やっぱりこうでなくちゃ!いや?少し違う気が
ギフトが強化された翌日、早速「ホール」と魔法を唱えてみる。
昨日は一度に20mだった距離が、幅はそのままでイメージしたためか一気に80mくらいの溝が目の前に伸びている。
ホールを解除して溝を埋め戻すと、見なれたフカフカの真っ直ぐな道となる。
『さて、この新しいギフトは?』 と、昨夜派生した【ホールド(保持)】を使ってみる。
『なるほど・・・こうなる訳ね』とホールド(保持)された道を踏みしめる。
その道は、さっきまでのフカフカがなくなり、形成された形がそのまま保持されているため、砂粒の一つも動かない。
『これはありがたい。道もそうだが、夜眠るときに天井が崩れて生き埋めになることもなくなる』と新しいギフト【ホールド】の使い勝手の良さを喜ぶ。
結局、この日も100回の魔法を唱え8kmの道のりを進むことができた。
まだ魔の森の端にしか到達できておらず、中心であるハセースル山脈は遥か彼方だが、このペースなら何とか一ヶ月程度の行程でたどり着ける目処は立ってきた。
などと単純に考えていたが、ここは魔の森。
奥に進めば当然のように魔物が襲いかかってくる。
「うわっゴブリンの集団だ・・・」
見ると森の奥から10匹のゴブリンがこちらに向かってきている。
『10対1で接近戦になれば囲まれて終わる。マキバを守りながら剣で戦うのは難しい』と咄嗟に考え、台車から弓を取り出しゴブリンに向けて矢を放つ。
『ダメだ。3匹は倒せたが7匹が向かってくる・・・』
もう弓を構える時間はない。
慌てて5mくらい前に「ホール」と穴を掘る。
2匹が穴に落ち、残りは5匹となったが撃退する方法がない。
12歳の幼い身体で頑張って剣を振り回すが、ゴブリンは平気な顔でニヤニヤ笑いながら私に迫ってくる。
最早絶体絶命かとなった時、『そうだ、やつらは火を怖がる』と思いだし、慌てて生活魔法の火を手のひらに生みだす。
手のひらに乗る小さな火の玉は、前世で見る野球のボールのようだった。
すると『ピコン』と通知音が頭に響き『生命の危機が確認されました。派生ギフト【ボール(球)】が解放されます』と脳内にアナウンスが響く。
すると、手のひらにあった火が燃え盛り、炎のボールとなる。私は炎のボールをとにかくゴブリンに向かって放り投げる。
『こっちにくるな。炎のボールが当たったら熱いぞ』
それは、イヤイヤをする幼児が手当たり次第に物を放り投げるような、お世辞にも格好の良くないものだったがこっちは命が掛かっている。
とにかく死に物狂いで両手から炎のボールを放り投げると、その勢いに押されたゴブリンの足が止まる。
そのとき再び『ピコン』と通知音が頭に響き『同一動作が規定数に達しました。派生解釈【ホール】に(放る)が加わります』と脳内にアナウンスが響く。
『きたきたきた~』と脳内ドーパミンがあふれ出す。
「くらえ、ファイヤーボール」と颯爽とゴブリンに魔法を向けるが・・・『あれ?全然威力がない』
すると脳内に『(放る)を唱えてください』とアナウンスが響く。
『ま、まさか?』と私は半信半疑に「ファイヤー放る」と唱えながら炎の玉を投げる。
すると、これまでとは全く違う勢いの炎の球がゴブリンに炸裂し、一撃でゴブリンが絶命する。
「よし。これだ」と残ったゴブリンも同じく「ファイヤー放る」で仕留めた。
新しいギフトと派生解釈で危機を乗り越えたが・・・
『何かが違う~』と釈然としない思いと、魔物を退治した安堵感から膝から崩れ落ちた。
因みに試してみると「ウォーター放る」も使えたが、モヤモヤが解消さることはなかった。
その後、落とし穴に落ちた2匹のゴブリンにトドメを刺し、全てのゴブリンから魔石を取り出すと、そのまま穴に放り込んで埋め戻した。
その日はゴブリンとの戦闘に疲れ果てたため、少し進んだ地点で野営することにした。
いつものようにホールの魔法で空間を広げ、ホールドで保持して部屋を作り出した。
「マキバも怪我が無くて良かったな〜」と頬を撫でる。マキバも嬉しそうに「ヒヒン」と小さく嘶いて私を労ってくれた。
その夜、シートに包まり眠ろうとすると、『ピコン』と通知音が頭に響き『魔物討伐ボーナスとして派生解釈【ホール】に(hall 集会所)が加わります』と脳内にアナウンスが響いた。
※現時点のギフト
ホール(穴掘り)レベル2
(放る)
(hall 集会所)
派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
(放る)は大丈夫か?と悩みましたが、この後更に厳しくなるのでお見逃しください。
先では関西弁の意味での使用もあるかも?
言葉遊びの強い展開となりますが、良ければ引き続きよろしくお願いします。




