ギフトに関するあれこれ
オークから助けたのは、リナと名乗るうさぎ耳の獣人の女の子だった。
彼女の話では、少し離れた所に獣人の集落があり、約２００人が暮らしている。
しかし、最近になって魔物の襲撃が激しく、怪我人が増えた為に薬草を探しに来た所、はぐれオークに襲われたらしい。
私はリナの案内で獣人の集落を尋ねることにした。
退治したオークは肉が美味いとのことで、新しく覚えた収納（異次元集会所）に入れる。
何と、手を翳して【ホール（空間穴掘り）＋（集会所）】と唱えるだけで自動収納される親切設定だった。
集落に着くと、リナの帰りが遅いことを心配した住民達が門の前で私を出迎えてくれた。
魔の森の奥地は人族には過酷すぎるため、ここの住民は皆獣人だった。
「娘のリナを助けていただきありがとうございました」と挨拶してきたのは村長のバーモントだ。
「リナからもお聴きでしょうが、この集落は魔物の被害を受け壊滅状態なのです」と弱々しく告げるバーモントの身体には無数の傷があった。
周りを見渡しても、住民の身体は同じように傷が目立つ。
住民の奥に見える集落を囲む壁は低く、魔物に破壊されたのか所々に穴が開いていた。
「バーモント村長、私は領土を追われ、辺境伯よりこの地を治めるように指示されています。身体はまだ小さいけど、オークを倒すくらいの能力はあります。是非この村の発展に私の力を役立たせてください」と固く握手を交わした。
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その頃王都にある大聖堂では、女神から与えられたギフトの報告会が行われていた。
その報告会では、王都で勇者や賢者のギフト持ちが現れたことや、西の街では豪商のギフト、東の街では聖母のギフトが確認されたことが報告される。
そして、辺境伯の地に派遣された神父が辺境では剣聖のギフトが現れました、と胸を張って報告した。
「ほう、神童と名高いアナホルトは剣聖か？」と王都の神父が尋ねると、「いや、剣聖を授かったのは兄のヨーチナシです。アナホルトは【ホール（穴掘り）※その派生】と言う聞いたこともない、穴掘りのギフトですよ」と馬鹿にしたように報告した。
すると「※印の特典持ちだと〜」と声が響く。
見ると、教皇が立ち上がって神父を睨みつけていた。
「ならば、ギフトを授ける時に金か銀の後光があったはずだが」と神父に問うと、「いえ、金や銀の後光はありませんでした」と答えた。
「ただ、虹色の光が辺りを照らしましたが、たまたま外の陽射しが入り込んだのでしょう」とやはりアナホルトを馬鹿にしたように答えた。
『金でも銀でもなく虹色だと？それは、最上級の女神の祝福の証ではないか』と誰にも聞こえない程小さく呟やき、
「それで…『※その派生』の特典を授けられた神子様は今どこに」と教皇が尋ねる。
「神子様？ただの穴掘りですよ」と神父が答え、周りの神父達も同じくキョトンとしていた。
「穴掘りギフトのアナホルトは、辺境伯の怒りを買って、魔の森の奥地に追放されたようです」と神父の報告を受けると、教皇は頭を抱えて天に祈りを捧げ、神父達は訳がわからずにその姿を見ていた。
しばらくして、教皇は椅子に座り直し静かに語り始めた。
「其方らが知らぬのも仕方がないか。※印の特典は５０年から１００年に１人しか現れぬからのう。※印の特典を持つ者は、魔法の制限が一部解放される。その者が持つギフトにイメージさえ繋がれば、解放された魔法が使えるようになるのじゃ」と告げ、「その発生時に銀色の発光があれば、レア級の魔法が使えるようになり、金色ともなれば超レア級となる。虹色ならば、恐らくは神話級の魔法が使えただろうに、能力が開花する間も無く魔の森の奥地に一人で追放されたのでは最早生きてはおらぬだろう」と心から口惜しそうに呟いた。
「しかし、兄のヨーチナシは剣聖のギフトでした。最上級のギフトで…」と慌てて弁明する神父に教皇が憐れみの目を向けて、「最上級のギフト持ちは、確かに強力な能力を持つ。しかし、このギフトはこれ以上伸びることがない故に、これを維持するには途方もない努力が必要となる。努力をしなければ、どんどん能力が下がるギフトなのじゃ」と諭す。
「まあ、多少能力が落ちても最上級ギフト故、強力なのは間違いないがの…」と呟き、「最上級ギフトを与えられる者は、努力を惜しまぬ者がほとんどであり、あまり知られてはおらぬことじゃよ」と話しながら聖堂の奥に消えていった。
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同じ頃
「俺は剣聖のギフトを授かった男。誰よりも優秀なのは俺だ〜」と辺境伯邸では、ヨーチナシがメイド達を部屋に集めて酒を飲んでいた。
「邪魔なアナホルトは排除した。残るはカーノセイだけ」と濁った眼を光らせた。
※現時点のギフト
ホール（穴掘り：空間含む）レベル3
（放る）
（集会所）
※派生ギフト
ホールド（保持）
ボール（球）
ウォール（壁）
※レベル特典
二重起動
勢いだけで走り出した為、後付けの理論武装が大変です。その理論武装も穴だらけですが…
