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【最終話】 大円団

コートナシ ノービル辺境伯は皇帝陛下の呼び出しに応じて、王城の謁見の間でひざまずいていた。


その耳に、おごそかに皇帝陛下の声が響く。

「コートナシよ、其方には隠居を命じる。辺境伯はカーノセイに引き継がせよ。これは勅命ちょくめいである」


「何故にございますか?カーノセイはまだ未熟者ゆえ、今しばらくは私が辺境伯を務めなければ…」と言いかけるのを制し、「これより、魔国と新しい国との3国での調停式がある。其方も立ち会えば理由はわかるであろう」と皇帝は席を立った。



王城の大広間には、王国の貴族が勢揃いしており、魔人族や獣人族の姿もみえた。

コートナシは何が起こるのか分からず、大広間の隅でその様子を眺めていた。



やがて、ファンファーレが鳴り響き皇帝陛下が皇太子ダイタスと数名の衛士をともない壇上に立った。

そして、その横には同じく王女アリスと衛士を引き連れた魔国の魔王が立ち、その反対側に立ったのは…カーノセイとジャンヌを従えたアナホルトだった。


「我ら王国と魔国そしてハセースル連邦国は、今後同盟を結び永久の平和をここに誓う」と皇帝陛下が宣言する。

「我が魔国もこの同盟に賛同する」と魔王が続く。

「ハセースル連邦国には、まだ歴史はありませんが、これから育む歴史は王国、魔国と共にあるでしょう」とアナホルトが告げ、式典が終わった。



「ハセースル連邦国だと?何故アナホルトが皇帝陛下と魔王と同じ壇上にいる??しかも…カーノセイを従えているだと???」とコートナシは何が起こっているのかわからなかった。


式典が終わり、アナホルトがカーノセイと共にコートナシの元を訪れた。

「ノービル辺境伯、ご無沙汰をしています」とアナホルトが挨拶をする。


「アナホルトよ…」とコートナシが言いかけた時、カーノセイが「父上、連邦国元首様でございます。ご無礼のなき様に…」と公式の場でアナホルトを呼び捨てにした事を暗にとがめた。


「それだ…ハセースル連邦国とは何のことだ。それに、何故カーノセイがアナホルトに従っておる?」とアナホルトとカーノセイをにらみつけた。


「アナホルト連邦国元首にございます!」と再び、そして二度とは許さないと言う冷たい言葉がカーノセイ 注)兄バカ からコートナシに投げつけられた。


「兄さん、私は大丈夫だから…」となだめるアナホルトに「公式の場ゆえ、礼儀は守らせなくては…」とカーノセイが言い放った。




黙り込んだコートナシに、「父上とヨーチナシに馬鹿にされたギフト【ホール】(穴掘り)※その派生 のおかげで、追放された地にハセースル連邦国を作り、王国や魔国との交易の拠点を設けることが出来ました。カーノセイ兄さんが皇帝陛下から辺境伯を任命されましたので、ハセースル連邦国はノービル辺境領との交易も開始します」と告げる。


わしを憎んでいるのか?」と肩を落とすコートナシに、しばらく考えたアナホルトが…


「そうですね。確かに初めは憎んだ時期もありました」とコートナシを見つめる。

「しかし、父上が私をハセースルの地に追放しなければ、恐らくこの世界は魔神の手に落ち、闇に包まれた世界となっていたでしょう。今から思えば、私をハセースルの地に追放したのも、女神の思し召し(おぼしめし)だったのです」と父親を見る目が温かくなる。


「何よりも…マキバを私に餞別せんべつとしてくださったことは感謝しています」と言うと、「マキバだと、あの役立たずの駄馬のことか?」と怪訝けげんな顔でアナホルトを見た。


「役立たずの駄馬とは…聞き流せない言葉なのじゃ」とマキバにまたがったヨルが現れた。

コートナシが驚き「駄馬が大広間にいるとは何事か?衛士は何をしておる!」と周りを見るが、皇帝陛下も魔王も当たり前の様にその駄馬を認めていた。


「しかも、このむすめは皇帝陛下の御前で下馬せぬとは!」と馬上のヨルをにらみつける。

皇帝が慌ててコートナシを止めようとするが、「この様な小物に名乗る名は持たぬ故捨ておけ」とヨルが周りを制する。


其方そなたはマキバを役立たずの駄馬と言ったが…駄馬(✴︎ ✴︎)の意味を知っての言葉か?」と威圧する。

「兵役に置いても、旅をするにも、農村の農作業に置いても、何をするにしても駄馬ほど役に立ち必要とされる動物はおらぬのじゃ。ましてや、こんなに可愛くて賢い駄馬は他にはおらぬのじゃ」とマキバの首筋を撫でる。


するとマキバが嬉しそうに「ヒヒン」といななき、畳んでいた羽根を広げた。

「ぺ・ペガサス?!」とコートナシがその姿に腰を抜かし座り込み…体調を崩したと言って退席した。




その後は「アナホルト様〜」「お兄ちゃん」「アナホルトよ」「ヒヒン」とジョセフィーヌにアリス、リナとマキバにまたがったヨルに囲まれて、王城での一夜はにぎやかに過ぎていった。





辺境領で領主の交代が告げられたのは、それから直ぐのことだった。




ーーーーーー




カーノセイとジャンヌは、辺境領に新たに完成したトンネルを使い、『流星』でエクスチェンジに来ていた。

カーノセイが店の中を見ると一着のドレスが飾られていた。

「あのドレスは君の美しさを更に引き立てられそうだが…」と隣のジャンヌを見ると、「馬鹿、何を言ってるの」と真っ赤になりながらも、満更まんざらでもない様子で呟やき、女神から授かった『馬鹿ップル』の称号に相応しい振る舞いを見せていた。


「兄さんの言う通り、義姉(✴︎ ✴︎)さんによく似合うと思いますよ」と、アナホルトがリナとマキバにまたがったヨルを連れて現れた。


「神子様」とひざまづきそうになるジャンヌを「魔神がいなくなったから、もう神子は卒業です。それに、家族になったんだから、そんな他人行儀はなしですよ」と立たせた。


「おお、ここにいたか」と声が聞こえ、皇帝陛下と宰相、ダイタスとジョセフィーヌも現れた。

「私達もいるわよ」とアリスと魔王もやって来た。


「アナホルト様、私にもお似合いのドレスを紹介してください」とアリスが甘えると、リナとジョセフィーヌも「ズルい、私達にも…」と続く。


皇帝陛下が「早速、其方そなたの新しいギフト【モード】(流行)が役立ちそうだな」と笑う。



「だが…アリスを手に入れたくば、俺のしかばねを越えていけ」と魔王がアナホルトを睨む。


『何故、コイツには『注)兄バカ』の称号が付かぬ?』と横で見ていたカーノセイは納得がいかない。



そこに「にゃ にゃ にゃ」と陽気な歌声が響き、「今日も大漁だったにゃ。ドラゴン(太刀魚)も鰹も食べ放題にゃ!」と猫獣人が現れて…





この楽しく明るいドタバタは、これからも続くことになるのだろう。





        〜 Fin〜


        




※現時点のギフト

ホール(穴掘り:空間含む)レベル4

    (ほーる)

   (集会所)レベル2

   (亜空間倉庫)

※派生ギフト

ホールド(保持)

ボール(球)

ウォール(壁)レベル2

ウール(羊毛:用途)

ポール(柱)

ロール(回転)

   (役割)

ファーム(農業)

オール(全て)(操舵)

エール(応援)

ホーリー(聖魔法)

ホーイ(方位)

   (包囲)

モール(大型商業施設)

   (もーる)

ホーム(拠点)

   (家)

   (プラットホーム)

   (帰郷)

レール(軌条きじょう

コール(こーる)

   (通話)

   (召喚)

ホーニュウ(豊乳)…注)封印

フォーム(形状)

トール(雷神)…注)使用制限有り

ホーク(鷹の目)

オーム(電気抵抗)(電磁場)

ホーキ(放棄)

フォール(秋)

コーウ(降雨)

   (豪雨)

モード(流行)




※レベル特典

二重起動







本編はここまでとします。

エピローグを3話入れて完結します。(予定)

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