命を捨てて俺は生きる
エクスチェンジに着いた私達は、ヨルに導かれて地表の小高い丘の上に来ていた。
周りは樹木で覆われているが、その丘の上だけは樹木がなく、空が広がっていた。
するとヨルが龍王ヨルムンガンドの姿に戻り、いきなり天に向かって光のブレスを吐いた。
その勢いは凄まじく、天をも焦がすほどだった。
そして「こら〜駄女神!降りてこんか〜」と叫んだ。
しばらく待つが反応がないので「ならばもう一発」とヨルムンガンドが言うと、慌てた声で「ちょ ちょっと待って〜」と天から声が響いた。
『其方達の前に顕現することは出来ませんが、お話は聞きましょう』と聞き覚えのある声が響く。
『あぁ、アナウンスの声だ』と思い当たると、『そう、妾は其方にギフトを与えた女神マリアーヌです』と答えてきた。
すると、隣にいたアリスが「女神マリアーヌ様、何卒魔国をお救いください」と願いを伝える。
『アリスよ。其方の献身的な想いに応えてやりたいが、妾にはその権限も力もないのです』と申し訳なさそうな声が響く。
するとヨルムンガンドが「じゃが、ギフトは其方の権限じゃったのう」と空を睨み、「アナホルトにあれを授けるが良い。後は我が引き受けてやろう」と告げた。
『あ…あれはダメです。この世界の秩序が壊れてしまう可能性が…』と慌てたような声が響くが、「何を今更。アナホルトの存在自体があれのようなものであろう」と目を光らせ、「分からぬなら、もう一発我が咆哮を…」と空を見上げる。
『わ、わかりました。しかし、ヨルムンガンドよ、この力を使えば其方も唯ではすみませんよ』と女神が忠告する。
「余計なことは言わんで良い。サッサとアナホルトにギフトを授けよ」とヨルムンガンドが慌てて言う。
「え?ヨルちゃんがどうにかなっちゃうの?」とリナが泣きそうに尋ねると、『やってみないと結果はわからない』と女神が優しく応えた。
「じゃから内緒にしておきたかったのじゃ」と泣きじゃくるリナを見ながら、「早くせんか」と女神を急かした。
『ピコン』と通知音が響き、『このギフトは一度限りの使用を認めます。使用後は自動的に破棄されます』とアナウンスが脳内に流れた。
「何じゃ、ケチ臭いのう」と文句を言うヨルムンガンドに、『この力は世界の秩序を壊しかねない物ですから』と答え、『その代わりに…』と言いながら声は消えていった。
その時…『ピコン』と2度目の通知音が私の脳内に響いた。
ーーーーーー
私達はエクスチェンジと魔国を結んだ直線の位置に立ち、【ホーム】(プラットフォーム)で駅を作ると、そこに『初号機』を設置した。
そして、「こちらが王国からの支援物資となります」と皇女ジョセフィーヌが王国からの支援物資を乗せた貨物車を紹介した。
「ジョセフィーヌ様…何故ここに?」と言う私に「ジョセ!」と私を睨む。
「まあ良いわ」と呟き「国交もない隣国にいきなり物資だけ届けるわけにはいかないから、皇族の私が代表として魔国について行きます」と告げた。
私は皇帝陛下の心遣いに感謝して、『初号機』と貨物車を繋げるように指示した。
そして、いよいよ魔国へのトンネルを掘る段階になる。
その時、「魔国までの路線はリニア用にしてください」とハンマオが私に言ってきた。
「いや、『初号機』は蒸気機関車だが?…』と言う私に何故かサムズアップするハンマオ。
まあ、彼がそう言うなら…と納得し、「それで…どうしたら良いんだ?」とヨルに尋ねる。
「我の全魔力を其方に授けるゆえ、その魔力で一気にトンネルを掘るのじゃ。我の全魔力を使えば、魔国まで届くであろう」とヨルが答え、龍王ヨルムンガンドの姿になった。
「魔力を使い切ったらヨルが死んでしまうじゃないか」と私が反対すると、「我を舐めるでない。この程度で死ぬような我ではないわ」と牙を向く。
「それよりも、問題は其方じゃ。他人の魔力で力を使うなど、世界の秩序が許さぬこと。しかも龍王の魔力を人の身で取り込むなど、本来なら死んでもおかしく無い暴挙じゃぞ」と私を見る。
「じゃあ、2人とも生き残って…皆んなでドラゴンの塩焼き定食を食べに行こう」と手を前に出した。
一度だけ女神から許されたギフト、【ファール】(ルール違反)を唱え、ヨルムンガンドの魔力を自分の魔力に取り込む。
龍王のあまりにも強大な、そして異質なその魔力に、身体中から血が吹き出す。
「キャー!」「お兄ちゃ〜ん!」「アナホルト様〜!」と悲鳴が響く中…私は静かに
「四重起動【ホール】」と唱え、その意識を手放した。
※現時点のギフト
ホール(穴掘り:空間含む)レベル4
(放る)
(集会所)レベル2
(亜空間倉庫)
※派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
ウォール(壁)レベル2
ウール(羊毛:用途)
ポール(柱)
ロール(回転)
(役割)
ファーム(農業)
オール(全て)(操舵)
エール(応援)
ホーリー(聖魔法)
ホーイ(方位)
モール(大型商業施設)
ホーム(拠点)
(家)
(プラットホーム)
レール(軌条)
コール(凍る)
ホーニュウ(豊乳)…注)封印
フォーム(形状)
トール(雷神)…注)使用制限有り
ホーク(鷹の目)
オーム(電気抵抗)(電磁場)
ホーキ(放棄)
ファール(ルール違反)…注)今回限り
※レベル特典
二重起動
ファール(ルール違反)は禁断の手段として封印します。ご都合主義なので、困ったら復活するかもですが…汗)




