認めたくないものだな 『第一章完結』
「エクスチェンジ行き光8号は、後10分で出発します。お急ぎください」とアナウンスが流れ、許可証を手にした商人や冒険者が慌てて客車に乗り込む。
今日も王都にある蒸気機関車乗り場は大混雑だった。
皇帝陛下がエクスチェンジを訪れてから僅か3ヶ月で、魔の森(の地下)は大きく様変わりしていた。
エクスチェンジ内のギルドには、高ランクの冒険者が魔の森の獲物を換金し、イートインコーナーで定食を食べる姿が当たり前となっていた。
また、商人達も獣人達を相手に、野菜や果物、日用品を販売し、また、魔の森の素材や新鮮な魚介類を仕入れて王都で販売を始めていた。
そして王都では、『塩カツオのタタキ』の皇帝陛下派と『ポン酢のカツオタタキ』の宰相派の争いが激化し、タタキ戦争と言う名の無意味な争いが街中の食堂で繰り広げられていた。
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その日私はノービル領を訪れていた。
「ノービル辺境伯、ご無沙汰をしております」と挨拶する私を忌々しげに睨み、「生きておったか、アナホルトよ。今更何の用だ。魔の森から逃げ帰ってきたのか?」と吐き捨てた。
「この度、ハセースル魔境伯の立場を皇帝陛下より賜りましたので、そのご報告と隣領となりますので、そのご挨拶に参りました」と告げる。
「魔境伯だと…?」と呟く辺境伯に、「はい、身分は侯爵となります」と皇帝陛下の任命証を掲げる。
「馬鹿な…ありえん。現に魔の森の何処も開拓が進んでおらぬではないか」と吐き捨てる辺境伯に、「貴方が馬鹿にした穴掘りギフトで辺境開拓を進めましたよ。目に見える所だけが真実ではありません」と胸を張る。
そして、隣で和かに私を見るカーノセイに、「カーノセイ兄さんが辺境伯となられた暁には、我がハセースル連邦はノービル領と同盟を結びましょう」と握手を求めた。
「魔境伯…ハセースル連邦…何のことだ?」と呟くコートナシをその場に残し、私はその場を立ち去った。
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アナホルト村に帰った私が駅から自宅に帰っていると「にゃ にゃ にゃ」と歌声が聞こえてきた。
「やあ、今日はアナホルト村にいたんだね」と猫獣人に声をかける。
「アナホルト様にゃ。相談があるにゃ」と猫獣人が私を取り囲む。
「相談って何だい?」と尋ねると、「シーエン村からエクスチェンジまでの移動時間がかかり過ぎるにゃ。もっと新鮮な魚を届けたいにゃ」と言ってきた。
「そうは言っても、魔の森は広過ぎるからな〜」と腕組みすると「蒸気機関車をもっとパワーアップするにゃ」と詰め寄ってくる。
『そうは言っても、出力はこれが限界なんだよな〜』と考えた時、不意に『父さんにも殴られたことがないのに!』と叫びながら操縦する白い○ビルスーツを思い出した。
『そう言えば、あの○ビルスーツをパワーアップする時にマグネットコーティングをしたよな〜』と(一部の人にしか分からない)前世のアニメの一場面が頭をよぎる。
その時『ピコン』と通知音が脳内に響いた。
『前世の記憶よりギフト【オーム(電気抵抗)】が解放され、【コイル(電磁場)】が付帯されます』とアナウンスが流れ、『このギフトは【オーム(電気抵抗)】に統合されます』と言った。
私は挨拶もそこそこに猫獣人達と別れ、ハンマオの工房に駆け込んだ。
突然の来訪に驚くハンマオの前で鉄鉱石を握り、【オーム】と唱え、鉄鉱石を(コイル)に変える。
そして、机の上に小さなレールを敷き、その上にコイルを乗せた鉄板を置く。
再び【オーム】と唱え(電磁場)を発生させると、鉄板はレールの上で浮かび上がった。
私がその鉄板を軽く押すと、鉄板は抵抗なくレールの上を滑った。
「これを応用した列車を作る。電磁場は魔石で作り出せる。車体名は『赤い流星』だ」と笑う私に「流星ですか?」と呟くハンマオ。
「いや、流石に彗星はマズい気がするので」と訳の分からないことを告げ、新しい車体と線路の未来を語り合った。
リニアなモーターの車がこの世界に生まれ、超高速で移動する日はすぐ目の前まで来ていた。
ーーーーーー 第一部 完 ーーーーーー
※現時点のギフト
ホール(穴掘り:空間含む)レベル3
(放る)
(集会所)レベル2
※派生ギフト
ホールド(保持)
ボール(球)
ウォール(壁)レベル2
ウール(羊毛:用途)
ポール(柱)
ロール(回転)
(役割)
ファーム(農業)
オール(全て)(操舵)
エール(応援)
ホーリー(聖魔法)
ホーイ(方位)
モール(大型商業施設)
ホーム(拠点)
(家)
(プラットホーム)
レール(軌条)
コール(凍る)
ホーニュウ(豊乳)…注)封印
フォーム(形状)
トール(雷神)…注)使用制限有り
ホーク(鷹の目)
オーム(電気抵抗)…注)コイル(電磁場)を含む
※レベル特典
二重起動
ここまでを第一部とします。
思い付きだけで走り出したため、いろいろおかしな部分があります。
今更ですが、移動時間の整合性を考えた時、時速700km以上のポテンシャルを持つあの乗り物に辿り着き、無理矢理のこじつけで開発させることにしました。
瞬間移動も考えましたが、ワープでは流石に無理矢理過ぎて断念しました。この先はわかりませんが…
蒸気機関車から電車を飛ばしてリニアって、の突っ込みは置いておいて、これで、距離と時間の整合性は幾分マシになるかな?と思っています。
ご都合主義で時速1000kmでもと考えましたが、流石にソニックブームは無視出来ないので、何となく速い列車の扱いで、第二章からは走り出します。




