穴掘り)】+【ホールド(保持)】と集落の壁に沿って溝を掘り、魔法で固定して集落の周りに掘を作っていく。
堀が完成した所で、魔の森を流れる川から水路を引き、掘りを水で満たした。
『これで、この壁を越える魔物は空を飛べる魔物だけだろう』と集落の防衛が完成したことに加え、集落の水問題が解決した事を喜ぶ。
すると『ピコン』と聞き慣れたアラートが脳内に響き、『同一魔法の使用数が規定に達しましたので、【ホール】の派生魔法【ロール(回転)】が解放されます』とアナウンスが流れた。
「オークが2匹近づいて来たぞ〜」と緊迫した声が響き、集落に緊張が走る。
「皆さん、試してみたいことがあるので、あのオークは私に任せてください」と言って、私はオークの前に立ち塞がり【ロール(回転)】と魔法を唱える。
すると、私の予想通りオーク達がその場で転がった。
「よし、これなら安全にオークを狩れる」と拳を握る。
「そして…ファイヤー」と基礎魔法を唱え、手のひらに火の玉を生み出す。
「この火の玉を【ロール(回転)】させて…これでどうだ〜、【ファイヤー放る】」
すると、炎の球が激しく回転しながらオークの身体を捉え、オークが一撃で倒れた。
『よし、成功だ』ともう一匹のオークを睨み、「お前にはこれだ〜」と槍を取り出す。
そして、手に持つ槍に【ロール(回転)】と魔法を掛け、【スピア放る】と回転する槍をオークに放り付ける。
すると槍がオークの脂肪を抉り、オークを串刺しにした。
私は、とりあえず火力問題が解決したお祝いに「今日は焼き肉パーティーだよ〜〜」と倒したオークを広場に運び込み、皆んなで喜び合った。
※現時点のギフト
ホール(穴掘り:空間含む)レベル3
(放る)
(集会所)レベル2
※派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
ウォール(壁)
ウール(羊毛:用途)
ポール(柱)
ロール(回転)
※レベル特典
二重起動




