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あれ?テンプレ展開と思ったのに

【ホール】で掘られた地面の木や草は何処に消えたの?と思った貴方。

全ては【魔法】の力…偉大な力の賜物です。

ノービル辺境伯邸を追放された私は、餞別せんべつとして貰った荷駄馬に台車を引かせて領土を旅立つことになった。

台車には、開拓に必要となるであろう鎌やくわなどの鉄製の農機具と、魔獣に襲われた時に備えて刀と槍、そして塩と食料を積みこんでいた。



荷駄馬の手綱を握り、ドナドナとき連れながら前世に読んでいたネット小説の記憶をたどる。

『これはよくある転生開拓物の流れだな』と周りを見渡す。

『おかしい?私に付いてきてくれるメイドはどこだ?年取った執事はいないのか?せめて冒険者の護衛くらいは??』と若干パニックになりながら考える。

よくよく考えれば、道も家もない魔の森の最奥地に付いてきてくれるメイドや執事などいる訳がない。

魔の森の奥地では冒険者も危険すぎて他人の護衛などしている余裕はない。


『小説では、かわいいメイドや凄腕の冒険者、ハイスペックな執事が付いてくるのがテンプレなのに・・・。そうだ、後から婚約者が追いかけて来るパターンか?とも思ったが、私は婚約などしたことがなかった・・・』と溢れそうになる涙をこらえ荷駄馬の頬を撫でた。


「私の供はお前だけだ。せめて名前をつけよう」としばらく考え、「お前の名は『マキバ』でどうだ?」と荷駄馬を撫でると気に入ったのか「ヒヒン」といなないた。


辺境伯の領土の境にある城壁を抜けると、彼方に森が見えてきた。

そして、その遥か後方には天にも届くかのようにそびえるハセースル山脈が見えた。

私はマキバをドナドナとき連れ、一日がかりでやっと魔の森の入り口にたどり着いた。


「今日はここで野宿だ」とマキバに声を掛け、野営の準備をおこなう。

一人旅のため、迂闊に寝てしまうと魔物に襲われた時に対処ができない。

しかし、私にはこのスキルがある。


「ホール」と地面に手をかざすと、そこに直径が1メートルほどのホールが空いた。

少し斜めに向きを変えて4回「ホール」と唱えると高さ2メートル、奥行きも2メートルほどの正方形の空洞が完成した。

魔物に襲われないよう、マキバも空洞に入れて入口を台車で抑える。

当然、面倒ではあるが台車の荷物も空洞内に運び込む。

持ち込んだ物資から食事を取りマキバに飼葉を与える。水は基礎魔法で作り出し食事を済ませると、一日中歩いてきた疲れからか、あっという間に睡魔が襲ってきた。

「明日はついに魔の森に突入だ。頼むぞマキバ」と声をかけ、そのまま眠りについた。



魔の森に足を踏み込んで早くも3日が経った。

この3日間で私が進んだのは…と後ろを振り返ると、何とまだ魔の森と平原の境が見えるではありませんか。

そう、私がこの3日間を掛けて進んだ距離は、かろうじて1km程度だった。


『いや、これ無理でしょう』と思わず泣きそうになる。人が入ることなどほぼ無い魔の森には道などなく、剣で藪を切り分けながら進むしかない。

しかも、自分だけではなくマキバと台車が通る幅が必要となるため、3日間剣を振り続けた私の腕は既に限界を迎えていた。


いつものように地面に穴を掘り、空洞で休みながらこの先の道のりを考えると絶望しかない。

よくある転生開拓物と思っていたが、何と開拓地に辿り着く前に終了になりそうだった。


泣き言ばかり言っても仕方ないので、翌朝いつものように穴を埋めて出発しようと、ふと足元を見た。

そこは、ホールの魔法で穴を開けられ、そのまま埋め戻されたため、地面が剥き出しになっていた。

『こ•これだ〜』と思わず叫びそうになった。


私は手を前にかざし、浅いが出来るだけ長い距離を意識して「ホール」と魔法を掛けた。

すると…何ということでしょう。

幅が2mくらいの浅い溝が約20mくらい前に掘られ、それを埋め戻すと真っ直ぐな道が出来たではありませんか。


私は握り拳を上げ、整地された道をマキバを連れてドナドナと進む。

埋め戻した地面の為、フカフカで進み難いし20m毎に魔法を掛けるのが手間だが、ギフトの恩恵か魔力切れなども起こらない。

結局この日は100回魔法を使い、2kmほどの距離を進んだ。


その夜、眠ろうと目をつぶると『ピコン』と言う通知音と共に『ギフト使用数が規定に達しましたので、ホールの威力が倍増します。また、派生魔法【ホールド(保持)】が解放されます』のアナウンスが脳内に流れた。




※現時点のギフト

ホール(穴掘り)レベル2

派生ギフト

ホールド(保持)







ネタバレになりますが、脳内シミュレーションでは、先に攻撃魔法を覚える予定でした。しかし、いざ書いてみると荷車を連れて、原生林の魔の森に入り込む事すら困難かな?となり、道を作る為の魔法が先になりました。

開拓地に辿り着くのはいつになることやら…


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