【幕間】ババンババンバンバン
「ヒヒン」とマキバの上機嫌な鳴き声が響き、「お兄ちゃん、羊さん達がいっぱいいる」とマキバに跨ったリナも楽しそうだ。
「アナホルトよ、昼飯はあのラマを一頭丸焼きで食べたいぞ」とリナの後でヨルがヨダレを拭う。
「あのラマ達は荷物運びや畑作業に大事な家畜だから、食べちゃダメだよ」とマキバの手綱を引きながら答える。
「お兄ちゃん、ピクニック楽しいね」とリナがはしゃぐ。
「マキバに跨り歩くだけで何が楽しいのだ」などと言うヨルも口元が笑っていた。
今日は、リナとヨルを連れてハセースル山脈の視察に来ていた。
この辺りは牧草が生え揃い、放牧場としてアナホルト村の家畜が揃っている。
また、若干標高が高いので、空気も爽やかで景色も良く、ピクニックには最高のロケーションだった。
「ここら辺でお弁当にしよう」と岩場に差し掛かった所で、持ってきたお弁当を広げた。
「リナ、サンドイッチ食べる」
「我のドラゴンバーガーは譲らぬぞ」
と騒がしい2人を温かく見つめる。
「あぁ、気持ち良いな〜」と空を見上げた。
「お兄ちゃ〜ん」「アナホルトよ〜」と声がする方を見ると、少し目を離した瞬間に2人とも泥だらけになっている。
『ヨルはともかく、リナはもうお年頃だよね』と呆れながらも、2人の姿に笑いが出る。
生活魔法で出す水では、流しきれないほどドロドロの姿を見て、近くに水場を探すが、岩ばかりで水場がない。
すると、周りをキョロキョロと見回していたヨルが、「アナホルトよ、ここを掘ってみるのじゃ」と地面を指差した。
「【ホール(穴掘り)】」で言われた場所を掘っていくと、『ドドドドドッ』と水が噴き上がってきた。
「お兄ちゃん、この水温かいよ」と噴き上がる温泉を浴びて、リナが気持ち良さそうに手を上げた。
私はその近くに男女別の2つの湯船を掘り、その湯船に向かい合わせて、【ホール(集会所)】と【ウォール(壁)】で脱衣所と景色を楽しめる低めの目隠しを作る。
一緒に入ろうとする2人を女湯に押し込め、ゆったりと湯船に浸かると、日頃の疲れがお湯に溶けていった。
『これは良い湯だな〜』とお湯を見ると【ロール(役割)】が『温泉:疲労回復•血行促進•美肌•ストレス解消】と出てきた。
『これは、村の保養施設に良いかも!』と景色を眺める。
『いや、いっそのこと観光地として売り出すのも有りかな?』と夢が広がる。
そこに、「お兄ちゃん背中流してあげる」とリナが乱入して来た。
「風呂は皆で入った方が楽しいのじゃ」とヨルも続いて入って来る。
「うわー、何で入ってくるんだ〜」と湯船のお湯をバシャバシャと2人にかける。
そこに「楽しそうな気配がするにゃ」「にゃー達も混ぜるにゃ」と猫獣人が乱入してきた。
『ピコン!【ホーキ(放棄)】を解放します』と言うアナウンスが聞こえ…「もう…好きにしてー」と私は考えるのを(放棄)した。




