光があふれると笑顔はこぼれる
光が溢れる
笑顔が溢れる
の読みの違いをタイトルにしたかったのですが、タイトルにルビが入らないので、蛇足の説明を入れました。
それは、ネズミや兎などの小さな動物や小鳥の移動から始まった。
やがて、鹿や猪に加えてゴブリンやオーク、最後には魔熊やオーガなど、魔の森に住む全ての生き物が、魔の森を追われるように魔国に雪崩れ込もうとしていた。
そして、その後ろに広がるのは…黒く膨れ上がった闇だった。
その闇は意志を持つかのように、魔国を目指して魔の森を侵食していく。
その闇の正体は…美しい少年の背後を飛び交う無数の蝿の集団だった。
魔王城では、魔の森の氾濫とその後ろに迫る闇の一報を聞いて、住民の避難を始めていた。
魔国にある【ホーム】(プラットホーム)では、『流星』と『蒸気機関車』に乗り込みエクスチェンジに避難する人で溢れかえり、「乗せてくれ〜」「女子供を優先しろ」「怪我人がいるんだ」と大騒ぎになっていた。
「『流星』と『蒸気機関車』の貨物車も使えば、一度に500人は移動出来ますが…」と家臣の1人が魔王に報告する。
「アナホルトがトンネルを整備して、『流星』と『蒸気機関車』が配備されたとは言え…魔都だけでも三万人を越える魔人が暮らしている。とてもではないが間に合わぬ」と魔の森を睨み魔王が呟いた。
その姿を見たアリスが両手を組み、アナホルト村の方角に向かって祈り始めた。
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「にゃ にゃ にゃ」と陽気に歌いながら、猫獣人がいつものように『にゃんこパトロール』をしていた。
「やあ、今日も良い天気だね」とアナホルトが声を掛ける。
「『僕らはひにゃたが大好き』なのにゃ!」と明るく猫獣人が答えた。
その時『ピコン』と通知音がアナホルトの脳内に響いた。
『【コール】(通話)を求める祈りを感知しました。(通話)を開始しますか?』
アリスとの(通話)で、魔国の状況を聞いたアナホルトは急いで家に帰り、「ヨル•ジャンヌ、魔国が大変な状況になっている。直ぐに魔国に行けるかい?」と声を掛けた。
『輸送手段が足りない』とアリスから聞いたので急ぎハンマオを訪ねた。
すると、ハンマオが初号機を分解して整備をしている最中だった。
ハンマオに状況を伝えて『リニア初号機』を使えないか尋ねるが、整備中なのと、速度が違う車両を同じ路線に配備するのは危険だと言うことから諦める。
帰り際にハンマオが「あと一年もあれば…初号機はバトルモードで参戦できたのですが…」と横に積まれた手足のパーツを残念そうに見た。
アナホルトは、急ぐ状況のため泣く泣くハンマオの元を離れ、ヨルとジャンヌ、そしてマキバを連れて『流星』に飛び乗った。
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その日、ノービル辺境伯はカーノセイと共に皇帝陛下に謁見をしていた。
「のう、辺境伯よ。そろそろ引退してカーノセイに領地を任せる気はないのか?」とやんわり皇帝がコートナシに引退を促す。
しかし、自分に非があるなど思いもしないコートナシには通用しない。
「まだまだカーノセイは未熟者ゆえ、今暫くは私の指導が必要かと存じます」と空気を読まない返事をする。
皇帝陛下が『無能なだけでは無理に引退させる訳にもいかんか…』と頭を捻る。
すると、カーノセイが『ビクン』と頭を上げた。
「無礼者、皇帝陛下の御前だぞ!」と叱るコートナシを手で制し、「カーノセイよ如何した?」と皇帝が声を掛ける。
「はい。アナホルトより【コール】(通話)が入りました」と言うと、「アナホルトからだと!何を馬鹿な事を言っておる!?」と騒ぐコートナシを衛兵に命じて退出させた。
「して、アナホルトからは何を?」と尋ねる皇帝陛下に魔国の状況を伝える。
「それと、私は今からアナホルトの元に向かいますので、御前を失礼致します」と頭を下げると、カーノセイの身体が発光し、そのまま光の中に溶け込んだ。
「宰相よ、避難してくる魔人の受け入れ態勢を急げ」と指示を出し、『無理矢理にでもコートナシを引退させねば』とカーノセイが光に溶け込んだ跡を見つめた。
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同刻…
エクスチェンジに着いたアナホルトは、カーノセイに連絡を取った。
『【コール】(通話)…兄さん、今何処にいますか?』
『王都で皇帝陛下に謁見中だ』とカーノセイが返すと、『丁度いい。皇帝に魔国の状況と避難民の受け入れを伝えてください。それが終わったら、こっちに呼びます』
『わかった』と伝え、カーノセイが皇帝陛下にアナホルトの伝言を伝えた。
『皇帝陛下には伝え終わったぞ』と再びアナホルトに(通話)すると『ではこちらに呼びます』と(通話)が切れた。
アナホルトが『【コール】(召喚)』と唱えると、アナホルトの前に光のサークルが浮かび上がり、そこに跪いたままのカーノセイが現れた。
王国からエクスチェンジまでを一瞬で移動したカーノセイ 注)兄バカ が、跪いたまま「これが神子様の御力」と感激してアナホルトを見つめた。
近くの獣人達に、避難民を王国に案内するように指示して、アナホルト達は魔国行きの『流星』に乗り込んだ。
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魔国のプラットホームに着くと、待ち構えていた魔王とアリスが声を掛けてきた。
「アナホルトよ、よく来てくれた」と魔王が手を伸ばす。
その周りには避難を待つ魔人で溢れかえっていた。
アナホルトは魔王と周りの人達を見渡し、「魔王様、申し訳ありませんが、輸送人数を増やす手段はありませんでした」と告げた。
「そうか…ならば、戦えるものは打って出るしかないか」と魔王が告げると、周りからは小さな悲鳴が上がった。
「いや、今から【ホーム】(プラットホーム)を地下に移して、エクスチェンジと同規模の避難所を作ります」と考えてきたプランを明かす。
「おぉ、地下ならば魔物の襲撃は耐えられるし、順番にエクスチェンジに移動も出来る」と喜ぶ。
そこで二手に分かれ、カーノセイとジャンヌは接近する魔物を退治することにして、アナホルトとヨルは避難所を作ることにした。
トンネルが斜め上に向かう地点に立ったアナホルトが、そこから先のギフトを解除した。
すると、それまでトンネルがあったはずの所は、固い岩盤で塞がれた地面に戻った。
そして、改めて真っ直ぐに「【ホール】(穴掘り)から【レール】(軌条)と慣れた手順で線路を敷き、【ホーム】(プラットホーム)を作り直した。
そして、その横の壁に手を当てると「【モール】(大型商業施設)」と唱える。
そして、地上に向かうトンネルを作ると、その周りを【ウォール】(壁)で囲い、魔物が入り込めないように覆った。
不安な面持ちで地表で待つ魔人達を、出来たばかりの広い【モール】に案内すると、生命の心配がなくなったことから一応に安堵の息が流れた。
「アナホルト殿ありがとう」とこれまでアリスの態度から、私に言ったことのない殿を付けて礼を言ってきた。
『いや、この魔王様はアリスが絡まなければ明君なんだよな〜』と何処かの 注)兄バカ を思い出した。
「アナホルト様ありがとう」「魔王様もありがとう」の声に混じって、「でも、真っ暗で何も見えないね」の声が聞こえてくる。
そう、穴を掘っただけの空間のため、光が入り込まず、トンネルの光苔の灯りだけが頼りだった。
すると『ピコン』と通知音が響く。
『大勢の希望を感知しました。【モール】の派生解釈(盛る)が解放されます。
アナホルトがトンネルに生えている光苔を一掴み剥がして壁に貼り付け、「【モール】(盛る)」と唱えると、光苔が盛り盛りと増殖し始めた。
あっと言う間に溢れた光は…魔国の人達の笑顔を照らしていた。
※現時点のギフト
ホール(穴掘り:空間含む)レベル4
(放る)
(集会所)レベル2
(亜空間倉庫)
※派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
ウォール(壁)レベル2
ウール(羊毛:用途)
ポール(柱)
ロール(回転)
(役割)
ファーム(農業)
オール(全て)(操舵)
エール(応援)
ホーリー(聖魔法)
ホーイ(方位)
(包囲)
モール(大型商業施設)
(盛る)
ホーム(拠点)
(家)
(プラットホーム)
(帰郷)
レール(軌条)
コール(凍る)
(通話)
(召喚)
ホーニュウ(豊乳)…注)封印
フォーム(形状)
トール(雷神)…注)使用制限有り
ホーク(鷹の目)
オーム(電気抵抗)(電磁場)
ホーキ(放棄)
フォール(秋)
※レベル特典
二重起動
初号機バトルモードを参戦させたかったのですが…ベルゼブブとの相性が悪すぎて断念しました。
『腕が飛び出す…』『足が飛び出す…』とか入れたかった。




