退かぬ 媚びぬ 省みぬ
早めに鬱展開は打破したいので、サクッとアップします。
天界で女神達が騒ついていた。
「嘘でしょ?あのギフトが初めて解放されるの?」
「これまで、何人もの人族に与えられながら、一度も発動したことがないギフトなのに!」
「それを…人ではなく駄馬が?!」
と、大騒ぎだった。
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ヨルの【コール】に呼び出されたアナホルトは、リナを連れてマキバの元に駆けつけた。
「マキバ、偉かったね。ヨルちゃんを助けてくれたんだね」と立ったまま事切れているマキバをリナが優しく撫でる。
「痛かったよなマキバ…ありがとう。ゆっくり休んで良いよ」とアナホルトがマキバを横たえながら声を掛けた。
『思い起こせば、マキバが居たからハセースルの奥地まで辿り着くことが出来たんだよな』と涙が止まらない。
すると天から『ピコン』と通知音が響き、女神の声で『マキバに与えたギフトが解放されます。この世界で初めて解放されるギフトなので、特別に特典を付けましょう』とアナウンスが流れた。
『ギフト【捨己救人】が解放されます。このギフトにより自己を犠牲にして、他者を救った者が救済されます』とアナウンスが流れると、マキバの身体が光に包まれた。
『妾が言ったでしょ?この場にいるもの全員にギフトを与えると…』と女神の声が優しく響き、『だけど…このギフトが解放したのは、全てマキバの滅私の心によるものです。なので、特別にご褒美をあげちゃいますね…』と女神の声が聞こえ…光の中から「ヒヒーン」と嘶きが響いた。
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その頃…
魔国は魔物の集団に襲われていた。
「オークが行ったぞ〜。3人で囲め!」
「こっちには魔熊だ。10人でいけるか?!」と、人族と魔族、そして獣人達が連携を取りながら魔物を退治していく。
「アナホルト達が魔神を封印したら、魔物は引き下がるから、それまで持ち堪えろ!」と魔王が劇を飛ばす。
「何言ってんだ。この程度の魔物なら、経験値と素材の回収にちょうどいいぜ!!」とドックス村のピーグル達と、エクスチェンジから来た冒険者が次々と魔物を倒し、気がつけば、めぼしい魔物は全てが退治されていた。
「にゃ にゃ にゃ、我にゃにかかれば、このくらい朝飯前にゃのだ!」と猫獣人達が笑う。
そこに一匹のゴブリンが現れ、鼻の頭を指で弾くと、猫獣人達に向かい手のひらを(おいで)をするように曲げた。
「あ、あのゴブリンは…」と猫獣人が驚く。
「脛に7つの疵を持つゴブリンにゃ…」
「にゃらば、我らが『ニャン斗聖拳』で迎え撃つにゃ」
と、猫獣人が「『天も宿命の対決に興奮しておるわ』『退かぬ 媚びぬ 省みぬ』『我が生涯に一片の悔いなし』にゃ」と叫びながら飛びかかっていく。
だが…この闘いは『いろいろと拙い』と言う、社会的配慮により記録されることはなかった。
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魔国の闘いが終わりを迎えるころ…
カーノセイはベルゼブブの強烈な攻撃を何とか耐え忍んでいたが、流石に限界が近づいていた。
「おや、大丈夫ですか?反応が遅れ出しましたよ」とベルゼブブが余裕の笑みを浮かべる。
しかし、カーノセイにはそれに答える余裕もなかった。
その時、カーノセイの脳裏に昨日のジャンヌの姿が過ぎった。
『鍛錬の時の膨れっ面も可愛かったな』とジャンヌの事を思い出すと、何故か力が湧いてきた。
『泥臭くても良いから勝て!』と言ったのは…俺だろう!!と最後の力を振り絞る。
しかし、ベルゼブブの力の前にカーノセイの反撃も通じなかった。
いくら不撓不屈のギフトがあるとは言え、人である以上は体力に限界はある。
既に、人としての限界を遥かに越えた闘いを続けるカーノセイにも…遂にその時が訪れようとしていた。
『ここまでか…』とカーノセイが膝を折りかけたその時、アナホルトから【コール】が入った。
『兄さん、お待たせしました。ヨルとジャンヌが配置に付きました』
『よし、仕掛けるぞ!!』とアナホルトに返事をして、ベルゼブブに両手を向けた。
「おや、降参のポーズですか?まあ、降参しても…死んでもらうのは同じことですけどね」とベルゼブブが躍りかかる。
その瞬間「ギフト【七重の日輪】!!」とカーノセイが唱えると、幾重にも押し寄せる光の波がベルゼブブに襲いかかる。
闇の魔神であるベルゼブブは、その光の波を受けて動きが止まる。
その隙を突いて、カーノセイが取り決めた地点に走り込んだ。
それは、ベルゼブブを中心にカーノセイとジャンヌ、ヨルが正三角形になる配置だった。
「宝珠プリズンよ、魔神ベルゼブブを封印せよ」と3人が宝珠プリズンを掲げ、「「「トライアングル キャプチャー!!!」」」と叫ぶ。
すると、ベルゼブブの身体に光の帯が巻き付き、徐々にその姿が光に同化し始める。
これで終わりと思ったその時、ベルゼブブが不敵に笑った。
「馬鹿め。この程度の罠を僕が想定していなかったとでも思ったか」とその腕を振り上げる。
すると…新たな蝿が塊となり、ベルゼブブの元に押し寄せてくるのが見えた。
「さあ、僕の蝿達よ。この忌々しい光の帯を断ち切って、僕を自由にしておくれ」とベルゼブブが笑いながら指示する。
すると、蝿がカーノセイとジャンヌ、ヨルを取り囲み、宝珠プリズンの効果を打ち消そうとする。
カーノセイ達に蝿に対抗する手段はなく、ベルゼブブの封印も失敗かと思われた…その時
「何だ、あれは?」と空を見上げて最初に口にしたのはベルゼブブだった。
そこには…天馬に跨ったアナホルトがカーノセイとジャンヌ、そしてヨルが作り出した正三角形の頂点を目指して、空を駆ける姿があった。




